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昨日、コゲラさんに出会う。木を、こんこんしてらした
またくよくよと絵の具を捏ねては黒くしているあなた
飛べないばかりか落ちていくこともできなくなったあなた
海だとか空だとか持ちだして悲しんでいる
いいよ いくらでも
このあいだふたりで行った ....
脚の細い象の背中で
ユラユラしている私の
広すぎる糊しろは
饐えた臭いを放っていた
何も企てない午後を
ユラユラ生き延びた私の
丸すぎる背中には
錆びた罪が生えていた
心地 ....
かんがえてみる
あなたの肉にうまった
あなたの背骨のこと
となりにいながら
月面のように遠い
わたしたちの午後
手を握る
頷き わらいあう
影をみつけて
光を逃がす
吸わな ....
あるのはわかっている
けれどみることができない
ちょうどすりガラスを挟んでいるように
いつかもこんなふうだった、と
ふりむいてみたところにもすりガラスがあって
なめらかなさびしさのな ....
トイレで赤い卵を流したあと冷蔵庫から野菜ジュースを取り出そうとして
玉子を床に二つ落として割れてしまった。かろうじて玉子の形をとどめた
まま中身は放り出されなかったので、フライパンで割れた玉子を溶 ....
花粉も埃も取り去った無菌室で
くらしていますが
危険はどこかに潜んでいて
いつも隙をうかがっているのです
みがききぬかれた手すりが
不思議なことに
摩擦をなくしていたり
すべらないゴ ....
わたしは
粒で出来ている
粒は
かなしみも
ぜつぼうも
知らないまま
ただ
あたえられた時間を
あたえられるままに
はずんでいた
ときおり粒は
とどこおる
たとえば寒い ....
(ソンナコト、イウ、ミサチャン、ナンカ、キライ。
ふたりは同じ薄ピンクのフレアースカートとツインテールの幼稚園児
ミサに、少女は拒絶の言葉を投げつける、と
ミサは酷く優しい顔をして、とて ....
単焦点のレンズをつけて
春を探しに出かける
低い雲が垂れ下がった街は
名前の無い色合いで
マフラーの内側の囁きは
聞き覚えの無い言語で
嫌なものは
ぼんやりとしか見えない
....
海に行きたい
夏の海に
あなたとの強い想い出の大抵は冬で
冴え渡る多摩の空の下から富士を望んだり
電車に揺られ詩的なものを探しに出たり
さよならを言えずに雑踏で握手を交わしたり
冷めな ....
真っ赤な嘘っぱちを
誰も見抜いてくれなかった
橙色の夕日にとろけそうな
もはや追う者もいなくなった
逃亡者の長過ぎる影
気味の悪い戯言を並べた
ノートの頁は哀しく黄ばんで
....
なんの魂胆かしらないけれど 鬼って悪い奴じゃなかったよ
たましいにも ふたつある魂と魄って書くんだって
どうやら 魂は精神を支えていて、魄は肉体を支えているらしいよ
どちらにも 鬼がいるよ ....
冬が通りすがりに蜜柑をひとつ
窓辺へ置いてったようだ
不用意なこころはすぐ凍傷にかかってしまうから
ちょっとした季節の気遣いにも丁寧に礼を言おう
ざわざわとした毎日を蹴飛ばし
転がし ....
彼には
歌詞カードが
欠かせない
言葉を大切にしている?
そうじゃない
歌を聴いているとき
言葉は二義的なものだ
それは彼にとっても
誰にとっても
彼が必要としているのは ....
火がないのに
いつでも
沸きたてのお湯が出てくる
昔、むかし
食卓の上に
魔法瓶という魔法があった
ただいまと
帰ってくる
冬のこどもたちのために
とても温かい飲み物が
瞬時に ....
風が大河のように重い土地で
腰を落とし 捻じれて育った
樹は 首を傾げ 雲を聞いている
節くれだった片目で
ヒレンジャクたちのお喋りに
口をはさむでもなく
遥かな海や
見渡す限りの黄金の ....
冷たい風が鼻を折る
国道を挟んで対面から歩いてくる
久しぶりに見た欅の少年
あれはいつか晴れた日の青空に
いつも手を引かれた二人連れ
くねくねと大きな身振りと直角に折り返す手足
何かを ....
草なぎのなぎは弓ヘンに前の旧字の下に刀
はじめに言っておくとこれはキックだ
蹴っ飛ばすことによって動き出す情報の速度を示すための準備だ
テーブルをまわす動作が洗練されていく中華料理店のための ....
まだ蕾とも見えない 小さな突起の
春を待っていた梅の枝は 雪の重みに折れる
うららかな鳥の声を聞くこともなく
清冽な香を漂わせることもなく
淀みに映った空は 日に日に冷たく
緩や ....
風を読もうとして
青空の中に人差指を立てた
風上から風下へ
紙飛行機は滑っていった
時を堰き止めたくて
夕焼けの中で小指を絡めた
川上から川下へ
笹舟は忘れ去られた
水面に ....
あばら家、破れ屋、壊れ家 晴天
差し込む陽光、隙間だらけの板壁から
床に降り積もった雪、凍り付き
裸足で滑る、裸で踊る
絹糸束ねた光の帯
肉身に巻き付き熱と化す
内から沸き出す熱流、合 ....
氷を抱いて熱へとびこむ
飛び込み台にかえるが落ちている
踏んでしまうのとゆう声が聞こえる
踏んでしまう、でもたぶん
初夢はどんな夢を見ましたか
すべての夢は もろ刃のつるぎ
かざして何を想いましょうや
松飾をつけた車が 走っていた
正月だというのに梅が咲いている不思議な一日
うつくしさを か ....
駅にゆく道すがら
こどもがしゃがんで俯いている
俯いた背中が震えている
泣いているのだとわかった
道行く人を視ていると
みな邪魔そうに避けていく
なかには蹴とばす真似をして
薄ら笑っ ....
重たいドアを押して外に出ると
階段を数段上ったところで
思わず立ち止まる
百貨店の屋上は
すっかり様変わりしていた
複雑な段差を組み合わせた
明るい色調のウッドデッキ
オリー ....
空と海の混沌に
突き刺さる黒い陸の先端
に白い少女が立っている
淡い彩りが現れ
生まれた風が海を押す
押されて海は岬に駆けのぼり
少女に白い言葉を飛沫く
潮鳴りにひそむ遠い記憶の ....
私の手は汚れている。
いつも茶色く汚れている。
正しくは、化粧品の茶色い色だ。
爪もいつも、
黄緑色に淀んでいる。
顔のなかを蟻が這う。
私は痒さに爪をたてる。
その爪についた汚れが、 ....
子供をたくさん産んだ 女友達
男を連れた 同級生
女が皆で ぼくの、ママになりたがる
オマエハ、デキノ、ワルイ、コ、ダカラ
(だったら、見なきゃいいのに
オマエハ ....
切れた指の皮膚の、
先端から咲いた小さな焔が、
野を駆けるように、
街へと拡がっていく。
私の思念のなかの街へと。
思念の街には色々な人が住んでいて、
皆、凍えながら何かを待っている。
....
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