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バターの日
強ばった手足に蜜を塗り
小鳥たちに愛を与える
ナイフ、なにも
切らないでいられるうちは
美しく澄んでいて
でもわたしたちには生活がある
パンもバターも熊の夢も ....
ひとり山道を歩いていると大蛞蝓に遭った
私は呼吸も荒い中、足を止め
元気ですか――と、声掛けした
彼は特に気にするでもなく、じっとしていて
じっとしていることが最大の防御ですと言わんばかりに
....
冬に一度だけ訪れる夏
ぬいぐるみを窓の外に向ける
雨だったから誰も気付かない
坊主よりも優しく
木魚を食むネコ
水の出ない蛇口
庭の雪の珈琲
あなたは消える蝶々を私にくれた
....
熊たちは夜をかみ砕き
蜂蜜の朝を得た
意味の羅列を踏みこえて
あたらしい夢をみるんだ
配管 像 通勤ラッシュ
茜色 ポリタンク 出されない葉書
僕の隣は空き続ける
なされなか ....
●桃●って呼んだら●仔犬のように走ってきて●手を開いて受けとめたら●皮がジュルンッて剥けて●カパッて口をあけたら●桃の実が口いっぱいに入ってきて●めっちゃ●おいしかったわ●テーブルのうえの桃が ....
空を眺めてると
涙が出そう
って君は嘘をつく
ときどき
そういう意味のない嘘が
心地よくてしかたがない
今日も
寒い一日
北風に
首をすくめて
相変わらず僕は間が ....
「風の強い日」
ぽっかりと空いた
鳥の空洞に
冬を詰め込んだら
空
あんなに高くなるんだ
街で暮らす人の目は
うつくしい等高線を
描き出す
いつの間にかの
水溜まり
天気予報 ....
信号待ちをしていたら
横断歩道を渡っていく
誰かが捨てたビニール袋が
その足をアスファルトにつけたまま
滑るように
ゆっくりと
信号が青に変わる直前
ビニール袋は渡り終えて
私は
....
夜通し
狭くて暗い
空飛ぶ輸送機に乗って
発着場まで
みんな順番待ち
大人しくして黙って
雪の降る静かな朝に
古い鞄に必要なものだけ入れて
お弁当は少し
おやつは沢山
あげたい ....
二〇二二年十一月一日 「夢」
お金を盗まれる夢を見た。
二〇二二年十一月二日 「夢」
また盗まれる夢を見た。こんどは靴だ。修学旅行先でだ。ぼくは高校生だった。
....
遠くまで
悲しみを はこぶのに
蝶をつかった
少しずつ
少しずつ
悲しみをちぎっては
蝶たちの背にのせた
けれども
かなしみは もう
重すぎて
蝶はみな とべなくなった
....
二〇二二年十月一日 「ネモ船長の最後の冒険」
海外SF傑作選『異邦からの眺め』6作目は、ヨゼフ・ネスヴァドバの「ネモ船長の最後の冒険」太陽系を破壊しに来た異星人たちをやっつけに地球から ....
有刺鉄線をナイロン弦に張りかえて
ビヤン、ビヤンと音を奏でる
音を聴いて目覚めた鳥が飛び立った
丘の向こうの仲間に知らせる
警笛ではない、静かな寿ぎ
地下室ではテーブルを囲んで作戦を立て ....
{引用=鬱蒼}
鉈で枝をはらう
雑木林に入口をつくる
入ったからといってなにもない
暗く鬱蒼としたそこに
誰を招くわけでもないが
時おりもの好きな通行人が
ちょっと覗いては去ってゆく
....
深夜、兄がやってきて
透明な言葉を吐いた
ご飯を食べるように
一粒一粒吐いていた
寝床を整えてあげると
几帳面に身体を納めた
兄は二十八歳で製薬会社に就職し
寝返りをうった
も ....
二〇二二年八月一日 「海東セラさん」
あしたは高木精神科医院に行く日だ。
ワールズ・ベスト1965『時のはざま』5作目は、ウィリアム・F・テンプルの「時のはざま」ゴッホのいる時代にタ ....
スマホのやり過ぎで
疲れ、腹も減り
近所の和菓子屋へ
おむすびを買いにいった
店の奥に主人の大きな背中が見え
古い機械が
ぎったん、ばったん、餅をつき
合い間に主人が、手でこ ....
二〇二二年七月一日 「バスカヴィル家の宇宙犬」
海外SF傑作選『クレージー・ユーモア』5作目は、ポール・アンダースン&ゴードン・R・ディクスンの「バスカヴィル家の宇宙犬」地球人の真似をする ....
{引用=空白葬}
空白を肥やそうか
みかんを剥くみたいに
あの赤裸々な寡黙
仰け反って天を食む
ことばの幼虫
インクのように膨らんでゆく影
化石は顔を残せないから
ハンマーで殴っても
....
土煙(つちけむり)
積乱雲
四季の狭間、の十字路に立つ
深夜、明け方の少し手前に、このマンホールに飛び込むと
黒々と波打つ日本海へと通じるトンネルになっている、らしい
陸橋の塗装に書 ....
二〇二二年六月一日 「荒木時彦くん」
講談社文庫の海外SF傑作選の1冊、『未来ショック』4作目は、アイザック・アシモフの「夢を売ります」どこかで読んだことがあると思って調べたら、ジュディス ....
目を覚ましたおれは椅子に座ったまま縛り付けられていた
目の前に立つ男は謎を解けと言った
謎ってなんですか?
これだ。男はハンマーを振り上げて振り下ろす
肘掛けの上に固定されたおれの右手の甲は叩 ....
笑いながら枯れていった
夏草の影は
種子を残さなかった
わたしたちの手のひらには
やがて海が降り始めた
砂の建築物がぽつぽつと建って
線路が敷かれた
私鉄沿線沿いの小さな部屋で
わたし ....
二〇二二年五月一日 「スノウ・クラッシュ」
持ってたけど、学校の図書館に寄贈したSF小説2冊をヤフオクで入札した。いまのところ、ぼくが最高金額入札者。
ぼくを超える入札があったので ....
{引用=献盃}
あそび心にこだわるあまり
一生をあそびで終えたあなた
ごらん菩薩のドーナッツ
はち切れんばかり空の空
{引用=一色}
砂粒飲んで顔色も変えず
空き地の ....
たんたんと
こころのおきばしょをさがすために
いきてきたわけじゃないのに
あいらくも
たんたたんとやられちゃ
もうなにもかも
あぁ
そんなことのために
ことばが ....
テントウムシ、いのちの星、
尽きることが、もうすでに約束された、
きまぐれな、
昼さがり、
あたたかく、けれども冬にちかい、
秋の太陽が微笑んでいる、
そのえくぼから産み落とされた、
く ....
やみよのしじまが
うるさくひびく
うるさくひびいくては
わたしのけはいの
たいきけんにしんにゅうする
ほしなんてみたことないという
あなたに
ほしをみせてあげたいよるが
いくつもとおり ....
きみの教室はいつも水浸し
ぼくの上靴にフィンが生えてきた
きみを追いかける足は上手く回らない
きみは息継ぎが苦手でいつも口ぱくぱくで
そんな間抜け面もとても可愛くて
ぼくの教室も常に水浸しで ....
土曜日 雨のち晴れ。現場にて。
そういえば、昔は土曜日も両親は仕事で休日は日曜日しかなかったな。小学校もたしかそうだった。半ドンではあったが。それにしてもどうしてぼくはこの令和になった今でも土曜日に ....
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