まぶしすぎる朝に
ポテチの袋をすてる
ケンタの箱をすてる
底のほうに液のたまった
わけのわからないビンをすてる
まるで夢みたいだ
車のキーが ....
マフィンはいらないよ
くたびれた風のように
もうここを出ていくから
皺のとれぬシャツのために
ハーモニカを吹いてくれよ
冷めたコーヒーをすするよう ....
ぼくはいつも
見当違いのことばかりする
マンボウ、
鉛筆の先がじょじょに尖る
マンボウ、
ポロシャツの赤が褪せて落ちる
思い出と花の色は白い
ビニ ....
天窓からの陽射しでカレンダーは
上のほうだけが日焼けしてしまった
うんとこしょ、どっこいしょ
ヤマメが冷たい川の流れを
いそいそと掻きわけてゆく
うんとこしょ ....
円盤が{ルビ宙=そら}をまわる
ふたつめのタブが開かれる
様子をうかがうみたいに
今
ブラームス、
銀色のデスク、
影をおとす冷徹
ここはどこだろ ....
いたみ。
それがひとつ、
水たまりにうかんでる。
とろとろの月といっしょに
サンダルをひっかけて
コーヒーを買いにでたり、
すこしだけひらい ....
汽車にのって
なまぬるい水筒にぼくは口をつけた
鞄からとりだしたおむすびは少し
いびつな形にへこんでしまった
ほおばりながら見まわしてみるけれど、
このなかに ....
しろい壁に
夏がからみついている
目に見えないほど小さな
花々が咲き乱れ
呼びかけたはずの声はどこか、
遠いところから戻ってこない
あざやか ....
草の皿に
いっぴきのいなごがとまっている
ぼくはいつも色んなことを
すぐに駄目にしてしまう
砂団子のように丸く脆く
君への思いを胸のなかに固めて
....
がれきを噛む
直角の月光がきみの
糸切り歯を白く燃やしている
かなしみを心にとめ
そして死ぬように忘れ、
忘れるように死んでいく
もろく、
....
だきしめたものはなんだろう
あの雲にのって
ほんの子どもみたいな
ばかげた思いをしょって
ただ、あたたかな
かおりだけのこったこの手
なんだ ....
初夏の淡い光が
ラップトップに白くこぼれる
なにを言葉にすればいいかわからない
机のすみに置かれた古い文鎮
地下水のようにしんと音は澄み
こわばっ ....
あなたの首もとにぶらさがる銀の鎖
使いがってのよさそうな長い舌
うるおしたい
うるおしたい
月の柔い灯り……
嗚呼、
小石の影。
....
すてきな溝があったので
かたほうの耳をそこにあずける
夏草は風にこすれ
虫たちが{ルビ清=さや}かな羽音をたてる
日の光のなかですべては
ひとしく ....
朝、
調律をはじめると
雀がどこかへ飛んでいった
かなしみのあまりこぼした涙が
きみの胸のうえでかわくみたいに
あんパンを頬張る
午睡のなかでぼくは
とうめいな壁になっていた
どこか遠いところから
木魚の澄んだ響き
井戸の水に棲むたくさんの微生物
午睡から醒めてぼ ....
冬の蛇のように
ゆるやかなとぐろを巻き
光たちはもう、
眠りに落ちてしまったから
わたしは雨の音だけが
心を満たしていてほしい
歌をうたうくちびるのよう ....
道ぞいの用水路に
浮かぶ月影のうえ、
きみの冷えた笑いがはじける
おざなりな微熱もいま
ぼくの胸から消えてうせる
おわかれだね
おわかれだ
まるで ....
この雨があがったら
会いにいくよ
白い花のにおい、
なめらかに風を滑るとき
シャツのそでをまくり
くらい部屋にカーテンをひき
せわしなくドアをあけるよ
....
白は黒に変わり
黒は白く塗られ
なまぬるいポケットの中に
きみの望む明日はこない
夕暮れどき、猿が笑い
ビルの灯りがまたひとつ消える
ぼくの ....
伸びすぎた爪を切った
雨が吹いて桜の花びらは散った
たくさんの緑たちを巻きつけて春が夏に変わる
男の子がカナシミを知ってくみたく
女の子がタイクツを知ってくみたく
....
五月、
牛舎はくたびれて
立っているのもやっとのようだ
風のにおいはつんと饐え、
鍬があちこちで土に埋まっている
午後になり、積まれた干し草を
....
いい夢と
わるい夢がならんで
砂利のなかに混じっている
風はいつしか乾き、
口のはじが切れている
きみのざれ言は聞きたくない
きみの睫毛がうごくのも
....
つまらない話が
車窓のそばをながれてゆく
それは電柱に引っ掛かりしばし風に耐え
けっきょくは置きざりにされてしまう
きみの
うすく濡れたくちびるに
ポテ ....
砂漠
あなたの両の胸から
月あかりの残り香
ねえ、
アスファルトに臥した
さびしがりの虎もわらうよ
口のはじにちいさな
白い兎をくわえ ....
傘の似合う日
けれど雨はふっていない
ベッドで女がねむっている
醜く大きな口を開いて
その腕に巻かれた腕時計の針が
淀みなく回っているのはひどく滑稽だ
....
春がきて
やぶれた椅子に
ラムネ瓶が座っている
恋をして
想うのは
詮無いことだけ
詮無いことだけ
詮無いことだけ
....
僕のなまえがとけてゆく
きみの
鎖骨にたまる、
やさしげな影の湖で
カタツムリの殻のような
気だるい模様を描いて
きみのなまえもとけてゆく
....
ひかえめな大きさの
山の中腹に建つ小屋で
ハリネズミと時を共にする
ところどころに開いた隙間から
緑色に澄んだ風がしのびこんでくる
ひどく惨めな小屋
私 ....
かなしみに塩をふる
ほんのひとつまみ
朝の光を浴びるとき
雨に濡れたいくつもの言葉が
「うれしい」という言葉に変わる
あなたのえくぼが深くなるとき ....
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