森のなかで眠る
ひどくねじくれた女
爪に溜った懐かしい土
{ルビ蚯蚓=みみず}があなたの太腿を這う
けがれているから葉は美しい
「たべてよ、
ねえ、た ....
きみがすき
まっすぐな線をひいてみても
やっぱりどこか曲がってんのさ
だらしなく
少し可愛らしく
想い寄せるときは
心をしんとしずかに……
....
銀色の時計を巻く
なにかの口実みたいに
夏が秋に変わったことに
驚いたようなふりをし
やがて 歌、うたい
ドレミもわからないくせに
唐変木
素っ頓 ....
雲が赤く染まる
町はうずくまっている
少し怪我をしているみたいに
どこかで華やかなパーティーが開かれている
緩められるネクタイ
グラスの触合う他人行儀な音
....
ハンカチに指で書いた
とうめいなそのポエムは
日なたと影のにおいがする
歯をみせてわらってよ
はにかんだきみの口元が
不思議にうごくのも好きだけど
高い ....
老人が籾殻を焼いている
見えそうで見えない光のような匂いだ
空は青く、少しあどけない
わたしという言葉はもう
ここには似合わない
赤茶けた四角い煉 ....
向かいの家の窓から
女が身を乗り出して下を見ている
左手になにか小さいものを持っている
それがなにかまでは見えない ここからは
コンセントに埃が溜ってい ....
朝がいそいでいる
子の笑う声のような
光たちを小脇に抱えて
ガラスの球は真ん中から
はっきりとふたつに割れた
きみが急に
うたうからだよ
ゆうべ見 ....
銀紙のいたみが残っている
なにをつつんでいたのだろう
じょじょに
曲がりくねり ながら
朝になって夜になって
夜になって
夜になって
言葉はみじか ....
午後六時十五分頃の
日に焼けた街のことをきみは歌いたかった
八月……
その燻すんだ終わりにむけて
けれどもきみの細い首で
ネックレスが曲がっている
飴色 ....
飽き飽きしちゃった
きみは空にならないペットボトル
きみは思いだせない夜の夢
鍵をあけて待っているから、
口車にのせてよ
だれも聞いたことのな ....
家に帰って
ギターの弦を布でふく
なにか歌いたいような気はするけれど
なにも心にうかんでこない
なぁ、訳知り顔で、
知ったようなことをほざくような ....
三点リーダで終わりにしよう
夕暮れ時、空は実に赤い
今日は長いようで短かった
誰が誰を裏切ったとか
誰が誰を茶化したとか
そんな与太話もやがて ....
恋人とよんでもいいだろうか
きみのことを
この夏がおわるころには
はげしい雨がふる夜は
ビニール傘を用意するから
おなかが空いたらカップヌードル、 ....
かなしさは夜のなかにある。
体育の時間、ぼくはだれともペアをつくれ
ずに、みんなが踊るフォークダンスを眺めて
いた。それは濁った河を渡る水牛を眺めるの
....
祭囃子が遠ざかる
ひとの気も知らないで
暗い夢をひとつひとつ、
棚の奥へ押しこめていくように
きみの顔が笑っていた
みじかい髪の毛がひとつひとつ、 ....
秋のはじまりの朝は
意地悪なひとのようにつめたい
鈴むしがどこかで鳴いてます
ぼくはきょうも
きみのことがすきで
気持ちはかたちをくるくる変えます ....
まずしい日々をおくっている
ばらの花がいったい、
どんなところに咲くのかしらない
雨上がりの
気温がひくい朝
きみの手をつよくにぎる
教えて ....
あなたは
夏のひざしのように
あらがえないひとだった
よごれた窓をやぶり
ヤニくさいカーテンをそっとくぐって
卓上のパンを照らした
空になっ ....
机のうえには
飲みかけの何かの瓶が五つ
それからひとつの電卓
ほんとうは臆病なくせに
神経質に腹を立てるのが得意な
きみでも笑顔を見せることがあっ ....
昭和と平成の間にはさまって
押しつぶされてしまったような工場を
眺めながら煙草を一本喫う
犬の散歩をする{ルビ母子=おやこ}は
怪訝な顔ひとつ見せず通り過ぎる
....
鳶という鳥の
名前を覚えたのもこの街だった
アキタケンホンジョーシゴモンチョウ
蜜柑色の陽射しにひたされた夢の形
パーマ液の匂いがするこの街
ここ ....
するどい刃は
闇のなかでじくじくふくらむ
夕暮れ時、しろい壁には
おおきすぎる影がひろがる
電話越しに言葉をぶつけながら
床にはみにくい落書きをし ....
夏の花びらはたやすく落ちて
コンクリートで分厚い影と
ひとつにかさなった
きみは塀にからだをもたせた
なんだかひどく疲れたみたい
ぼくは膝から胸に ....
犬
モップの形をした……
砂塵はさらさらと舞い、
生活のひびに埋まっていった
きみの手は老人のように冷たい
きみの眼は翡翠のように冷たい
そ ....
あちこちで物音がして
生まれたり死んだりしている
洗ったばかりの白いシャツ
でも、なんだか袖を通す気になれず
日曜日はいやなことから目をそらす
べ ....
透明な鍵盤に置くかのように
あなたの指が宙にとどまる
噎せ返るほどに暑い八月
そんな形で朝は始まる
夢のなかでそれは確かに
風靡く草原を鳴り渡って ....
バーガー・ショップの狭いテラス
台風のあとで椅子が倒れている
ケチャップでよごれた君の唇
文脈を外れた一行のごとく
包み紙はテーブルをこぼれて落ちる
恐怖
....
{引用=――押見修造「惡の華」に}
くらい月が
きみの瞳にとざされている
歯には海苔がついている
雨をうけた自転車の
車輪からはいやな匂いがする
町 ....
煙突
その柵のむこうに
無数にうごめく夏の虫たち
とうめいなシャツをぬいで
ひとりきみは走りだした
煙突
イメージそれははかない
イメ ....
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