犬
  モップの形をした……
  砂塵はさらさらと舞い、
  生活のひびに埋まっていった



  きみの手は老人のように冷たい
  きみの眼は翡翠のように冷たい
  そ ....
  あちこちで物音がして
  生まれたり死んだりしている
  洗ったばかりの白いシャツ
  でも、なんだか袖を通す気になれず



  日曜日はいやなことから目をそらす
  べ ....
  透明な鍵盤に置くかのように
  あなたの指が宙にとどまる
  噎せ返るほどに暑い八月
  そんな形で朝は始まる



  夢のなかでそれは確かに
  風靡く草原を鳴り渡って ....
  バーガー・ショップの狭いテラス
  台風のあとで椅子が倒れている
  ケチャップでよごれた君の唇
  文脈を外れた一行のごとく
  包み紙はテーブルをこぼれて落ちる
  恐怖
 ....
{引用=――押見修造「惡の華」に}

  くらい月が
  きみの瞳にとざされている
  歯には海苔がついている



  雨をうけた自転車の
  車輪からはいやな匂いがする
  町 ....
  煙突
  その柵のむこうに
  無数にうごめく夏の虫たち



  とうめいなシャツをぬいで
  ひとりきみは走りだした
  煙突
  イメージそれははかない
  イメ ....
  まぶしすぎる朝に
  ポテチの袋をすてる



  ケンタの箱をすてる
  底のほうに液のたまった
  わけのわからないビンをすてる
  まるで夢みたいだ
  車のキーが ....
  マフィンはいらないよ
  くたびれた風のように
  もうここを出ていくから



  皺のとれぬシャツのために
  ハーモニカを吹いてくれよ
  冷めたコーヒーをすするよう ....
  ぼくはいつも
  見当違いのことばかりする
  マンボウ、
  鉛筆の先がじょじょに尖る
  マンボウ、
  ポロシャツの赤が褪せて落ちる
  思い出と花の色は白い
  ビニ ....
  天窓からの陽射しでカレンダーは
  上のほうだけが日焼けしてしまった
  うんとこしょ、どっこいしょ
  ヤマメが冷たい川の流れを
  いそいそと掻きわけてゆく
  うんとこしょ ....
  円盤が{ルビ宙=そら}をまわる
  ふたつめのタブが開かれる
  様子をうかがうみたいに
  今
  ブラームス、
  銀色のデスク、
  影をおとす冷徹
  ここはどこだろ ....
  いたみ。
  それがひとつ、
  水たまりにうかんでる。
  とろとろの月といっしょに



  サンダルをひっかけて
  コーヒーを買いにでたり、
  すこしだけひらい ....
  汽車にのって
  なまぬるい水筒にぼくは口をつけた
  鞄からとりだしたおむすびは少し
  いびつな形にへこんでしまった
  ほおばりながら見まわしてみるけれど、
  このなかに ....
  しろい壁に
  夏がからみついている
  目に見えないほど小さな
  花々が咲き乱れ



  呼びかけたはずの声はどこか、
  遠いところから戻ってこない
  あざやか ....
  草の皿に
  いっぴきのいなごがとまっている



  ぼくはいつも色んなことを
  すぐに駄目にしてしまう
  砂団子のように丸く脆く
  君への思いを胸のなかに固めて
 ....
  がれきを噛む
  直角の月光がきみの
  糸切り歯を白く燃やしている



  かなしみを心にとめ
  そして死ぬように忘れ、
  忘れるように死んでいく
  もろく、
 ....
  だきしめたものはなんだろう
  あの雲にのって
  ほんの子どもみたいな
  ばかげた思いをしょって



  ただ、あたたかな
  かおりだけのこったこの手
  なんだ ....
  初夏の淡い光が
  ラップトップに白くこぼれる
  なにを言葉にすればいいかわからない
  机のすみに置かれた古い文鎮



  地下水のようにしんと音は澄み
  こわばっ ....
  あなたの首もとにぶらさがる銀の鎖
  使いがってのよさそうな長い舌
  うるおしたい



  うるおしたい
  月の柔い灯り……
  嗚呼、
  小石の影。


 ....
  すてきな溝があったので
  かたほうの耳をそこにあずける



  夏草は風にこすれ
  虫たちが{ルビ清=さや}かな羽音をたてる
  日の光のなかですべては
  ひとしく ....
  朝、
  調律をはじめると
  雀がどこかへ飛んでいった
  かなしみのあまりこぼした涙が
  きみの胸のうえでかわくみたいに
  あんパンを頬張る
  午睡のなかでぼくは
  とうめいな壁になっていた
  どこか遠いところから
  木魚の澄んだ響き
  井戸の水に棲むたくさんの微生物
  午睡から醒めてぼ ....
  冬の蛇のように
  ゆるやかなとぐろを巻き
  光たちはもう、
  眠りに落ちてしまったから
  わたしは雨の音だけが
  心を満たしていてほしい
  歌をうたうくちびるのよう ....
  道ぞいの用水路に
  浮かぶ月影のうえ、
  きみの冷えた笑いがはじける
  おざなりな微熱もいま
  ぼくの胸から消えてうせる
  おわかれだね
  おわかれだ
  まるで ....
  この雨があがったら
  会いにいくよ
  白い花のにおい、
  なめらかに風を滑るとき
  シャツのそでをまくり
  くらい部屋にカーテンをひき
  せわしなくドアをあけるよ
 ....
  白は黒に変わり
  黒は白く塗られ
  なまぬるいポケットの中に
  きみの望む明日はこない



  夕暮れどき、猿が笑い
  ビルの灯りがまたひとつ消える
  ぼくの ....
  伸びすぎた爪を切った
  雨が吹いて桜の花びらは散った
  たくさんの緑たちを巻きつけて春が夏に変わる
  男の子がカナシミを知ってくみたく
  女の子がタイクツを知ってくみたく
 ....
  五月、
  牛舎はくたびれて
  立っているのもやっとのようだ
  風のにおいはつんと饐え、
  鍬があちこちで土に埋まっている



  午後になり、積まれた干し草を
 ....
  いい夢と
  わるい夢がならんで
  砂利のなかに混じっている
  風はいつしか乾き、
  口のはじが切れている
  きみのざれ言は聞きたくない
  きみの睫毛がうごくのも
 ....
  つまらない話が
  車窓のそばをながれてゆく
  それは電柱に引っ掛かりしばし風に耐え
  けっきょくは置きざりにされてしまう
  きみの
  うすく濡れたくちびるに
  ポテ ....
草野春心(1125)
タイトル カテゴリ Point 日付
似ていて、けれども違うこと自由詩313/8/14 19:50
勝手にしやがれ自由詩513/8/11 20:09
天籟[group]自由詩7+*13/8/4 23:12
恐怖[group]自由詩513/8/3 7:55
ドミノ自由詩413/7/23 0:57
煙突自由詩513/7/20 10:40
ポテチ自由詩513/7/20 10:32
マフィン自由詩813/7/13 19:58
マンボウ自由詩413/7/12 3:02
ヤマメが冷たい川の流れを自由詩7*13/7/7 22:36
円盤[group]自由詩313/7/6 23:46
とろとろ自由詩813/7/6 2:01
汽車にのって自由詩913/7/5 22:36
赤いビードロ自由詩413/7/5 22:07
いなご自由詩513/6/29 10:28
がれきを噛む自由詩613/6/29 9:32
かおり自由詩213/6/29 9:23
青葉自由詩313/6/23 16:38
使い勝手のいい舌自由詩213/6/9 16:42
夏草自由詩713/6/1 6:39
調律自由詩413/6/1 6:04
あんパン[group]自由詩813/5/30 0:00
雨の日の花[group]自由詩813/5/29 23:45
月影自由詩313/5/26 23:44
会いにいくよ自由詩013/5/24 19:30
横断歩道自由詩213/5/19 23:19
ヴィーナス自由詩213/5/16 23:25
牛舎自由詩313/5/15 23:21
ふたつの夢自由詩513/5/15 22:45
つまらない話自由詩413/5/6 21:52

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