逃げた婚期が加速している
引き出しの奥に置かれた、消しゴムは
単なるゴムの塊です
空地の{ルビ叢=くさ}に埋もれた、車は
壊れた鉄の死骸です
消しゴムは白紙の文字を消しゆく{ルビ瞬間=とき}
車は道路を走る瞬 ....
勝手に存在する事物に勝手に音声を割り振る
それが名付け
名付けの連なり それが言語
互いに区別される音声
世界の適当な分割 それが概念
....
いいたいことは
大体決まっているんだ
真昼間のフクロウが
寝言を言っていた
ジャングルジムのうえ
タバコを吹かす少年のなまえはない
あるのは
ほしぞらと月だけ
でもちっとも ....
まだ同じ土俵に立てない
私の人生の話
目を覚ませ それは本当の自分じゃない
夢ばかり見ても 叶えようともしなければ
何も変わらない
何時までそこにいる?
一歩踏み出してそこから飛び出せ
飛行機雲の
幾筋か
集まるところ
空の奥
見上げると
吸い込まれそうな
光る青
流れる星の
一瞬間
消え入るところ
空の闇
立ちあがると
包まれるような ....
おおゆきが降った夜
雲の切れ間で
三日月につかまって
空中ブランコしてたのは
木の葉の舞う頃
行方不明になった黒ネコ
最初は新聞の折り込みチラシ
猫のアップの写真の下に
「飼い猫を ....
露草な心のまま こぶしを天に突き上げ
リズムを刻むたび 霧が 晴れてゆく
遥かな思い出は 縁側の飛行機模型
竹ひごをしならせて 夢は青空
若くて死ぬことも
老いて生きることも ....
{引用=
最期に涙はなく
雪に重ね手をとる町
ふたりの尽きる冬の先
劇場のように広く
}
言葉を編み
視線を編む
少しは暖かくなってくれたかな
夕方過ぎの薄闇の中
自転車に跨った
塾帰りの少年少女
信号機は止まれのままだ
いずれ青に変わる時が来るのだから
ゆっくり大人になればいい
僕はと言えば車の中
....
丘をのぼる石だたみの坂道でうずくまっている
ベレーをのせたあたしの夢 ただの酔っぱらい
指にこびりついているのは絵の具じゃない
細かい灰色の砂ぼこり 指の間から零れおちた砂の残骸
こんなと ....
あなたの耳にふれる
あなたの感覚になりたくて
あなたの耳にふれる
わたしはふるえている
あなたの鼓膜をゆらす
あなたの音になりたくて
あなたの鼓膜をゆらす
わたしはゆらいでい ....
歌留多から強いアーモンドの匂い
いつまでも閉店セール続いている
港街のとある酒場で出会った爺
コップ酒で赤ら顔、威勢は良くて饒舌で、昔語りを捲くしたて、嘘か誠か話の先で、次第に次第に静かに眠りこむ。
小柄な爺の世迷い言
小僧よく聞けこの俺は
十五の ....
追いかけた夢のかけらが
透明なみどりのガラス瓶のなかで
体を揺らせるたびに
きりんこりんと泣く
泣き声を聞きたくなくて
じっと身をひそめる
あかるい場所から目をそらせる
みじめな思い ....
ミッキーも大黒様の使いかな
私は白馬に乗り風をきり野原を駆けている
白馬は翼を広げ天空へと舞い上がっていく
私は音楽を聴きながら幸せをかみしめよう
何を齷齪し何を不安がっているのだろうか
美に触れ ....
<十年>
もう十年も
好きでいるのですから
あと十年は
好きでいるのでしょう。
<途絶>
報われたいと思ったことはありませんよ
報われてしまったら
そこで終わりです ....
キックオフの笛が鳴って
碧い芝生の中に疾走するペガサスを見た
紺碧の空のフィールドに
雲のディフェンスは道を空ける
ペガサスはボールを携えて空を駆け
インゴールへと舞い降りる
砂の ....
1980年になったと
あの日、テレビはカラフルにうたっていた
パロディでも懐古趣味でもなく
アイドル歌手は真っ正面に
キラキラな服を着て歌い
その後に続いてニューミュージックがかかる
....
元旦
ぽかんと開けた口に
〈賀〉が入って わたしは わたがし になった べたべた 甘すぎて たまらん と
〈誰〉が逃げだ し
わたがし ....
福引にアタリひとつもありません
マリちゃんの初風呂の湯をごっくごく
伯父さんのお葬式の日に
父に会いに行った
病床で 夢と現のあわいを
ゆっくり行き来している父は
「今○○さんが来て行った」と
仲良くしていた兄の名を言う
その人が亡くなったという事を
お ....
栗色のたてがみをなびかせ
どこまでも駆けて行く
その凛々しい姿どこまでも
草原の果て 日の昇る場所
おまえは駆ける 駆ける
休むことを知らない
この大地をどこまでも
おまえはひとり駆けて ....
ことしもあたらしいかなしみがやってくる
それでいいのだと思う
ことしも友が去ってゆく
それはしょうがないこと
遠慮なく時は過ぎひともかわる
すべてをうけいれてはいられない
僕の ....
ペンを取る鉛筆立ての中は空っぽ
ノートの上でぼんやりと何かを考えている
鉛筆のないテーブル 蝶の舞う緑色の庭のすみっこで
一人でいたら 生きる者はすぐに死ぬのかも知れない
一人で詩の言葉を書 ....
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