ストーブで焼いたもちが
いつも焦げるあの人は
はさみでお焦げを切り取って
わたしに差し出すんだから
表面はいつもとろりとのびる中身が見えて、このもち、
わたしにそっくりだって思うんだ

 ....
酸素を取り込みすぎて
複眼には
緑色の斑点が
偽って映される。
レイディ。
君のあの日つぶやいていた
妖精が見えたよ。
彼らは発達した
背筋ではばたくんだ。



2002.2 ....
久しぶりのまばたきが
わたしにしみわたる
たった一度で世界をすべて
洗えるとは思っていないよ
日々あれもこれも忘れていく中で
でも、きっと忘れない
あの日の空、光
似たよ ....
内臓から
絞り出される渇望
追い詰められていた
それでいて抱きしめられていた
壊そうとしているのか守ろうとしているのか知らないままだった


熱をかきわけ
わたしは生き延び ....
ぎゅっと
からだじゅうをにぎりしめてまるまった
てのひらのつめあと
ああ、と、
目を閉じて、夜
心臓の音の数でなにかとの距離を測り
火を吹き消すようにして忘れていく
見えたも ....
左だけ、はいた靴下の
もう片方は
ひざの上に乗せている
今 泣いてはいない


冬が立ち止まったまま
なにか、みつけて、いいかけて、やめて、
悲しげなまなざしを隠すよう ....
こよみに合わせた薄着で
知らない人たちに囲まれておとなしくする



大人のふりした靴のヒールに
マフラーをほどいた首元に
過ぎていく風は、まだ肌寒い



わくわくしなさい ....
きみの握る絵筆の先の
色を想像する



伸びた爪の先を見捨てた
生きやすくなりたくて
だけど来月の自分すら見失ってしまう

小さくなったり大きくなったりする心臓に対して
心が
 ....
朝焼けなのか夕焼けなのか分かんないような
冷たい色の空
ずっと遠く 鳥の影が頼りない
電灯のあかり、電柱をつなぐ線を視線で辿る
いま、会いたい人がいるよ
元気でやってますか

鞄 ....
一段、一段、階段を上がると
わたしはその分、地面から遠ざかる
足元にはおもちゃみたいに小さい車、ひとびとが
忙しそうに動き回っている

こんなに狭いのに、都会では
あっちで ....
皮を剥いた野菜を刻み
大きな鍋で煮込んだ
できあがるころにはもう眠らなければね
まいにちの時間が決まっているので
わたしは、少しずつのことだけしかできない
もうおやすみ

次の日 ....
早送りで巻き取るテープの長さで
始まりから終わりが決まってしまったのだった
つやつやとしたリボンの
上を走ったり
裏に隠れたり
滑り降りて落ちそうになって
プライベートなミュー ....
騙されるのって
気持ちいいでしょう
目を閉じて
胎内にいるここちで

さあ、ごらん、言ってごらん
とっても幸せに生きていますって
溶け出したなみだにくるまれて
あたたかいね ....
大層なことは言えないよ
わたしは
神様じゃない

嫌なものは嫌
見たくないものは見ない
悲しいことは悲しみごと受け入れて
分からないものは怖いし
怖いものからは逃げる

楽 ....
鼓動がいつもより早くて
いきぐるしいので
ねむれない、わたしは


なんども寝返りを打って
いちばんましなポーズで
妥協しようとする


あなたはベッドの一番とおいところに ....
裸で向かい合うと
あまりの情けなさに
思わず笑ってしまった
なんだかすぐにでもこわれそうなんだ
ひどくアンバランスで


AVやファッション雑誌、
漫画で見かける
に ....
五時のサイレンが鳴ったら
みなさんおうちへ帰りましょう

わざとゆっくり歩いて帰る
うちに着くと
やかましいリビングを通り抜けて
疲れきった階段を上がり
自分の部屋に向か ....
抱きしめた彼女が
いいにおい
もったいなくって
息吸いっぱなしで
胸がぷかぷか膨らんだ

苦しいのだ
彼女がここにいるから
悲しいのだ
嗅覚の記憶は

抱きしめた彼女 ....
つかれた夜に



化粧を落とす
丁寧に泡立てて顔を洗う
せっけんのにおい
シャンプーを流すときに目を閉じて見える色
鼻歌
そして、熱唱

バスタオルに顔をうずめる
パンツ ....
内側の真っ赤な熱が透けて
桃色のようにみえる
生き物のようにやわらかくて、よくみると


痙攣している


それを薄紙で包んで
そしてリボンをかけて
ポケットに入れては持ち ....
もうほんとうはわたしに
必要な言葉なんてないのだと思う
ただ
意味もなく泣き出してしまいそうな
きもち、
きもちを
持て余している

ただしい丸を形作る粘土
を乗せて回転する ....
ディ・スタンス

心地よいものごとを心地よくするのはわたしの脳みそ
捕まえられない速さで電気信号が駆け抜けて
きみの指は
きみの声は
わたしによってわたしにとって意味を持つ

 ....
ゆゆ、ゆゆ、
押し付けるようにして

なくならない境界線を
いとおしくなぞる舌は
ちょっと邪魔、
だけど

ごらん
ぶざまなわたしたち
かっこわるいよ

他のだれに ....
ぐらぐらと沸騰している風景の中で
レイザーライトのように蝉が鋭く
生きてる
夏の街路樹をすべて焼き殺すように
生きてる
生きてる

わたしはゆっくりと自転車を漕いで
死んだふり ....
ゆるむ視界の中で
先を恐れないまま進むのに慣れた
ほんとうのこと を追い求めるのをやめてから
もう幾年も過ごした

あーあ、生き延びてしまった


通り過ぎていく風景が
 ....
ちゅうしゃじょうのかどっこで
おんなじところをぐるぐるしている
おちばや
ほこりや
こんびにのふくろが
あんまりわたしににていたので
おもわず
うずのまんなかへとびこんだら

 ....
夕焼け時刻には出歩かない
気持ちが恐くなるから
真っ暗に包まれてあんしんになったら
そしたら、帰る

終わりがあることに救われて生きている
ただ、その瞬間を待っている
帰り道のわ ....
悲しみの理由に向き合うことを
とっくに諦めたわたしならきっと
幸せに生きることができるだろう
じょうずに思い込んで

生きているだけでもう 苦しいと言った
あの人のかなしさを
ま ....
言葉を失った星では
愛の意味は
悲しみに似てる
角のない重みが
つまさきから立ち昇り
しっとりと突きすすむ
その先でぶつかった

痛みが
あたたかいので
我慢して待ってみたら

どこまでも
どこまでも
 ....
________(76)
タイトル カテゴリ Point 日付
もちを焦がす人自由詩214/9/20 17:21
_自由詩114/9/20 17:19
サイレン自由詩112/12/4 1:09
夏を弔う自由詩112/8/26 16:32
何も起こっていないみたいに自由詩212/1/31 23:17
かたっぽ自由詩3*11/12/16 0:52
四月自由詩1*11/3/28 16:00
山吹色自由詩1*11/2/21 0:46
会いたい人自由詩1*11/2/20 2:54
空中散歩自由詩3*11/2/20 2:06
消費する自由詩4*11/2/2 0:10
74分カセットテープ自由詩1*11/2/1 1:13
幸せに生きています自由詩2*11/2/1 0:56
死ぬまでの時自由詩010/6/25 1:02
真夜中の牛乳自由詩5*10/6/7 22:28
キャンドル自由詩1*10/5/20 0:03
クリームシチュー自由詩3*10/5/19 1:19
バブルズ自由詩010/5/18 1:05
つかれた夜に自由詩2*10/5/18 0:54
痙攣する熱自由詩2*10/4/10 0:19
回転の理由自由詩3*10/4/10 0:11
届かないので測れない自由詩3*10/3/28 1:41
ゆゆ自由詩1*09/9/25 1:29
2009年の夏の横断歩道で自由詩3*09/8/9 21:09
車窓自由詩1*09/3/27 1:29
くずのうず自由詩1*09/1/27 23:59
わたしの悲しみは幻でできている自由詩3*09/1/8 1:37
悲しみに寄せて自由詩009/1/8 1:34
言葉を失った星では自由詩2*09/1/8 1:18
サイレン自由詩0*08/12/19 0:39

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