クリームシチュー
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五時のサイレンが鳴ったら
みなさんおうちへ帰りましょう

わざとゆっくり歩いて帰る
うちに着くと
やかましいリビングを通り抜けて
疲れきった階段を上がり
自分の部屋に向かう
電気よりも先に
ラジオをつけて
ボリュームを上げる

毎日成長しているわたしは
この世界で
ばかみたいに小さい

恋愛の先が結婚で
結婚の続きがこんななら
わたしはそんなもの要らないって、泣いてた


だけどねえ
お母さんのクリームシチューには
ウインナーが入っててね
スプーンの上で転がって
テーブルに落として
「馬鹿だなあ」ってお父さんに笑われて

だけどねえ
どこにでも着いてきて
なんでも真似する妹を
わたし怒って嫌がって
「お姉ちゃんでしょ」って言われて
でもほんとはちょっとだけ誇らしかった


そんな、
まるで幸せ、らしい日々は
確かにあった
なかったことにはできないので

いやだなあ
もうなんだかさ
なんだか
ずっとずっと苦しいよ








自由詩 クリームシチュー Copyright ________ 2010-05-19 01:19:23
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