回転の理由
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もうほんとうはわたしに
必要な言葉なんてないのだと思う
ただ
意味もなく泣き出してしまいそうな
きもち、
きもちを
持て余している

ただしい丸を形作る粘土
を乗せて回転するろくろ
もう少しで完成しそうなのに
おずおずと触れて、それを歪ませてしまう
そうすると
あんしんするようだった
ろくろをまだ止めないでいられる
立派な理由になるのだった



それは
行き場のない悲しみだ
ぐるり、ぐる、からだじゅうをかけめぐる
代わりについてみたためいきは
結局
いつか
わたしの頬をなでる寂しい風になる
それは
どこにも追い出せない悲しみ
この先も一緒に
暮らしていかなければならない悲しみだ



もうほんとうは
分かっているのに分からないふりをしているだけ
ステージを降りたスタアたちは
アンコールにはこたえない
ひとり
またひとり
退場する
幕が降りる
アンコールの声の主も
ひとり
またひとり
退場する


そこには
だあれもいなくなる
だあれもいない幸福が満ちて
終わらない永遠が始まるのです



ろくろがまわっている
ただしい丸の一部が
ぐにゃりと歪んだままで
風を切って音を立てる

へんてこな丸の中で悲しみが
かきまぜられて
静かに息づいている
どこにも逃げ出さずに

こっそりと打ち明ける、甘い秘密のようにずっとそこにある




自由詩 回転の理由 Copyright ________ 2010-04-10 00:11:25
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