2009年の夏の横断歩道で
________



ぐらぐらと沸騰している風景の中で
レイザーライトのように蝉が鋭く
生きてる
夏の街路樹をすべて焼き殺すように
生きてる
生きてる

わたしはゆっくりと自転車を漕いで
死んだふりをしている
ばれないように、夏が、生きている全ての命を狙っているから

濃い緑色の草が茂った空き地に
羽虫がふいと群がる
青い青い空があまりにも遠くて
手を伸ばすことさえしない
入道雲は
わたしのため息が届かないので
ずっと場所を変えないでそこにいる

汗でべたついた肌と
Tシャツの布地の鬱陶しさ
弾む息とくらう眩暈、頭痛
そしてわたしの心臓
太陽が全て見透かしている
死んだふりはもう終わり
クマゼミが
シネシネシネシネ 
と鳴いているけれど

いやだね
わたしは
生きてる、生きてる

2009年の夏の横断歩道で
鼻の頭に汗を乗せて
ペダルの上の足に力をこめた
生きてる
生きてる
勝手に誰のためでもなくても
吠える蝉のレイザーをくぐりぬけて
わたしはまだ
まだ生きてる







自由詩 2009年の夏の横断歩道で Copyright ________ 2009-08-09 21:09:46
notebook Home 戻る  過去 未来