「LePoet」という
木彫りの文字が
ゆらり、夜風に揺られている
その看板を下げた店の
隣の家の竹垣に、ひっかかり
雨にぐっしょり濡れた
毛糸の帽子
店の洋燈に照 ....
わたしがうさぎだった頃
この世は赤いもやがかかっていた
花びら一枚にも手が届かないので
うつむいてありの行列を眺めるしかなかった
わたしがひなどりだった頃
飛び立ちたくて仕方がなかっ ....
太陽が僕を灼いて
遠くの世界歪ませた
水槽が君を囲んで
遠くの世界絵に変えた
僕は君の水槽に飛び込んで
濡れたまま手を繋ぎたい
熱い太陽に灼かれながら
水浸し ....
マッチ売りの少女にでもなった気分で
その鍵穴を覗くのがわたしの日課となってしまった
この街へ引っ越してきた当時はタバコ屋さんだったトタン屋根の並び
ちょっとしたお屋敷風の黒塀に
その鍵穴は ....
きみの言葉を聴いていなかった
ぼくによろめいたきみの寂しさを
聴いていなかったからごめん
サイゼリヤの駐車場で
ホテルにいくまでの時間を過ごした
きみはお父さんのことや
....
無辺際の空
金属が滑空する
滑らかな肌は
雲の白さに嫉妬する
見るものすべて
聞くものすべて
触れられぬあなたの
裸体を想起させる
悲しいことなど
嬉しいことなど
すべて綯 ....
何年か待てば
私の細胞はすべて新しくなる
そうしたらこの
君についての記憶も新しくなるのかしら
心臓の一部の細胞だけは
生まれてから死ぬまで
一度もあたらしくなることなんてないらしい
....
触れない海は
一本の線で表すことができる
松の梢からその線をくぐり
入ったり出たり 出たり入ったり
わたしには関係ないことさ
沖がぐらぐら沸き立った
あれほど引き止めたのに出て行った
....
あなたのために
さよならします
今まで
迷惑かけて
ごめんなさい
私が
みんな
悪いんだから
あなたに
許してもらおうなんて
思ってないです
さようなら
宵闇に包まれた路地に建つ
戸建住宅の玄関前に
一匹
猫が座っている
しゃんと背筋を伸ばして
正面を見据えて
その確固たる存在感を
僕は
しげしげ見ながら
通り過ぎる
どこ吹く風とい ....
Y字路にこだまする轍
夜と本気で向き合っていた
暗闇のなかの標
どこかはどこに在るのだろうか
ふたり達が消えてゆく
ひとり達が生まれてゆく
夜に糸が弾いている
....
あの文字に似ているから
今夜こそ捕まえようと思うんだ
月という船の不安定さをどこまで僕ら
楽しんでいられる?
なじみの香辛料が
食欲をくすぐる街角
窓の光が映る道
孤独という冒険 ....
最近朝早く目が覚めてしまう?なぜ??
僕が朝早く目が覚めるのは
顔を洗い歯を磨き、朝飯をたらふく食べるためです。
僕が朝早く目が覚めるのは
黒猫のトイレの砂を換え、黒猫に食事 ....
雨に濡れたいと思ったのに、
今日はよく晴れているんだ
あまりにも寒いから
部屋の窓を閉めた
カーテンも引いた
電気も消して
傘をさした。
さかさに貼り付けたきみの腕が
そろそろ ....
地平線がかぎざぎに囲われた東京を
中央線のガラス窓からのぞいて
ビルたちの壁面は薄黄緑に光る
水の色をしたいろんな影が長くのびて
フラットな装置のように空が広がる
鳥の群れがばらまかれ
ペ ....
{引用=
{ルビ錘=おもり}によって、わたしの外側の水位は上昇し、その先のどこにもふちはなく、溢れることができないままの記憶を、てのひらですくっては、こぼして、すくっては、こぼす、そうやって衰 ....
大根の葉っぱにくっついていた
かたつむりが
ひこうきぐもは
そらをきる
わたしはてらてら
ちじょうをぬう
さいほうばこを
もってこい
よいしょよいしょと
ぬってやる
ひこうきぐも ....
カウンターでひとり飲んでいると
電車に乗っているような気分になる
電車はどこに向かっているのか
この鉄路を引き裂いているのは
焼鳥の香りと酔客の話しごえ
テレビでは米中首脳会談の様子 ....
父さんが
なれなかった父さんに
なろうと思う
父さんは
自動車が好きで
僕は
自転車が好き
自転車に乗る
父さんを
僕は見たことがないし
自動車を運転する
僕を父さ ....
結局はどこまでも孤独で
一日の終わりが
生命の始まりのよう
音もないのに
赤子が泣いている
そんな気がする
音も立てずに
心が
熟れ過ぎた果実のように
裂ける
誰にもぎ ....
展翅板の上で傾き涙する
輪郭を曖昧にして夜が散る
群像はインフラストラクチャーという
都市の臓物をめぐり来てめぐり行く
雨が降る頃には清冽な印象で
舶来のオルゴヲルが英雄を奏で
苦味の ....
成層圏 私風景
{引用=
そらのひろがりが 【 騒音のやまない
手にあまるこんな日は、 プラタナスの並木
苦しいのがわかっていながら ....
秋がささくれて冬になる
きっと もう
と、つぶやいているときでさえ
確実に近づいてくるものと そして
確かに遠ざかってゆくものとの あいだで
音もなく消えてゆく そのときのわたしをどうか ....
森林が燃えている
紅葉ではない
揺らめく赤い糸の群れが
木々の頭上を埋め尽くす
繰り返すこれは紅葉ではない
避難できるはずの動物さえ
押し寄せる火の糸に搦めとられ
黒い煙を胸の中に押し込 ....
砂場で砂あそびの子どもたち、そろそろお帰り
うねうねと前線がやってくる
天気が崩れて落ちてくる
日没とともに
砂場で砂あそびの子どもたち、そろそろお帰り
もう十分楽しかっただろう?
潮 ....
一
筆を持つ腕の無い僕は
口で絵筆をくわえ
カンバスに向かって
朱色を引いた
引いた朱色赤は次第に濃くなり
カンバスの中央で丸くなった
カンバスの下には申し訳 ....
海のビタミン吸い込んで
さざなみに抱かれたいの
君が新しいワンピースを着て
ベランダで僕を見てる
ピアノを海に投げ込んで
遠い世界に歌を贈ろう
今年初めての海を
あなたと見られて良か ....
意外と骨ばった肩に触れたとき、
全身の細胞が心臓にあつまって
核の中が真っ赤に染まった
今までだって
素敵な人は沢山いたけど、
後ろ姿がきれいなあなたは特別みたい
だっ ....
いつもいつも
一から始まるように感じる朝は
夕べのやり残しの食器洗いよりも
途中になった本棚の整理よりも
まず
この窓を開け放つところから
始めなければならない気にさせる
....
半透明な一日の中の朝が溢した
色のついたある一点を探しにいく
近況、そんな穏やかな毎日です
晴れた日の傘のように
言葉たちは眠っています
だから私はペンを置いて
モールス信号の ....
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