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重い雨が降っている
重い水が降っている

土くれになるはずの肉塊を
池に沈めれば
浮かんでくるのは
感覚のない 時の澱

「君ばかりが悩む必要はないんだよ」

背負い込んでいるのは ....
葉緑体がうごめきはじめ
水の粒子が
細かくも玉になり
肌に薄く膜を張っても
心踊らない石礫が
川原に帰りたいと呟いて
乾いた舌が口の中で途惑う

手を伸ばして
掴みたいものなんてなか ....
蒼白の掌に
重ねられた
日に灼けた褐色の掌
襞と襞が結び合うように
地中を流れる
一本の水脈となる

生い茂る雑草の
繁殖の力に
おののきながら
人々は
草刈機で切断する
親指 ....
逃げ惑う足首に
絡みつく春の鬱
転ばないように地面を
踏みしめているのに
白い鬱が生えてくる

小さな芽が双葉を広げようと
隣で眠る鬱に声を掛けた

まだ孤独であるうちに
秘密の儀 ....
脆く崩れた時間の跡は
黒いばかりの真空の穴で
菜の花の黄色と向日葵の黄色が
溶け始めた根雪を帰路に{ルビ誘=いざな}う

冬の残滓は降り積もり
焼却炉へ
埋立地へ
悪魔の似姿をした双子 ....
春に体は押し返され
弾みで乾いた鱗が
ばさらばさらと足元を埋める
みだりがわしい温度に
誘われるまま

感知信号に止められて
まるで自分が分銅になった気がし
もう死んでしまったのかと思 ....
精錬された中指に
溶け落ちるクリーム
最後に残るのは苦しみ

蒸気圧がどんどん落ちて
すり替えが始まる

いつになっても
立っているだけの案山子が
ピエロのように
一粒の涙を舐める ....
ひとつの幽霊となって
ある日の透明をかえりみる
止まない雨に
裂けない雲に
青空の贖罪を聞く

糸を編む蚕の
たゆまない運動の
底の磨り減った靴の
歩いてきた時間を告げる

再会 ....
床にグラスを叩きつけると
飛び散った破片が
キラキラと光っていた
光っていたものは
ガラスだけではなくて
僕の透明な内臓も
砂浜に打ち上げられた
海月のように
日に照らされて
光って ....
少年は向かい風に負けず
自転車を漕ぐ
徒労とは思わず
ひたすら前に進む

そんな彼も吐くことを覚えた
空腹に身をよじりながら耐え
むさぼった
それでも痩せほそる身体を
重く感じながら ....
二番目の器の中で
笑っている子供たち
悠久の久しさは 星と星の小径のように
細く 遠い
それでもきっと声は届く
道を横切れば
そこは尖端
けれども進む
未開の道標を踏みしめ

膨ら ....
横断歩道で飛び跳ねていたら
ユーウツに
アタマシバカレタ

歩道橋の上から
唾を垂らせば
いかめしい車達の頭に
反旗の鉄槌が下る

もうそろそろ青虫がサナギに成る時間だ

春のワ ....
双児の肉片を
野良猫が咥え
片鱗に花を咲かせて
モリアオガエルを
抱き寄せる

ふと夜空に顔を上げて
星の瞬きを見つめても
あなたは落ちてこない

赤が赤があることに
素直に頷け ....
太陽が死んでしまって
僕らはどこへいけば
光を見つけられるのだろうと
凍りついた足で
凍りついた息を吐きながら
凍りついた道に迷う

破壊の二文字に踊り狂った
少年少女も
目覚めるこ ....
私は立ち止まらない
この道を行くと決めた
匂いの蒸せる深森の内を
怪しげなけものみちであっても
感じるままに行方を選ぶ

暗がりを畏れて
夜は月を探す
闇の海原は私を奪ってゆく
私は ....
漆喰にできたひび割れは
溶けた鉄の蒸気で
ゆっくりと蘇生してゆき
心と体の仲違いは
いつか結露する

細切れの肉のように
安売りされていく苦痛を
和らげるために打たれた注射は
小さく ....
もう壊れてしまったから
捨ててしまうのですか?
ぼくの紡いだ時間の縦糸が
ぷっつりと切れてしまいました

重たい
川に入ると
そのままでは浮かんでこれない

壊れ物だけが集まる遊園 ....
冥王星から始まって
シリウス、シリウスBへ
カノープスが続く

アケルナルはエリダヌスで
はくちょうにはデネブ

落ちてこないのは ことのベガ

冬のオリオンにリゲル
北極星を見つ ....
それは何かの予言のようで
空の七割は雲に覆われていて
甘く温かいホットミルクに
頑なな心まで溶けて

買い置きしておいたバナナは
黒い斑点だらけになり
みずみずしさを失い
しおれていた ....
たとえば君が
太陽や月でなくとも
シリウスようなきらめきで
夜空に祝福を与えてくれる

たとえば君が
笑顔を失ったとしても
僕がお道化になって
気付かれないように
君の元へ駈けつけよ ....
花びらを口に含む
美しさを
儚さを
自分のものにするため
理解するため

永遠の貝がら
柔らかく張りのある
食べられることもなく
散りゆく姿を
傍観しているのは
狂い咲きはじめた ....
結局はどこまでも孤独で
一日の終わりが
生命の始まりのよう

音もないのに
赤子が泣いている

そんな気がする

音も立てずに
心が
熟れ過ぎた果実のように
裂ける
誰にもぎ ....
宙から糸を引くように
いくつもの魂が
みちびかれてゆき
草むらのコオロギもまた
静かに時を止めた

ゆっくりと過ぎてゆく僕の時間も
  に包まれて
黄金の金糸に引かれてゆく

冷え ....
虫の音だけが響く長い秋夜のしじまに
基次郎の 「檸檬」 を読んで
僕も明日、彼女の机の上に
そっと檸檬を置いてみようかと
画策する 新しい世界を生むために

だいぶすずしいなったなあ
と ....
授業が終わると、真っ先に教室を出る
いつもなら軽音楽部の部室で
とりとめのない話をして
演劇部の発声練習を聞きながら
ひとりの娘の姿を追いかけるのだけれども

夏休みの間、炎天下の中ひたす ....
朝露の滴る草むらに横たわり
私の身体はがらんどうなのに
脈を打っていた
温もりもわからず

コロンカラン コロンカラン

流した涙は
冷たい石のような音を立てて
深い井戸に落ちた
 ....
 意味不明なことをわめき続けることに疲れた



幼い頃、ぐずっていると「言わんとわからんがい」と言われ
言わなくても分かる関係に憧れたけど
やっぱり黙っていては何も伝わらないことに失望し ....
今日も月が出ていない

夢の中で迷わないように
照らしてくれる
君がいない

ぼくの願いをいつも黙って聞いてくれる
無口な君だけど
そっとあの子に伝えてくれる
ほんとは気のいいやつな ....
中原 那由多さんのwithinさんおすすめリスト(28)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
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