記憶を
じゃぶじゃぶと
洗えたらいいのに
無意識に
浮かんでしまう
昔のこと
この季節に
刻まれてしまった
思い出
北風に触れると
浮き上がってきて
気持ちを乱し
....
カラスが夕日を出入している
オレは寂しさを捜したりしている
暗冥をやぶる焚火のような快楽
山を越えて市街地を見晴らしながら
ゴルフ場からの家路を辿っている
学生の女の ....
声を忘れた
喉が乾いた
身も枯れてしまって
人間は愛せない  
空気が抜けてしまった肺が
苦しいんだ、酷く
もう泣いても良いだろうか
美しくありたいと想い
強くある事を願 ....
頭のネジ一本
理想や空想にたよりっきりで
何も行動を起こすことはない
体が重く元気がないのは
もともとこんな感じだったから
耳鳴りがいつもして体は雨で濡れたように重い
....
日本のことなら俺に聞け
これがいいでしょキリギリス
ひねもす松の木ノ下で
寝ころびのっぽが死んでいる
あした越える夢はもうきょうは夢じゃない
女の悩みひとつ聞いてやれ ....
くるっても
いいのだろうか
という言葉をおしころして
公園へむかう
身ぐるみはがれる
とはこんな気分だろうか
この身をくるんでいた
ものたちはどこにいるのか
いまも元気で
やって ....
絵の具のついたレコード 二階の窓貼り付けたまま
君が好きだと歌った曲は 今日も誰も寄せ付けはしない
ビーカーの中で混ぜた欠点 薄くなる所か濃いくなる
それをまた飲み干しては染まる僕を 君 ....
僕が林檎をかじっているこの世界は
銀色の象の胃袋の中にあって
銀色の象が星を喰う世界は
英語を話す蛇の海馬のあたりに浮かんでる
英語を話す蛇が
日本語を解読しようとする世界は
すべてが ....
炬燵の下の泉に集まる小人たち
本棚の下 隠し階段 希望の泉
頭頂部から自噴する泉は美しい
マンションに濁りなき泉下界へ落ちて
睡蓮の池にひたすら風が起こる
....
冒頭を彩る筆は、遂に滑らない
彼らは皆一様に
首をもたげたまま
こちらを伺っているというのに
(厚手のコートを着た女が
至極当然な素振りで水を口に運ぶ
魚のふり ....
その男 草木に眉を顰めて
かつて在りし栄耀の痕跡を追う
肉を刺し骨を切るのが鉄であり
火を燃やし町を興すのが鉄であった
酸素は力強かった
たゆむことなく働いた
人と動物だけが
幾度と ....
花のなくて12月の太陽
ビルの林立と車窓 都市生きて
朝霧ひっそりと都市は遠景
うつらうつらまどろみの泉湧く
夢博士淡い樹木と補虫網
読書してシナプス ....
はるか昔、深海で織られた地層は
湧き上がる二つ対流の狭間で
荒々しくこそぎとられアルプスとなった
そのせめぎあいで
この谷を境に
やむを得ず東日本は南北に向きを変えたという
山中に住む ....
{引用=
飲まなかった眠剤を
ひとつぶ ひとつぶ
湿った土に埋めて
紫がかった芽が見えてきた朝から
八年間くびをそのままに待ち続けたら
柿がなる
たわわに実る柿の実は
わた ....
花びらを口に含む
美しさを
儚さを
自分のものにするため
理解するため
永遠の貝がら
柔らかく張りのある
食べられることもなく
散りゆく姿を
傍観しているのは
狂い咲きはじめた ....
言葉を、さがすのです
くろうしながら
伝えるのは
もどかしい けれど
本当に言いたいことは
行の間や【。】のなか
星の間のくらやみや
言葉のすき間にかく ....
黒い河の向こうを
電車の明かりが渡ってゆく
あと6時間もすれば
この街は放射冷却で煙れるだろう
置き去りにしたのは
ぼくの心、それともきみの心のほうなのか
あの電車 ....
君の願いは僕の夢
君の喜びは僕の楽しみ
太陽が与えてくれたものだから
小鳥が聞かせてくれたものだから
君の泣き声は僕の涙
君の怒りは僕のいたらなさ
月に落としてしまったもの ....
幼い頃は持て囃され甘い菓子で育った。
少年の時は真っ白な繭が僕を守り養った。
やがて呼吸も自由に羽を広げる頃、
誰もが欲しがる平等を平然と飛び越える翅。
指折り数えた確率は出会った瞬間に吹き飛 ....
寝入りばな
夜の船に乗って
黒く澄む空を
たゆたっていた
静謐なガラスの船は
住むもののない水底の
果てない深さを
ギラリギラリと見せた
こわいよと口に出す
まだ眠りに落ちて ....
組み立てて、組み立てたもの
を、ゆらして壊した
なぜだろう
ゆびのない夜がきみを
おいつめようとする
ゆびは、夜は、きみは、
どこにもたどりつかない
おぼろげな、消失点は ....
鬱蒼とした樹木の間から
黒い月が煌々と光る
青い空が見える。
しかし、決して昼間ではない。
ここで飛ぶ鳥は梟であるし、
地面には野鼠どもが
異様に光る目をこちらに向けている。
自 ....
かつて薔薇のように美しかった
5月生まれのお婆さんは
先週、深夜にベッドからずり落ちて
車椅子にも乗れずに足掻いていました
かつてメディアの第一線で
活躍していたお爺さんは
....
今迄のオイラは
少々の向かい風が吹けば
へこたれて
縮んだままになっちまう
ひ弱な{ルビ御玉杓子=おたまじゃくし}なのであった
物語の続く台本を、いつも
何処かに投げ捨て ....
フレデリカ、日々は
青い円筒のかたちをしている
耳栓をきつくしめて
きみのための水泳をつづける
硬質なつめたい水面にはじかれるのはよわいこころだ、よわいこころだときみが ....
ウォーターフロント 風の高層ビルに満月が架かる
護岸に寄せるさざ波 夜光虫の息
防波堤に寝ころび夏の大三角形を捜す
海風が髪を撫でるほど吹きつけて風
突堤で発火 ....
僕は夢想する
雲一つ無い青空に
ぽっかり浮かぶ黒い月を
僕は夢想する
鬱蒼としたジャングルに
飛来する原色の鳥達を
僕は夢想する
ジャングルの樹々の間を
悠然と歩む ....
眠れない日の
眠れない夜は
より明確に朝と繋がる
その夜で太陽は欠けもしないし
この地球の丸さを
完全に隠し去ったりもしない
どこまでも繋がっていくこの夜は
言ってみれば人 ....
眠れない夜の窓際で
二重に映る折れそうな月
見つめるわたしの虚像が屈折して
見知らぬ冬をさがしている
ひときわ風の音が強く思える夜は
肩の震えが止まらないものだ
ハーパーを湯で割って
....
ただ微笑むしかない僕に、あなたは何故謝るんだろう。
裸の足を水に浸けたまま、
膿んでゆく傷口を、冷めた目でただ見ていた。
あなたは何故、愛などと呼ぶのだろう。
信じるべきものなど何もないさ
正しさ ....
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