遥かに遠い昔
すでに
バベルの塔は、崩壊していた
一九九九年
世界の中心に建っていた
N・Yのビルの幻は
黒煙の中に、姿を消した
二〇〇九年
未だに人々はバーチ ....
なんで泣いてんの
と 姉がきく
ずけずけと 真っ直ぐに見つめて
あのときもそうだった
私をみて 手をふった姉がいた
特殊クラスって言葉の意味が
わかりはじめた頃の
私には はずかし ....
お母さんのこと嫌いなの?
携帯電話でのやり取りを気にされたのか
調布駅の改札抜けたところで、由紀さんが心配そうに尋ねてきた
母のことかぁ、どうなんだろうねぇ
好きとか嫌いとかそんな物差 ....
枷のひとつやふたつ
あったっていい
どうしようもないと
歯噛みして
ひっかいて
爪たてて
ひきちぎろうと
躯を震わせ
全身で
もがいてもがいて
逃れようとして
そ ....
鉄格子の中で回るメリィゴゥランドの片隅で
足や手が真っ黒になってしまった
彼女は自分を失ったことを知らない
彼女自身の断片が星屑になって街を歩く彼女の頭上に煌めくネオンになっても
....
僕の小さな心臓の鼓動は
聞こえなかったから
イヤホンのプラグを差して
僅かに動く鼓動を確認した
綺麗な顔をした長身の
神男と今にも死にそうな
塵男を比べる
僕 ....
ささった棘が痛いから
もう歩かないよ
だれもかれも追い越してけばいい
くじいた足が痛いから
もう動かないよ
だれもかれも見下ろしてけばいい
人に価値があって
人にえらいとか 強い ....
降りしきる雪に
運命を委ね
去って行くのですね
白い肌は
景色に吸い込まれ
後ろ姿が美しいから
何時までも見ていた
触れあった
指先の温もり
覚えてますか
手渡しで与えあった
....
耳を当て 君の鼓動を 聞いている 唇重ね 一つになろう
夜空見て 雲間に覗く 暗闇に 星の瞬き 生きてるようで
降り注ぐ 雪に音は 吸い込まれ 大地の鼓動 春までお預け
{引用=
兄が
妹に言う
(おまえは冷血動物だね)
ああ、そうですお兄さん
そんなことをあなたはいまさらいうんだね
あなたが温かい血の塊を全部貰ったから
わたしのものはもうと ....
眠たさを誘う 五月の街
Market Street 1200
サンザシの木がほこらしげに 赤い花を咲かせていました
通りを染めるほど 目に映えるほどに
歩きながら目にできる家々の
フラワー・ ....
お囃子が始まる
和太鼓/篠笛/摺鉦が
絡み合って
今日は表彰式のアトラクション
小さなホールに響く音は
ことのほか大きく力強い
お囃子の調子に乗って
繰り広げられる足踊りは
艶 ....
いやいやを するように振った首筋に
雪が 降りました
降っています この街に この道に
あなたの足跡が 残っていればいいのにと
探しそうになりました
行ってしまった
あなたはもう見えな ....
明日、死のう
明日は必ず死のうと思って、今まで生きてきました。
ものごころついたときから、ずっと
ひたすら命を絶とうとしています。
戦争があり、革命があり、
結 ....
あなたの命はあとどれぐらいなのか
私にわかればいいのに
最後まで離れないのに
あなたの胸の上下する動きが愛しくて
目が離せない
生きるということ しぬということ
あなたをみてると ....
そこそこに慌ただしい日をこなしたあとは
急ぎの用ではない
コマゴマを
脇へ全部追いやって
静かに坐ってまゆつくる
まゆからでてきたからといって
羽根あるものになるでなし
わたしは ....
子どものためにいるなど
誰が決めたのさ
長いローブを引きずるように、
白い髭を 凍てつく星空にゆらす
あなたは太った 赤ら顔の
エルフなんかじゃないはず
赤い毛皮の
違う そう、 ....
{引用=
なんでだろうかものすごくかなしくなって
デスクトップをじぃっとみつめているうちに
呼吸するように当たり前だとなみだが零れて
わたしの鼓動がものすごく頭に響く
しっかりと ....
{引用=
懐柔されていく日々に
きみはわたしをどう見るだろうか
転がり続けていた二足の靴が
もう誰の影も踏めなくなって
それからきみは諦めようと何度も手を洗っている
いわゆるともだ ....
未来は光より早く進む
知識の海は今日も荒れていた
僕が死ぬ夢を見た
気が付いて目覚めたら帰りかたを忘れていた
約束の時間には間に合いそうになかった
想像は毎回期待していた ....
職場で叱られそうになって
動悸がしても
南無南無南無と口ずさむと
意識が現場から逸れて
少し楽になる
幼い頃に
母に連れられて寺に行き
大きな仏壇の前で
毎日題目を唱える
そうい ....
{引用=
私はいっつも赤いマフラーして
私はいっつも赤いヘッドフォンして
そんで黒い服ばっか着とるんやけど
それはなんでかってきかれても困ってしまう
赤はずっときみの色やし
....
【牛歩】
講義が終はった夕暮れ時、皆で学食に向かふ途中で、不審な動きをする男を見た。彼は歩道の真ん中を、ほとんど足踏みするやうにゆるゆる歩いて行く。事情を知ってゐる友人によれば、彼は母親にかう言はれ ....
ある国に住んでいる悪魔が
ある教会の美しいステンドグラスとオルガンと聖母子像と黄金の鐘と
そこで毎日祈りを捧げている敬虔な神父を激しく憎んでいた
彼は日が暮れると宵の明星、魔王に誓いをたてた ....
{引用=
繋いだ指を
震えさせたきみをぼくはどうして抱き締めよう
愛し方がわからないなんてそんな青さが
空に溶ければ柔い雨
ぼくを見上げる二つの黒い瞳が
濡れてしまうなこんな日 ....
{引用=
まるでそれは、
やってくる 物質の
そんな重さや たしかさがある
―――――――【 night 】――――――――――――――
逃れようもなく
完璧に閉じられる
空 ....
豆ダヌキが僕ん家に来た。
豆ダヌキは僕が一番会ってみたかった妖怪だ。
ひょうきんな顔で食べ物をねだった。
今日は風が強いから、
流石の自慢の外套を被っていても豆ダヌキは寒そうにしている ....
騙された方がきっと馬鹿なのだろう
色褪せてゆく写真をいつまでも握り締め
捨てる機会を伺っていた
自発的な行動が出来ないまま
差し伸べられた救いの手にすがり付くも
それは青白く冷たいレ ....
寝ても覚めても
同じ夢を見てるような
そんな気だるい日は
カーテン越しの
光を浴びて
寄りかかる
ソファーは悲しくて
奏でるはポロネーズ
今の気分は
ショパンの「別れ」
目 ....
結婚しないわたしへのあてつけなのかなと思った
今更ながらの大ぶりな段ボール箱の底
つややかな赤い実りをいたわるかのようにそれは敷かれていた
一見して母の達筆を思わせる簡潔な手紙には何一つ ....
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