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目が覚めた、部屋の窓の風景は 
雨にすっかり洗われた 
まあたらしい世界 

一枚の葉は透けた滴をしたたらせ 
こちらに合図を送っている 

憂鬱な気分に頬杖ついて 
眠っている間に  ....
見知らぬ人から届いた 
小包を開いたら 
一つの箱が入っていた 

ふたを開けたら 
何処かの海がなみなみ 
小波を立て 
一艘の小さい舟が浮いていた 

小船は夢の陸地を目指してい ....
道の暗がりに棄てられた 
凹んだ空缶を拾い、日溜りに置いた。 
遠ざかり、振り返った僕を呼んで 
透きとほる手をふっている 
国宝館に展示された 
古の絵巻に描かれた 
松林の青空を 
千鳥の群が 
羽ばたいていった 

国宝館の外に出て、仰いだ 
古の都の青い空にも 
千鳥の群の
後ろ姿は消えていった 
 ....
愛する{ルビ女=ひと}と結ばれる前 
この手は一度、天にあずけた 

働く場所が決まる前 
この手は一度、天にあずけた 

これから家族3人で 
叶えるたった一つの夢の為に 
妻のぬく ....
お正月に風呂屋へ行き 
入口でもらったサービスの甘酒を手に 
目に入った「足湯」に 
ズボンをまくって、足を浸す 

紙コップから{ルビ一滴=いってき}の甘酒がこぼれ 
お湯が一瞬、白く濁 ....
あじさいの大きな葉っぱの上 
2匹のかたつむりは 
雨の中、風に揺れていました 

葉っぱから眺めるあじさいは 
小さいかたつむり達にとって 
巨きな巨きな花でした 

かたつむりの目 ....
ふせていた目をふと、上げた 
窓外の庭に 
今年もわすれな草の花々は 
空の太陽に向けて 
青い小さな笑顔達を咲かせている 

去年の今頃は
杖をつき、背中を曲げて 
わすれな草の花々 ....
黄昏の陽は降りそそぎ 
無数の葉群が{ルビ煌々=きらきら}踊る 
避暑地の村で 
透きとほった風は吹き抜け 

木々の囁く歌に囲まれ  
立ち尽くす彼は 
いつも、夢に視ていた 

 ....
机の上に置かれた 
黒い本の中に 
うっすらと、顔がある 

自分の貧しさに震える私と 
遥かな昔に交した約束を 
今も語っている 

蝋燭の火が 
風にふっと、消えた 
暗闇から ....
いつものようにキスをして 
電車に乗った君の 
窓越しの笑顔に、手をあげて 

一人になった休日の僕は 
駅ビル内の喫茶店で 
朝食のパンをかじりながら 
ふいに 
自らを漂う雲と思う ....
あの塔の頂に立って 
私は何を、視るだろう。 

遠方の高見から眺めれば 
近過ぎると醜い人の世も 
小さい蟻の人々も 
昨日喧嘩した家族の憎い顔さえ 
愛しく思え 

見渡す街の霞 ....
君は、手にしたハンマーで 
今迄何度も、壊して来た 
目の前に架かる幸福への橋を 

そこへ詩人がやって来て 
橋の消えた、川の濁流を 
ぶざまな犬掻きで渡り  

向こう岸で、ハンマ ....
長い間、咲かなかった 
植木鉢のクンシランが数年ぶりに 
草の両腕をひろげ 
橙色の花々を、開き始めた。 

レースのカーテン越しに注がれる 
日のひかりの内に、今はもういない
在りし日 ....
虚ろな瞳をした、縫い包みの少女。力無
く、窓辺に凭れて。部屋のドアを開いて
入って来た少年は両手にかかえ、胸の蓋
を開いた暗闇の燭台に、マッチの灯をと
もしてそっと、窓辺に戻す。

窓外に ....
私の魂というものは 
量りにのせて 
測定することはできません 

たとえば眠りの夢に落ちる時も 
たとえば悲嘆に暮れる日さえも 

私の内的生命は 
一本の透けたアンテナを立て 
 ....
時は、人の死さえも 
やがて必然の穴へ 
ゆっくり、納めてゆくだろう 

時は、生々しい傷口さえも 
やがて不思議な包帯で 
ゆっくり、包んでゆくだろう 

もしあなたが、今 
頭を ....
遥かに遠い昔 
すでに 
バベルの塔は、崩壊していた 

一九九九年 
世界の中心に建っていた 
N・Yのビルの幻は 
黒煙の中に、姿を消した 

二〇〇九年 
未だに人々はバーチ ....
僕は君という詩が好きだけど 
僕は君の望んだ詩になれずに 
やがて別れの季節は、訪れる。 

なにをどうしようと 
足掻いても 
誰のせいというでもなく 
仕方のない、ことがある。 
 ....
遥かな夜空の彼方から 
世を去った友の涙が一つ 
ぼくの頬に、落ちてきた 

イヤフォンを入れた耳には 
(can you hear me?) 
という唄声が繰り返され 

昨日、遠い ....
今、(遠い異国の空の下で、産声が上がった) 
今、(夜の踏切で急ブレーキの悲鳴が、夜空を割った) 

今夜、どんどん膨らんでゆく宇宙のなかに 
今夜、みるみる病んでゆく街のなかに 
世界の始 ....
何故生きるかって? 
目の前を覆う 
すべての霧を射抜いた 
明日という、夢の為さ 
終電のすいてる車内の空席に 
リュックサックを放り投げ 
{ルビ転寝=うたたね}をする僕に 

(ちょっと・・・邪魔)と言い 
わざわざリュックをどけて座り 
{ルビ草臥=くたび}れスーツ ....
「 赤イ羽根共同募金ノ御協力、オ願イイタシマス 」 
後輩ふたりを左右に、僕はまん中で募金箱を首から下げて 
通り過ぎゆく人々の誰かの胸へ、ひとつの声が届くよう 
道化のふりした明るさで、一心に ....
夕暮れの食品売場で 
偶然、2年前に他界した 
認知症の婆ちゃんの、嫁さんに会った。 

「あの・・・デイサービスのはっとりです」 
「あら・・・私達とっても感謝してますよ」 
「いえいえ ....
雨が降ってきたので 
ビニール傘を開いたら 
突風が吹いて 
傘が捲り上がりそうなところで 
むむっと踏んばり、持ち直した。 

たとえ突風が吹こうとも 
傘の柄をがしっと持って 
自 ....
暦を一枚、捲った下に 
「我事に於て後悔せず」 
と云う、宮本武蔵の一行が 
過去から語りかけていた。 

侍の幻影、目の玉を動かさず  
うらやかに 空 を観る  

暦を一枚、捲 ....
一体どんな違いがあるのだろう? 
夏日の照りつけるアスファルトの上 
ゆらゆらと 
{ルビ陽炎=かげろう}になって今日の食物を探す 
あの家のない人と 

駅の構内に日がな坐り 
10円 ....
歩道をのんびり歩く 
背後から 
チェーンの廻る音がして 
端に避けた僕の傍らを 


  SAKAMOTO 

      6


というジャイアンツのTシャツを着て 
後ろ ....
{ルビ若布=わかめ}の{ルビ疎=まば}らに干し上がる 
六月の浜辺を振り返れば 
今迄歩いて来た僕の 
たどたどしい足跡が 
霞がかった岬の方まで 
延々と続いていた 

あの岬の幻は  ....
withinさんの服部 剛さんおすすめリスト(30)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
雨上がり_- 服部 剛自由詩612-2-10
贈りもの_- 服部 剛自由詩312-1-25
空缶ノ声_- 服部 剛自由詩5*12-1-19
千鳥の群_- 服部 剛自由詩3*12-1-16
明日のドア_- 服部 剛自由詩12*12-1-6
甘酒の味_- 服部 剛自由詩8*12-1-6
梅雨の花見_- 服部 剛自由詩311-6-11
わすれな草_- 服部 剛自由詩311-5-5
涙の遺言_ー野村英夫への手紙ー_- 服部 剛自由詩511-2-11
不思議な目_- 服部 剛自由詩711-2-2
雲の箱舟- 服部 剛自由詩410-12-4
夕暮れの塔_- 服部 剛自由詩810-9-25
虹の橋_- 服部 剛自由詩510-9-25
彼岸の花_- 服部 剛自由詩710-3-20
夜明け- 服部 剛自由詩210-2-20
魂の器_- 服部 剛自由詩9*10-1-3
時間という薬_- 服部 剛自由詩4*09-12-29
蜃気楼の都市_- 服部 剛自由詩4*09-12-22
空の背骨_- 服部 剛自由詩609-12-14
呼び声- 服部 剛自由詩309-12-9
0歳の詩人に_- 服部 剛自由詩309-12-7
明日を、見る。_- 服部 剛自由詩409-12-1
月夜の口笛_- 服部 剛自由詩509-10-13
赤い羽音共同募金_- 服部 剛自由詩5*09-10-2
観音像の笑う夕暮れ_- 服部 剛自由詩109-9-22
傘をひらく_- 服部 剛自由詩3*09-8-31
武蔵ノ伝言- 服部 剛自由詩309-8-20
ただようひと_- 服部 剛自由詩509-7-26
野球少年のうた_- 服部 剛自由詩209-7-15
明日の海_- 服部 剛自由詩909-7-3

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