熱い光はただ重なって
そっと重ねられて
渋滞した道でせわしなく鳴るクラクションも
軽やかに散歩する犬の太くて短い声も
光に飲み込まれてかき混ぜられて
珈琲に落としたミルクみたいにぐる ....
流線形を手がかりに
ピースを一つはめてみた
ぴったり落ち着くことが楽しくて
暇潰しではなくなっていた
ピースが足りないから毎日のように探し歩いた
埃の積もるベッドの下
ジレンマの隙 ....
俺は通じゃーねぇさ。
通なんてのはデイ嫌いだ。
寿司?
寿司なんざぁ鉄火巻に決まってろうが
コハダなんてのはいい若いもんが喰うもんじゃねぇ。
しなびた年寄りが食うもんだ。あんな生ぐせえも ....
色のない街は、
誰もがうつむき同じ顔をつくる
雑踏の行きかうコンコースの{ルビ黄泉=こうせん}
かぎりない人たちが 少しもかわらぬ服をまとっている
はてなく続くエスカレーターの無限階 ....
洗練潔白であって
誰からも気に入られた
両性具有の子
孤児のようで、令嬢のようで、
快活のようで、冷淡のような、
両性具有の子
初めから大人の社会の中に置かれ
交わる言葉 ....
詩人さんへの個人的な要望です。
私的国語辞典というか私的定義集というか
使用した言葉の「脚注集」のようなものを付した詩集があれば
私は買いたいなと思います。
絵画の世界でもそうですが、
....
回転扉の向こうはサバンナだった。
「さぁ、はやく。」
何かに躊躇っているうちに
電解質と一緒に失われた
青という名の雷鳴。
「サバンナに広がるベッドには、 ....
悪魔の声を耳にした
喰われた仲間、思い出した
人は喰わない、と口にした
悪魔をさらに憎みだした
人を憎むその前には
裁きの儀式、行って
「人間性」の有無を見る
....
ちぎれた雲の雨脚にまで届くように 斜めの光線に従って
指先をぴぃっと伸ばしてゆくんだ
触れた蒸気のもくもくのすきまには
あたらしい宇宙が隠されていたとか、いないとか。
既に誕生していたのか ....
ねぇ、言ってよ。今日も。
そう、私が囁くとあなたも私の耳元で
好きだよ、って囁いてくれる。
レコードをかける時、大事に大事に針を落とすように
私は大事に大事に囁く
{引用=い ....
箱に詰めて流したきみを
どこか異国の空が受け止めてくれているころかしら
どうしてもコール音が鳴りやまなくて
きみは深海の奥深くへ行くと言ってきかないものだから
回転する機械はいつも
わた ....
目には目を、歯には歯を、
このハンムラビ法典の言葉は
復讐法だとか拡大報復の戒めだとか
そんなふうに言われてはいるけれど
この言葉の連なりに
私はひとの悲しみを感じるのだ ....
ここに一脚の椅子があって
それは懐かしいにおいのする木製の小さな椅子
小学校の教室にあるような椅子
揺らすとかたかた音がした
そんな椅子にあなたは腰かけている
手には一冊の詩集
マ ....
君はみぞおちのなかに
あたたかな雨を隠しているのでしょう?
いつになれば海の向こうに渦巻くひかりを
私は集めることができるのでしょうね。
緑色だとか
青色だとか
太陽に照らされると ....
重たく静かな黒松の壁
その右隣
荒れた土地には白い蔵がひとつ
町はだいぶ朽ちたが
彼はしぶとい
ビードロはヤニの味がするだろう
シャワーのような換気扇の音は
たとえばトラックや軽自動 ....
帰る場所を
見失ったのです
後悔を口にするのは
容易い
でも
君が帰って来る
訳でもないし
元の幸せな日々に
戻る訳でもない
いつまでも
本音を言えず逃げる私に
素直な
....
力のかぎり追いかけるのは、
自分の力をしんじているかのように
止まることをも知らず
一点に集中した想いのはてなのです
おしもどす秋の風に
それが、遠くにあることなど知らずに
駆け抜ける ....
「痛い。」
「え、ごめん痛かった?」
「うん、でももっと痛くしていいよ。」
みんな知らない
私がこんなにも死にたいということを
みんな知らない
私がこんなにも彼女が好きだという ....
私顔が汚いって
AV女優みたいな顔してるって
「どういう意味」
「どういう意味、というかとりあえず褒めてはない」
「何それなんかむかつく」
神様、佐々木クンはひどいことを言うんです
神 ....
ながいあいだ 知らずにいた
きっと知らずにいたくて、知らないふり
大学を卒業しても 仕事に糧をえても 結婚しても
ずっと、そこに扉があったなんて、
そのことすらも 気づかずにいた
わたしは ....
ガブリエル聞いてくれもう終わりにしよう
僕はいい加減朝の国の住人になりたいんだ
太陽の光に永遠を見いだしたいんだ
眠れないくせにさらにカフェオレを飲めるだけ飲む
もう怖い夢を見ないように
朝の光 ....
例えば園児の初恋のように
互いに思いやることが幸せなら
目を合わせて顔を赤らめることが
どれほど可愛いことだろうか
ドキドキを無邪気に笑って誤魔化した
持ち合わせていない感覚
....
近所のドラッグストアが潰れてしまっていた
もう一ヶ月以上前のことらしい
その間、ただモラトリアムを淡々と過ごしていた
今日あるものが明日あるとは限らないとは言うが
私には今日も明日もない
....
私にお金をください
綺麗な洋服を着て
美味しいものを食べ
豪華な家に住んで
毎日毎日楽しく遊んで暮らすために
私にお金を下さい
とりあえず
あなたのバッグやポケットの中にある ....
夏の夕風が さやかに
吹きぬけるような
誰にも優しい きみだから
生きる重さを手に さげて
心をいためて ばかりいる
会えないときは、なおさらに
名もない星のような 孤独や寂 ....
白い空に映ったわたしは
あまり遠くをみれずに泣いていた
自分を知るということは
絶望するのと変わらない
私の言葉を舌に載せたら
膝の震えが止まらなくなりました
痺れた指先で君の ....
落書きが欲しくて
お金を渡すと
気軽に売ってくれた
壁のような人が
また何かを遮るため
無表情のまま立っている
それを見ている
人のような壁が
落書きの中にいた
壁のよ ....
私はたくさんのものに恵まれている
収入は同年代の女性の3倍
たまたま入った会社でも使えると思われている
恋愛には事欠かず
一生大切にする左手のリングも手に入れた。
そういう女 ....
私は夜が好き
静かで
虫の声が聞こえて
眠れないときは
月明かりの中で
散らばる星座を
ひとつひとつ
確認するように数えていた
私は夜が好き
星の光が薄れる程
月の明かりが強い ....
消えてもおかしくない小さな命
一瞬ヒカる
そんな日があってもいい
大きな世界にヒビが入り
くずれる日もあるように
良くても悪くても何か変わる
けれど命は眩しさを知らない
....
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