{引用=

変わらずにやってくる
やわらかな朝に手をふれるのが嫌になった
億千の人の一人でいたかったのに、自分に
うそをつくのに疲れた


少女の箱はもうなにもなくなって
そこから  ....
つい昨日まで 真夏だった気がしていたのに
つい昨日まで アイスキャンディーがだらだら垂れて大変だったのに
知らないうちに秋が夏を誘いにきて
わたしの20代最後の夏を奪っていった
まだまだ汗だく ....
やがて忘却の海辺に打ち寄せられた白い欠片、
朽ちた流木や貝殻の転がる旧い別宅の荒れ果てた庭に
ある日。螺旋に絡みつく二本の蔓の梯子が垂らされていたが
それはあたかも、私には儚い夢の終わりのようだ ....
明日はきっと晴れるよね

そう願わずにはいられなくて
ふと手を休め振り返る

自由気ままに暮らしてきた日々

愚痴っぽくなってみたり
ときには人恋しいくせして無口になってみたり

 ....
あなたはわたしに「ななし」と名付けた
それ以来わたしは薄い皮膜を漂っている小さな虫。


光らない星、開かない窓、結ばれない紐、濡れない傘、
ない。ない。ない。ということでしか ....
夜空から剥離した星明かり
星騒に眠られぬ夜


人知れずやってくる 孤独は、
ただ一人でいることでも
まして、理解されずにいることでもないのです


それは、答を待ちわびるということ ....
快晴とは程遠い 灰色の空
本日 あなたはついに最愛の人の隣で永遠の眠りにつく

見守りにいけなくてごめんなさい
あなたの娘とその夫が
私の分も あなたが永遠に眠りにつく姿を見ています

 ....
水は重く、水は重く
地に深く沈みこんでいる

岩陰に臍のように窪んだ一角
降り井戸の底の暗がりに残された一匹の
赤い鎧を着た魚
地の底よりふたたび湧き出してくるものを
みつめる黒 ....
雨に流された街は、
洗礼を受け
軽妙なステップを踏む猫が
聞き覚えのある昔の歌を
口ずさんでいる
 

秋はもう病んでしまっていたのです
倒れたショウカセンは、
( どんな英語の綴り ....
ずっと寄りかかっていた
揺るぎない背もたれとして安心しきって
あなたが感じている重たさも
慈愛で受け入れて
融かしてくれているのだと思っていた


いま、青に導かれて去ろうとしている
 ....
臨海線を越えれば
また一つ忘却の朝が 時計仕掛けのようにやってくる


未だ
ためらいのない無残なライトの明かりを車たちは放ち、


散水車の水のはねる音に
まどろみを破られた
わ ....
プラスチックは

なんてドラマチックだと

どこかの髭を蓄えた

大学教授はほざいていた

靴紐がほどけないのは

それには鍵がついてあるから

スーパーミラクルソフトタッチは ....
沼田城址公園の猫

その猫はチャトラ
顔は大きいが痩せていて
バランスが無い。
愛想が頗る良いが、下品ではない。
飼い猫にしては痩せている。
野良であろうか がっついてる。

のっそ ....
光りをなくした
名もない星たちが
うつむいては 化石のように
眠っている



ちゃんと笑ってあげたら
隙間に触れることだって できたのに
平穏という残酷な家の灯りに
夜の積み木を ....
僕は今両手を差し出して
広い大きな空を掴もうとしている
それがとても滑稽に見えても
そうしなければ
自分が消えてしまいそうな気がして

僕は今両腕を空に向かって突き上げ
広い大きな空に飛 ....
あの塔の頂に立って 
私は何を、視るだろう。 

遠方の高見から眺めれば 
近過ぎると醜い人の世も 
小さい蟻の人々も 
昨日喧嘩した家族の憎い顔さえ 
愛しく思え 

見渡す街の霞 ....
君は、手にしたハンマーで 
今迄何度も、壊して来た 
目の前に架かる幸福への橋を 

そこへ詩人がやって来て 
橋の消えた、川の濁流を 
ぶざまな犬掻きで渡り  

向こう岸で、ハンマ ....
{引用=ほろほろとくずれはしない鍵の化石があなたのからだをひらいています
記憶は銀河のように 白い、黒い乳房のあわいをすり抜ける
あたたかな指先であなたの軌跡に限りなく薄い爪痕 ....
チャペルの鐘の音 
ハレルヤのゴスペルの響き


祝福の音色を浴びてキラキラ輝くのは
淡いパステル色の金平糖
小さな羽根を羽ばたかせ
あなたのキューピッドが運んでくる。


甘い砂 ....
未来から届いた手紙には

これ以上ないくらいの幸せが

書かれていた

けれど僕はそれは信じなかった

いや信じられなかった

こんなにも幸せに僕がなるはずがないと

手紙をバ ....
用を足すだけなんだけどね

うら寂しい公園の片隅にあるのは決まって便所ってやつで

おおむね和式の便器しかなくて
紙なんか無くて
げげげのお友だちなんかの手が暗闇からぬらりひょん

べ ....
ぼくはこどもの老人ホームみたいなところにいた

親と暮らせないこどもは

この世に多いような気もしていたし

周りがそんなふうな子ばかりだったから

そう思っていたのかも知れない

 ....
死んだ少女の手を取って
「タリサ、クミ」とイエスは言われた
少女よ、起きなさい
へべれけにされマワされて
中学生の少女は自殺した
夏の未明、背伸びの季節には
恋に恋する期待もあっただろう
 ....
革命的な言葉を口にしながら
麦わら帽子の海賊たちが船出する 
追い風 あふれる秋色の陽光

夏をふりかえらない はしゃぎ声に
バルーンの剣を空に 掲げ、

略奪のためでも
自己の利益の ....
風がずいぶん涼しくなってきました
青い空に
白い月が出ていて
どうして、涙が流れそうになってしまったのでしょう
よその家から漂ってくるカレーの匂い
僕は心の中の
小さな茶の間を思い浮かべて ....


グレーを塗ると、きもちがいい
グレーを塗ると、きもちがいい


雨の降るふる
背伸びをやめる


*


ビブラートに揺らぐ空の裂け目を
幻視の鳥が飛ぶ


*


明滅をくりかえすビル群が剥がれ落ちる
 ((NYという記号を描くその一点として わたしが燃やされる))
 ....
砂漠

{引用=飽和湿度に近い街で
渇いた自分を見ている
店のガラスだけではなく
道行く人々の顔にも
同じような表情が広がって
だから
ときどき
父や母の顔を思い浮かべる
のだろう ....
それが一日で終わるなら
(一年に忘れ)
一年をともにするなら
(十年は思い出すだろう)



捨てたのですね
思い出を
あした詩人が
なん ....
産婦人科の女医の
知り合いもいなければ
メメクラゲに左腕を噛まれた
覚えもありません。
しかし、左腕が痺れてます。

左腕の痺れは
ネジの絞めすぎだと
何かの本に書いてあったので、
 ....
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