刈りとられ
跳びはねてなお
夜になると猥らだった
言葉たち
摘みとってゆく六月の光は
無いようで
そこにあった
緑たちに
ろ過され
打ち砕かれた先に
また
芽吹きはじめる
....
流れに逆らって風が吹くから
動けない枯れ葉が揺れる
時期尚早
焦って落ちた
若葉も揺れる
全くその夏と言えば
まだ6月だと言うのに
いつものように焦ってはじまるイチロクサンパチの祭りが
暑くて街 ....
『川沿いの空想』
老人は川沿いを
ゆっくりと目的地に向かっていった
すべての色を鮮やかに
太陽が今日も熱かった
泳げはしない川の
それでも綺麗な流れの中を泳ぐ
あの魚になりたい
水面を食むその ....
たなごころに
すとんと収まるその笛は
尊い土の重さと
ほのかな内空の軽さを
同時に伝える
私は
澄んだ森の気配に
肺胞を湿らせ
惹きつけられるように
ほっこりとしたぬくもりに
....
トライアングル
カラカラたたけば
遠くで聞きたい鋭い音
速度を弱めて響きを遊び
近づいてみた
余韻をしっかりミュートして
アコーデオン的な手法で
空気を押し出し
塗り尽くせればいいなと ....
思い出は
時に抗(あらが)う逆行性
たった
一文字の喘(あえ)ぎが、
砂時計の上下を違える
するり、と開いた物語の行間に滑り込む
望んでもいないのに
わずかな隙間からむしりとられ ....
骨の折れたもの
きつく縛られ 置き去りにされたもの
腕に 鞄に
ぶらさがった憂鬱の蝙蝠
その時を待つ核弾頭のように
危うく 厳かに
潜んでいるフック船長
....
白雲をシーツに寝付かせカルテには「ただただ青い」と記す看護婦
「お水まだ、青くないね」とはしゃぐ子の満ちてくプールに濡れるくるぶし
ルウプするデイジェイのかける ....
リズミカルな樹々の風景に佇む俺は
ボーリングのピンのように突っ立ったまま
カウンター越しで待つ、曇った瞳をした青年に
酒を手渡した
幼稚な脚を露にし、
ステージで腰をくねらす女どもが
....
うすい水の膜を通して
いちにちの過ぎるのを待つ
泳ぐに泳げない、
不器用な蜥蜴の成れの果ては
にんげんに良く似ているらしい
わたしは髪を切る
意地の悪い快感をもって
不運の絡 ....
昨年の今頃だったろうか、何故だか消防設備士の勉強をしていて、火災報知機にも色々あることを学んだ。煙感知器とか、熱感知器とかあって煙感知器とは発生する煙によって生じる光の乱反射の量から火災と判断するも ....
君はいつも
留守勝ちで
玄関には貼り紙
「ただいま外出中
直ぐ戻ります」
いつまでも経っても
帰らない
温泉に行ったのだろうか
それとも
見知らぬ土地へ
しりこだまを抜きに行ったの ....
アスファルトの照り返しは穏やかではない
24号線沿いのひび割れた歩道を蹴って
いつまでも変わらない信号を見上げる
太陽がもうひとつ増えた気がした
雨と晴れの境目を見つけた少年時代の君を
....
湿気と暑熱が凝り固まるジャングルの奥
そのはば広の葉の重なりを覗きたまえ
黒く蠢くものこそ無数の毛虫
黙々と食べ累々たる糞を垂れる
糞は山となりジャングルとなる
すなわちジャングルとは彼 ....
人参の切れっぱしは北の窓辺
日に日に伸びていくやわらかな葉は薄明かりの中で
光を もっと強い光を
その葉先で探しながら
窓の外を見つめた
細い白い根を水中に這わせて
オレンジ色は痩せて ....
{引用=
憂鬱でふくらんだポニーテール
不満でとんがったハイヒール
足がつっておぼれかけたクロール
干したまま雨にぬれたキャミソール
....
蒼と紅が溶け合う黄昏
澱んだため池と 汚れたアスファルトを割く
目に痛いくらいの白いレールに
咲いていた
薄黒い緑手を緩やかに伸ばして
《寂しいんだ》
絡みつく
そっと触れれば
震えるよう ....
月夜に犬を連れて散歩に出た。
境川という神奈川と東京都の県境に
流れる川の畔を歩く。
橋のたもとまで来ると何やら小さな生き物が
何匹も橋の隅をぞろぞろ動いている。
アメリカザリガニだ。
....
頭の骨の中で起こることが
あなたとわたしの全てではないと
確かめながら
食べ
汲み、飲む
気持ちのよい
作業を続けていますけれど
こころは
殻なしの底なしのたまごなのです
中には
....
晴れた日の自転車は
ちりちりと
陽射しが痛くて
風を切ると
明るいシャツに羽虫のシミがぽつり
白や黄色の
果実の予感を湛えた花は
土埃の上で
清しく開き
匂いを放つでもなく
た ....
電話のあなたの声がしゅるしゅるとしぼんでゆく
タイムリミットは15分
「ウルトラマンのカラータイマーみたいね」
3分の5倍あると思っても
沈んでいくあなたを掬いあげられないまま
電話 ....
プラスチック
展示ケースの中の身体
柔らかに保存された眼球に
尊いという意味の
生きる日が見えるようで
僕らはただ
神様を思い出した
しなやかに
細胞は明日へと ....
きのう
飛び去った飛行機のように
蛾が震えていた
取り残された最後の技師が
数値を記録し続けている
薄汚れた窓硝子の向こう
森を走っていく少年あるいは少女の白い素足が
境界を飛び越えなが ....
何故君の手のひらは
綺麗で
広くて
女の子みたいに
冷たいんでしょう?
わたしの手のひらは
ぼこぼこで
小さくて
いつでも熱くて
どこか湿っぽいです
だから
その
....
思えば今日だった
ような気がする
何が?
と
尋ねられる事はないけど
もし ....
金融不安っていうか
もう800円しかないから不安とか
死ぬまで童貞ぽくて不安ってのならまだ分かるけど
金融不安ってのは謎だよね
日経片手に金融不安っていうか、めでてーな
新しいファッションか ....
遮蔽する人工物もなにもない!
球形をやわらかにくるむ白雲をも、ひとおもいにつんざいて
無音の只中に僕らは跳びあがる。
軌道上で目配せし合い、いざ革命の合図をしよう
地上から遙か虚無へと
....
意外と忘れがちな前向きさがある。
時に必要な判断でありつつも、使い方を間違えると結構厄介な事になったりするけれど。
そう簡単に隠しきれるものじゃない。
一定の公平さは常に人のどこかに仕込まれ ....
いまもなお ビッグバンより続いてる
連鎖する水 連鎖する青
ナース服
肌から消えるアルコール
採血針を通過する赤
引っ越しを繰り返すたび立つ鳥の姿に自分重ねて変わる
....
空を溶かしたような
この海が
わたしの心の奥の奥を
綺麗に洗ってくれた気がしました
空と海が重なる此処なら
泣いても
全て飲み込んでくれそうで
心の雨もどしゃ降りに
降らせてみれば
....
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