三十年の間
一つ屋根の下ですごした
八十八の祖母が
悪性腫瘍と知ってから
街を歩いて目に映る
すべての人が
やがては空に吸い上げられる
幻の雫に見える
曇り空の果 ....
自ずから成る
耕作の係数に支配された土
この土地に極楽鳥は野営し
その雫で濡れた重たい巣をいとなみ
静かに沈んでゆく ぬくもり
作物を繰り返し保っている
土力の茶色に緑は
....
ぼくが文章を書く時にいつも用法に迷うのが、「肯定的な強調」の副詞なんだよね。
何か出来事があって、その度合いが大きく良い時に用いることば…回りくどくて何のこっちゃ判らんけど、
この本は ....
へのへのもへじみたいだねと問いかけたら
「へへののもへじ」が正しいんだと
あのひとは言った
―へのへの
叱られて家に帰れなかった
夕焼け空に
ロウセキで描いた
へのへのもへじ
....
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急に立ち止って後ろ足を張って立っている。
それは猫足のような立ち方ですが、
猫が秘めているような力強さはなくて、
掴まり立ちをした娘のようなんです。 ....
仕事の憂さ忘れ彼女と四回戦
それでも朝はやってくるもの
夜に咲く恋にうつつの吸血鬼
それでも朝はやってくるもの
仕事なく金なく友なく死ぬ気なく
それでも朝はやってくるもの
....
いつもの歩道
サクラ色
盛りを過ぎた花びらが
はらりはらりと舞散って
私の行く手を
ピンクに染める
舞散る花びらつかまえて
根性だけは筋金入りよ
なんて囁いてみ ....
シーラカンスという名前は
ギリシア語で「中空の背骨」という意味で
原始的なそのつくりは弱々しく
外見のゴツゴツした印象からは想像できない
けれど普通の魚と比べて多いヒレは
しっかりと ....
作詞家でプロデューサーでフィクサーで
康範仮面は誰でしょう
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遠い日に想い出すことはなに?
近い日に想い出すことはなに?
振り返りながら君は笑って言う。
なんだろ、何かあったっけ。
真に孤独である意味はな ....
人はみな苦しみの旅路を楽に行きたがる
美しさの罠
心地よい誘惑
誰も彼もが主人公の物語などありはしなないのに
皆そればかりを求めて
行き場を失う視線は
自分をプ ....
哀しみ色した
シャボン玉
はるか天をめざして
舞い上がり
曇り空にふわふわ浮いて
はじけては
哀しみ色の雨になる
蛙がうたう
悲しみのうた
かえるが知らせる
....
揚々昇り立つ煙り 山より下るは
吐く息の ちぎれるも 薄れ
野に流るる かぎろい 四季の はじまり
卯月
甘い 春の来
*
そろり そろりと やって来たのは 糖蜜の ....
また、この季節がきたよ
ながかったねぇ
ぼくたち
華やいで
きみ
咲いているよ
あの花は
すべてを忘れろっていうように
咲いて、風に流れているんだ
....
小屋立てば芝居の怪人隠れ住み若者誘う
劇スパイラル
板の上かたく抱き合うお芝居の稽古を夜も続ける二人
午前2時
公園の隅で{ルビ台本=ほん}を持ち叫ぶ台詞よ
届け世界へ
....
タイムマシンを買いました
十年先が懐かしい
タイムマシンを買いました
最新型を買う為に
タイムマシンを買いました
月賦が死語になる前に
タイムマシンを買いました
CD-Rが読 ....
{画像=080406010521.jpg}
激しい自己嫌悪に疲れた
物憂い晩春の夕暮れ、
壁に凭れながら、
眠りたいと思った時、
もしかするとこの眠りたいというのは
死にたいということなの ....
先週末に桜が散ったばかりなのに
あなたは
物置から引っ張り出したビーチパラソル
具合を見たいからと
これ見よがしに拡げてみせる
どうやら使えそうだな
アルミパイプの椅子まで組み立て ....
その色を灰にもさせて
白くも汚して
さくらが蒼ざめていた
それが散っている
空の蒼はふとその刹那
宇宙の闇にも見えた
それは地上の海だった
きょうは清明だ ....
子供の頃のように
過去も未来も関係なく
無邪気に笑う事ができたなら
きっと君に
好きだって
伝える事ができたのに
君の桜色のその泪
はらはらと散る前に
夜街にて拾いし花びら手で握り
開けばあらわる恋待ち娘
思い寄せる二軒隣のあの人の部屋の前に落ちたる合鍵
恋別れ衣食生き死にあるごとに我は現れ言葉を拾う
はら ほろ り
はらり ほろり
宵闇を淡い 焔で燃やす
桜花 澄む
幽玄 現前と古木から湧き立ち
しとやかな肌 剥がれるように
はら ほろり はらり ほろり ....
日だまりに停車してある軽トラできらきら光るホットサイダー
おじいちゃん早く渡りな大丈夫道路は三途の川じゃないから
祝日に国旗を掲げる家なくて家主の世代交代思う
....
一
真夏の昼下がり。
海へと向かう埠頭をめざして
ただ、闇雲に走るのは
未知のウイルスに侵された
一匹の狂犬。
ザー、ザーと耳の奥で
鳴りつづける不気味な雑音。
熱を帯びた鼻 ....
「せんせいのては やさしいかたちしてるね」
いきなり言われたので
僕は自分の手をじっと見た
どうみても普通の手だ
「どういうところがやさしいの?」
血管がういて筋張っているし ....
ああ めまいが
涼しい顔してその実
目の前を通り過ぎるもの全部に翻弄されている
それでもまだ発狂してないところを見るに
やはり俺は何も考えていないのかもしれないな
俺は俺自身に尋ねる
....
いのちが灯る
こころが発する
ありがと
ありがとう
かれていっても
そこにあった
事実
見送るわたし
走るきみ
(または逆)
ことばよりもっと
かたりかけるもの
色も感 ....
生娘の桜のような唇を冒しがたくておでこにキスする
つきたての餅のごとくにふわふわの稚児の足裏
口びる寄せて
わが手にて花が開いたばかりなる君のお口に熱いキッスを
「この ....
長い階段上りきったその先に
僕のお墓が建った
鹿に蹴られて
冷たくなって死んでいたのさ
僕の亡骸
あの山に眠ってる
迎えにこなくてかまわないよ
小さな舟に乗っていた
潮の香りが ....
さくらが夜に潜んでいた
ぼくが夜に潜んでいた
さくらがこの世に潜んでいた
ぼくがこの世に潜んでいた
さくらがぼくを映すのか
ぼくがさくらを映すのか
さくらが ....
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