すべてのおすすめ
つまみやら肴やらで雑然としたテーブルの上に
さわやかな風が吹いて
突っ伏している中年の
たよりないバーコードが たゆたう
そう、
それはきっと
隣で口を尖らせて
懸命に風を送っている ....
せんせい、あのね。
せんせいのすたんぷかわいいね。
あのね。
ぴかちゅうのえがついてるの。
「がんばりましょう」
って、
ままよんでくれたよ。
すごいって、「しょう」って ....
ケンカして
頭にきて
飛び出しては来たものの
あんまり夜が静かで拍子抜け
細くて白い三日月が見える
今この三日月をどれくらいの人がみてるんだろう
あの暗闇の天辺をアタシと同じ気持ち ....
ペンキ職人
天野茂典
青いペンキ
台詞のない声
遠くからやってくる海
炎の青空
どこにも出てゆかない砂
ぼくの病棟が乾燥している
シマリスとあそんでいる
ナキ ....
スタンドライトだけ付けて
ひとり想いを描いてる
ベッドの上寝そべって
ラジオを付けたまま眠る
あの曲だけをリピートで
ひたすら流し続けてる
他の誰かの言葉に
自分を重ねてみてる
....
ビーチサンダルのペタつく音にアスファルト、ひとり。光るのは蛍光灯と蛍光灯とそのまた右の蛍光灯と増える増える増える、倍々に膨れ上がる音響のように目をすぼめれば「ほらほら丸くないよ」と跳 ....
強く握ってくびれた部分
思い出せない自分を思い出す
と それだけになってしまう
肩の後ろが持ち上がる
ペダルを漕いでまっすぐになる
間に合わない僕の目は何も持てず
少し余計に歩いてから ....
心も体も逆立って
どうしても眠れない
汗だくになりながら
何度も何度も寝返りを打ち
記憶を掻き毟る
流れる血の色は
見たこともない
どす黒い色で
こんな満月の夜にきっとわたしは
....
壊れてしまった
ふとんばさみが
とりのような
弧を描いている。
夏のベランダ
海からは程遠いこの部屋で
僕はパン生地をこねる
できるかぎり薄くひらたくのばす
それを焼くための釜がないこの部屋で
彼方の水面
君は手をかざしていた
何が見える?
「何も ....
守られないことを知りながら
またひとつ約束をする
もう切る指をなくしてしまったらしいので
嘘つきなのは僕のほうだよ
と
嘘をつく
今日はしゃがみ込んだ君の足もと ....
降りしきる雨の中
傘もささずに俺たちは歩いた
死ぬほど歩き続けた
けれどそれで
俺たちが死ぬことはなかった
俺たち いい奴だった
俺たち 輝いていた
俺たちは生の肉だった
俺た ....
あなたは
とてもかなしく
笑う。
こすもすの
ひろがりのように
笑う。
いきものの
さがをいとおしむように
笑う。
右手を挙げると
鏡に映る自分が左手を挙げた
右手を挙げさせるために
僕は左手を挙げる
外の方から小さな鳥のような鳴き声が聞こえる
空はまだ晴れているだろう
午後は爆弾を買いに都会へと行 ....
捨て猫は泥濘で踊る
お婆さんの膝の上の心地好さを思い出しながら
捨て猫は泥濘で踊る
水たまりに映る汚れたトモダチと共に
雨降りの病みは、月明かりを遮り
大好きなトモダチを ....
君はただひたすらに自動券売機をつくっている
外、春はとっくに酸化してしまった
困るね、こんな雨の日は
花壇に水をあげることもできない
僕の手の中で冷たくなっている冷蔵庫
その扉を開け ....
カーテンレールを外れた布が
窓枠で首を吊っている
身動きもしない
六畳に寝かされた
汗ばんだシーツの皺
墜落した蚊
赤い斑点
タールに濡れた壁
照り返し象牙色
のなかに陰 ....
女は家庭に入るのが幸せ
と語るハナコさんは
コブラを殺せる
名前に因んでか、草花が大好き
洗濯が終わったら
いつくしんで育てた
色とりどりの花たちに
水をやるのが日課
庭を掃いたら ....
夕暮れ電線 錆びた門扉
忍び寄る夜の気配
誰かが呼んでも 気付かない
額に角 真っ赤な舌
嘘吐きは泥棒の始まり
あたしが泣いても 気付かない
ゆっくりと ....
パンダ部の先輩は
いばってる
パンダ部にいる人は
出世が早いという噂
コアラ部の部長は
いつも深刻な顔してるけど
その割に
取り越し苦労が多い
ゾウ部の女性社員は
いつも大量の書類を ....
波間に夢を見る
ふと揺られていた
気がつくと電車などに乗ってしまっていて
しかも田舎の単線の三両編制で
左手には木々が広がり
進行方向右の窓のそばで
ぼんやりと外を見てると
すぐ ....
怪しいホテルでバイトをする
奇妙な香水の残る部屋
荒々しくねじれたシーツ
鏡の裏には
監視カメラの覗き込む
見る方も
見られる方 ....
日が暮れていく、僕の脆弱な血管の中を
翼よ、あれがパリの灯だ
けれど、僕の翼はじゃがいもでできている
ポム・ド・テール!
大地のりんごよ、大空を飛べ、飛べったら飛びたまえよ
....
信号を無視してあらゆる交差点を渡った 緩慢な自殺未遂もことごとく失敗に終わり
裁縫バサミで刺した腕の傷も今はもうほとんど目立たない
つながれた大型犬が吠える それにつられて隣の家の
つな ....
冷蔵庫には蟹がある
九本足の蟹がある
あたしは今夜見ないふり
首の赤味を押さえます
もしか
あなたが欲しいのが
甲羅の色のランプなら
あたしは ....
とても疲れていたので
キスをした
とても疲れていたので
キスしかできなかった
でもとても安心した
なかなか安心なんてできない
自分は一竿主義だが
夫がいなくなった
丸一日かけて森を歩く
竹がよくのびることで有名だ
カツカツコンクリートを歩く日は
男の尻
背から足
くぼんだ腰の上着が たゆんでいる場合にのみ
男 ....
口に押し込んで手でふさぐまま
そんなむちゃも呑み込んでみた
のどにかたく詰まったグルテン
を流し込むのはみどりのボトル
氷にたらす焼け石の水にライム
をふりかけた無敵の溶液ばかり
....
帰る場所はないくせに帰るわって私は言った
引き寄せてもらえるのを待っているのに
引き寄せられると急にイヤイヤ
ひとりでいるとふたりでいたい
ふたりでいるとひとりにもどる
ひとりでいると気 ....
君は
ここでないどこかの街で
どこか遠い高原で
誰かに
抱かれているのだろうか
僕でない誰かの下で
くしゃっと
シーツ
顔をそらせて
それはとても自然なことで
夜行列車 ....
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32