細い細い手すりなので
あまり寄りかかると
折れてしまう折れて
そこにおんな一人立ち
ぐううと力込めて見せる
見せて笑う
おとこおろおろし叫ぶ
危ない危ないあ ぶ な い
お ....
音を立ててブナの木は水を吸い上げる。
地下の滝は光を求めて上昇する。
森は暗く木々はみどり。
凡庸な言葉が指をすりぬける。
緻密な理論はブナの木に関わりがない。
ブナはただ立っ ....
きみの半身を 盗みだして
逃げる途中 このさきの
春の右肩あがりで
ころんだ 拍子に
結ばれたんだったね
真っ暗な 寒さの
果てに
今 そっと 雫が
流れる
まるで 今日の
自分の 心の汗が
ほとばしる 感情を
裏切るように
禊のように やがて
大粒となり
傘も コートも
....
僕はアリクイ
三度の蟻より
泥水が大好きで
いっつもうわっつらの
ぬるいとこだけ舐めてんだ
僕はアリクイ
本当は
冷たくて濃い泥水のほうが好きだけど
決して深いところまでは
首を ....
角のない消しゴムは
捨てられる寸前だった
角があろうとなかろうと
同じ材質なのに
四つの角があるとないだけで
大きな差をつくっていた
丸みの部分にはすれたえんぴつが
くっついていて
手 ....
寂しさを積み上げた山は
秋の匂いがした
木の実を拾い動物達と話す
寂しさを暖かさが溶かしていく
山がすっかり溶けると
みんな消えていた
残ったのは
痛いくらいにしんと ....
おんなのこは
とてもいじわるなので
けたけたとわらいます
たたみのうえ
すっぱだかで
けたけたとわらいます
でんきにぶつかるむしが
そんなにおもしろいのときくと
わたしはじ ....
私のことを少し話そうか。
私はね、アリなのだよ。
黒くてね、節足で、勤勉だけが取り柄のね。
そりゃ甘いものには目がないさ。
生活は甘くないからね。
均衡を保ちたくなるのさ。
私のことを ....
また今年も
お彼岸に会いに行けなかった
「仕事が忙しいから」
「行くのに新幹線使っても半日もかかるから」
毎年同じ理由で行けなかったじゃ済まされない
小さな頃優しかった父も
「 ....
たましい…だなんて
古臭いことばを
ミルクパン
で。どろどろに溶かしたら
ハートの型に流し込む
いつから
だった
かな
球体関節人形の
股間から
生まれてきた。わたし
だ ....
あらゆる意味で
生成流転の日常がいい
今日 新しかったものが
明日 古びてしまう
永遠と思われたものが
もろくも崩れ去る
野性の獣のごとき
機敏な世界
日々が日輪と共に ....
言葉は架空
言葉は凶器
言葉は空回り
言葉は記号
記号は強調
記号はロック
ロックは愛
誤解と曖昧をふんだんに、あと卵をひとつ
愛とはレンコンのはさ ....
猫とジャレる 君がスキ
猫もスキ 猫で遊ぶ君がスキ
猫の手スキ 肉球がスキ プニプニ感 スキ
君がスキ 猫の真似をする 君がスキ
君がスキ 猫よりスキ
....
明け方のビル群は
墓標のように見える
おれはタクシーを拾って
車のまばらな御堂筋を
一直線に南下しながら
疲れた頭の片隅では
死ぬまでに稼げる金を
ぼんやりと計算している
アス ....
いちばん古い棟へとつづく渡り廊下は
いつもひっそりとしている
ことに雨の日には
この渡り廊下だけが離れて
雨降る宙の中に 浮かんでいるような気になる
《ここで語り合ったこと
《ここ ....
階段の踊り場のあたりで
父が釣りをしていた
家の中とはいえ
釣りをする父の姿が
再び見られるとは思ってなかったので
嬉しかった
子供のころ一度行ったきりだった
工場地帯の隅っこに広がる
....
吸い込んだ煙に
肺を犯され
君の存在の
重さや
大きさ
そんなものを
痛感していた
ただ
どこか頭は冷静で
指先の震えだけが
止まらなかった ....
昨日はきみを傷つけたので
布団にしがみついて
うつ伏せたまま
闇のなかに沈み
眠った
夜が明けて
目覚めると
窓枠の外に広がる
朝焼けの空
ふわりと浮かぶ
....
街行く人たちの背中に
「半額」シールを貼っても
きっと
ほとんどの人は
誰にも買われやしない
買われるのは
外見が良い人
ばっかなんだろう
クラス全員の腰に
ライダ ....
春はすぐそこまで
来てるはずなのに
冬と談合してるんだな
雪でも降りそうな空だ
ジャスミンティーは
飲み飽きたから
ほうじ茶を飲んでる
眠気ぬぐえなくて困るな
近頃デジャヴはも ....
まっすぐ伸びた茎に
まだ開ききらない
若いガーベラ
その素直に親しみ
その芯を持て余した
ガーベラ
まぶたの間に
顕れた苦しみ
黒目を大写しにする
苦い海水のような涙
喉に ....
何も変わらない街並み
古びた家々の塀を猫が歩く
穏やかな陽射しが満ち
平穏の昼下がり
縁台から君の好く吸う
煙草の匂いがした
だけど
君はもういない
坂道を駆け ....
判断基準は自分で
作り上げるもの。
他人の意見は参考にしかならない。
あなたを満足させるのはあなた。
何をしている時が幸せ?
誰と居る時が幸せ?
これはあなた自身が
一番よく知っているは ....
雲
あんまり空が
低いので
私は泣いて みたのです
いいえ私は泣きません
ひとつも涙は零れません
とけてゆかない成分だから。
ひとり
あなたをきずつけぬよう ....
さようなら
その言葉だけは使いたくなかった
もう二度と会えなくなる気がしたから
赤城颪に背中を押されて
僕らは学び舎からと飛び立つ
ごめんね
泣かないって約束したけど ....
日曜日の朝は陽が昇るまで
貴方とベッドの中
寒い朝も貴方の温もりに包まれとけてゆく
朝はマーマレード
挽きたてのコーヒーの香に
広げた新聞の上から覗く貴方の笑顔
お腹を壊してしまった
深い夜の谷底で
誰もが一人きり
カーテン越しに光を放つ
あれは確か電灯だ
冷気が身を纏っても
焼け付く陽光が注いでも
その場所から逃げられず
私だけではな ....
始まりも終わりも
甘く溶かしてゆく
アルコールランプほどの温度
喜びの果てで悲しみの底で
君はいつまでも恋のまま
歴史は退屈なだけ
予言も信 ....
澄んだ青空
光る木漏れ日
隣に、たんぽぽ
とっても
いい気分
募る気持ち
会いたい気持ち
隣に
あなたがいたらなぁ
とっても
切ない気分
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