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風かよふ春のあした
霞よりほのかにうち出でたる葉の
えもいへぬ色に誘はれて
ゆくりかに歩きつつ空を眺む
後ろより聞こゆる鳥の声は
春の宴にぞ思ゆる
よろず風の詩なり

いづこから流れく ....
朱銀のスプレーを吹きかけ
月が街灯に拡散し立ち昇る黄蝶の渦巻き
肌寒いモノクロリボンを路地裏に解き放したまま
退廃のエアープレインが
氷雨玉の群れを爆撃してる

なみき通り
倒錯したガー ....
人はみな誰でも
いつも夢を抱えている
その夢が見えなくなった時
空を見上げれば
忘れた夢が浮かんでいる

何でもなかった白い雲が
何かの形に見えるでしょう

人はみな誰でも
いつも ....
今歩いているこの路地が
たとえば海沿いにしかれたひそかな町の
その奥に抱かれた狭い路地だったとして

世界一小さいという砂粒が
つもって出来た町だったとして

もうあと何件かの民家を越え ....
どこまでも続く桜並木の先に在るものを
確かめたくて
あなたと手をつなぎ歩く

親子ほどにも見られそうで
控え目なあなたの腕を
胸元にまで引き寄せ
歳の差なんてね

桜は潔く散るから美 ....
{引用=さらり ふぅ さらり

水の音

ふぅ さらり}






川岸で
あかい手を あらってた

空には月が揺れ
あたしは 朧月夜、を 口ずさむ

川岸で流れた ....
夕暮れに爪を切る
夜 爪を切ってはいけないよ  と
いつか誰かに言われたから

冷たい風に
見上げれば
うすくうすく うすい空色
ほそくほそく 細い三日月

泣きたいほどに
 ....
ぼんやりとした光が
畑を一面に降り注いでいます
真っ赤な郵便局のバイクが
畑の中を通り過ぎて行きます
なんだか春らしい
道の草が風で揺れています

ゆるやかに道が曲がっています
雀が私 ....
夜の、
雨の、
それぞれのゆくえを
ひと色に染めて
あかりは桜色

煙る雨の甘さ、
舞う花びらの温み、
絡めた指が
やさしさを紐解く
夜に、
雨に、
焦がれる桜

時計の針 ....
自動販売機でコーヒーを押すとおしるこが出てきた。

『まいど!』

自動販売機が馴れ馴れしく礼を告げた。
客に対する無礼と商品を取り違えるいい加減さに腹が立ち。
違うぞコノヤロウと自動販売 ....
きみの魚にふれたくて
えら呼吸を切望したら
肺が痛んだ
朝への開口を防ぐように
その
呼吸のひとつ
くちびるを
置いていく


きみの鳥をとびたくて
背中にそらを作ったら
煙に ....
君が僕に別れを告げてから
君ソックリのロボットを作ったんだ

君と違って言うことを利くし
我が儘も言わない

だけどね 君ソックリの声が痛いよ
だけどね 君ソックリの笑顔が痛いよ

 ....
愛されたあの日
愛したあの日
月が満ち
海の中

海の泡となった。
そして星となった。
本気で愛していた。
くしゃみをした。

泣いた泣き明かした。
星座をたどって
元来た場所 ....
ねえ、
昨日の夜は何してた?

私は眠れなくて星を見ていたわ
あの星は、あなただと決めて
一番明るくて、まっすぐ私を見ていた

あなたの星はキラキラしてて
すっごくキレイで
私は悲し ....
あっ 

と九十過ぎの{ルビ老婆=ろうば}が言うと 
黒い杖はエレベーター十階の 
開いたドア下の隙間にするりと落ちて 
奈落の底で 
からんと転がる音がした 

「 杖も毎日使われて ....
寝過ごす街に喝を入れるのは
ピンヒールの靴音

一年中食べ過ぎたり、飲み過ぎたりする街が
眠り姫の物語する季節は春

ぽっかり微笑む陽射しに
散歩中の乳母車の赤ちゃんも
営業中の働 ....
卒業したと思った
証書も確かにもらったのだけど

ナイトブルーの雨と
アスファルトが
セックスした後のにおいにつられて
水たまりをはねてみたくなった

石ころ蹴って
空に向かって
 ....
 最果で
 今年最後のさくらが咲いている


あの日、工場の辺りにはやっぱり同じような工場がたくさんあってね、その中ひとつの敷地に桜の大木が並んである。
バスも届かないくらい、おおきな桜だ。 ....
山奥の一軒の家のために
立てられた電柱は
その家に誰も住まなくなってからも
一人で立っていた
電線はつながっていたが
電気が流れることはもう期待できない

電柱は昔を思い出した
まだそ ....
わたしのなかのうたが
青い蝶になって
空の彼方へ飛んで行った

鳴り止まないオルゴール
うたのないまま時は過ぎて

今頃おまえは
どこを飛んでいるのだろう
どこでうたを歌っているの
 ....
 僕は夜遅く ドラマチックレコードを聴く
 布団の中に潜りながら涙を流す
 あの頃の記憶が蘇ってくる
 僕の膨張した心を絞り出して涙が出てくる
 雨に沈んだ森
 僕は君の作ってくれた様々な布 ....
例えば。
それが三人称で、
神の視点で書かれているとすれば。
神の背格好や学歴、
食べ物の好き嫌いから、
性的嗜好に、
初体験の年齢と相手とその満足度まで。 ....
      1

眠れない夜は、
アルコールランプの青白い炎に揺られて、
エリック・サティーのピアノの指に包まれていたい。
卓上時計から零れだす、点線を描く空虚を、
わたしの聴こえる眼差し ....
ゆふぐれ
ふみきり
みずたまり


おむかえの
はは、したがへて
黄いろいぼうし
せおう赤


あたらしいくつ
よごさずに
じょうずに
とべた、よ


はがいっぽん
 ....
人を好きになる度に 誰かを傷つけて
 誰にも愛されなくなるようで恐いんだよ

誰の助けも借りず 借りられず傷ついて
 自分を追い込むだけ追い込んでも答えは見つからない

  誰か あたしを ....
霧雨で
全部言ったら霧雨で
それは何千日っていう僅かな
俺たちの
永遠で

霧雨に緑は映えて
おまえの瞳の緑は映えて
そんなに静かに
生まれたての春の花々のように ....
いっしょに
空を飛ばない?という声に
ぼくは怯えた


だけど
あの雲のうえには
どんな花が咲いてるのか
ちょっと知りたかった


そういえば
この ....
そのとき、検出された過剰な信号がフィルターを通過し、
離散値として処理されたデータが神経線維を走りつづける
肢体の切断、もしくは破損された細胞への速やかな対応
つまり力学的にもたらされたダメージ ....
君のその白い腕に 
ふれたいよ 

君のその首すじに 
髪の薫りを 
かぎたいよ 

瞳と瞳を一つに重ね 
すべての世界を 
溶かしたい 


  *


( 車窓はいつ ....
きれいで
きれいで

けれど あまりにも
繊細で、

そう、
それはまるで
ウィスキーを含む時
唇に微かに触れる
それ、のよう

どうしても
どうしても
抑えきれず

 ....
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