ワンルーム
ひとり暮らしで生きている
いまは
むかし
大好きな
彼が綺麗な花を買ってくれた
ムーンダストプリンセスブルー
クリスタルの花瓶に挿したよ
....
優しく、激しく
ひたすら開かれ
しなやかに躍動し
風は吹いて、風に晒され
熱 巡り
肉を、魂を、
熱 貫き
込み上げるものを、
沸き立つものを、
突き止め突き離し
....
底無しの暗闇に
呑まれても気にすんな
秒で深淵に
叩き込まれても(うちこまれても)気にすんな
人生にゃ昔から別に
救い ....
ツクツクボウシが啼きそびれたみすぼらしい晩夏からそのままスライドした秋の曇天は、思考回路が壊れた若い母親が道端に投げ捨てる紙おむつの色合いで、ホームセンターのワゴンから掴み取ったスニーカーの靴底は ....
白い途をとおって
月の光は
やって来る
ぽっかり
内部から浮かぶ
ように
ひょっこり
内部から立ち上がる
ように
しんとして、しんとして
染み渡り浸透する
肉を掻き分けて ....
それから
わたしたちは
小さな書物になりました
耳を閉じて
陽の当たらない書庫に
丁寧に並べられて
呼ばれない名前を付けられ
秋が去るのを知りません
鳥たちは渡っていったのか
薔薇の ....
その日わたしはどうしても部屋のライトをつける気にならず、小さなテーブルの上の灰皿に蠟燭を置いて火をともしていた、そうして、ソファーにもたれて南米のリズムのようにゆったりと揺れる火を眺めていた、脚を ....
乾いた感覚で日曜の夜の表面を滑っていく
音楽やアルコール、色のない浸透でゆらゆら浮かぶ
希望、のような、淡い文学を
手に入れたい、と
思っている
言葉は、薄く切っ先を重ねてい ....
○「便利ロボ」
「お父さん!」と呼べば
いつでもどこでも
ママのところへ駆けつける
こんな便利なロボはない
○「情報化時代」
間違った情報が
正しい情報を駆逐する
過激な情報が
....
(───パトカーのドアを開ける。振り向きざまに笑みを浮かべた少年が、後部座席へと乗り込む。
(少年は振り向き、笑みを浮かべ、パトカーに乗り込んでいく。
───厄介な事を起こしたの ....
名探偵コナンが
1000話をこえて継続中だ
アニメでしか実現しない
魔訶不思議な世界なのに
誰も異議を唱えないのは
なぜだろう
SFだとワリキレバ
許せるかというと
S ....
ち、に濁点を打ちたいけれど
だ、ぢ、づ、で、ど、の
だ行の打ち方をすっかり忘れていた
ち、を打って、濁点を打って
ち゛にすればいいのか
でも、そんな打ち方だと
縦書きだったら
ち、と濁点 ....
本当の破壊衝動はいつだって自分自身のはらわたに届く衝撃を待ち続けているものだ、それが芸術の本質だと言ったらお前はどんな顔をするだろうか、そこにどんな答えがあろうと俺の認識が歪むことはないだろう、な ....
断続的に途切れる眠りの中で意識は夢の中で迷子になった、天井が、壁が、床が、ねじの回転によって歪められていく、鍋の中で粘着いていくカラメルソースのような渦の中で、内臓になにかが捻じ込まれるような感覚 ....
舶来産のまがいもの、これ幸いとばかり抱え込み
国を挙げてのばら撒きショー、さながら非加熱製剤のごとく
テレビプログラムで胡散臭い、司会者と博士のプロパガンダ
いかに安全で素晴らしいものか ....
静けさの含み持つ何か
自らの心落ち着いた時に
期せずしてやって来る何か
過去へ遡行しながら
未来から到来する
未来から到来しながら
過去へ遡行する
胸奥から込み上げ溢れ 溢れ込 ....
まだ明けぬ夜のことなど延々書き連ねたところで仕方がないのだ、日向のことを、簡潔な希望のようなものを綴らなければ誰もそれを読んでみようなどと思うはずがないと、誰に言うともなくひとりの若い男が初めての ....
剥き出されている
神経は逆立ち
熱風に鳥肌立つ
紅の樹木は激しく波打ち
瞳をくりくりと輝かせた
木登り少女は姿を消した
何にもない、何もない
意味は全て剥奪され
記号だけがひょ ....
今日でゴールデンウイークが終わる。こういう期間に家業がないと落ち込むのだが、昨今のスキー場閉鎖やコロナ禍ということもあり、暇なことに慣れてしまっている。それでも暇ながら五泊ほどの客が居たと言えば居た ....
思うに俺は、生まれてすぐに、育つはずのない骸の中に押し込まれ、どういうわけか上手い具合に育ってしまったというわけだ、ある初夏の午後、歪み木細工の椅子に沈んでぼんやりとしていた俺はふとそんな考えに行 ....
ヒアシム・カインを放ちながら、エインスベルは笑っていた。
彼女が「カーガリンデの魔女」と呼ばれるようになった契機である。
もちろん、そこには恐れと軽蔑がないまぜになった、
感情が込められていた。 ....
こうべを上げれば
新緑、
濃密な匂いに青空は映え
降って来る降って来る
新たな一日の始まりが
吹き抜ける風に
透きとほる
どう見てもセブンだったコインランドリー
セリアになった文教堂
跡形もなく消えたケンタッキー
街の記憶ではない
私の記憶である
誰にも譲ることのできない
私の記憶である
市営住宅の ....
煙草が無いと無理だとか
ビールが美味いとか
スイーツ カ ....
人は
人として経験すべきことを
経験して
初めて成長する
誰かを好きになって
振られたり
誰かに好きになられて
恋人になったり
仕事に就いて
成功したり失敗したり
結婚して子ど ....
時刻は午後四時で、僕は見知らぬ部屋の中に居る、マンスリーマンションのような、生活に最低限必要なものだけを揃えた味気のない部屋の中だ、玄関を開けるとすぐにキッチンがあり、木枠にアクリルガラスをはめ込 ....
○「適応」
暑い日は暑い日のように
寒い日は寒い日のように
雨の日は雨の日のように
風の日は風の日のように
暮らしていかなければならない
○「大義名分」
プーチンも正義のための戦いで ....
舞い降りて来る
舞い上がり
舞い降りて来る
喜びの翼が
明るい陽射しに照り映え
二重三重に輪郭を揺らしながら
救いの天使よ、
今日こそ歓喜に打ち震え
私たちの日々の無力を
吐 ....
乾燥肌の娘を皮膚科に連れていく
娘はおでこをひっかき血が出ている
父と母と娘と三人で車に乗って
これが家族だ、と
父は急に気づいてしまう
三人の間に緊密な連携があって
三人の間に消すことの ....
雪は身じろぎもせず降っていた
無人駅のホームはすでに雪で埋め尽くされ
その明るさはほんのりと
ともし火のように浮かんでいた
ストーブを消し、鍵を閉める
無人駅の除雪番からの帰りしな
積 ....
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