長い夕暮れ
チアーヌ
目が覚めたら旦那さんが二人いて二人は友達でとても仲が良い。この世では女が一人に旦那が二人、それは当たり前。二人以上は許されない。それは不倫。
どうして3人でできないのかしら?わたしは不思議で仕方ない。3人でしたっていいじゃない?わたしは平気なのに。結婚7年、ねえもうセックスも飽きたね。だから巨大なトリプルベッドを買って、みんなで寝ようよ。窓は全開でね。
わたしは朝起きて朝ごはんを作る。あなたたち、ごはんよ。ひとりは卵サラダがないと怒るし、ひとりはウィンナソーセージがないと悲しい顔をする。だからわたしは毎朝パンを焼き、コーヒーを入れ、卵サラダを作りウィンナーを焼く。
二人が仲良くスーツに着替えて会社へ行くと、わたしもお化粧をして着替え、お仕事に出かける。わたしの仕事は図書館の司書。図書館の匂いが好きだから選んだの。坂だらけだから疲れるんだけどね。
仕事は好きよ。わたしは長い坂を上り下りして本を本棚に戻していく。坂は長すぎて上も下も見えない。とても疲れるけれどいいの。これは気持ち良い疲れなの。やるべきことを一日分、一日かけてやるだけ。ひとりの人間にそんなにたくさんのことはできないのだから。
コーヒーをちょうだい。わたしにもちょうだい。とても良い匂いの。そろそろ家に帰って晩ごはんを作らないと。あなたは誰ですか?小学校のとき、一年間だけ一緒だった男の子、そうだわ。思い出した。わたしあなたのことが大嫌いだったの。仕方ないからこっそり遊びましょうか。今なら大丈夫、誰もいないよ。
日曜日は家具屋に行くの。わたしたちはとっても幸せな家族。大きなベッドを買いましょう、わたしが真ん中で、旦那二人は両側に寝てね。乳房は二つあるから、一個ずつ握ればいいわ。でもわたしの分はないの。
図書館は坂だらけでねえ、と誰かがつぶやく。そうよ。上を見ればきりがなく、下は暗闇の中。わたしの職場はとても素敵なところよ。さあ、ビバルディでも聞きましょう。口の中に突っ込んであげるわ。
仲良く生きていきましょう。仲良くできるうちはね。欲しいものはありますか?命より?それならば今すぐに。神様はいつだってあなたの敵です。