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ありがとう銀の指輪の傷光り見つめてゆれる 青空一つ
{引用=「角川歌壇」2022年二月号分
水原紫苑先生選 佳作}
大丈夫だからと林檎を剥く午前、永い相槌、神まで騙して
死ぬようにおわるね季節の信仰は26℃の風の軋む音
目の端で笑うきんいろの陽が揺れる小指の傷と沈黙の解
きみだけを許したはずだ終わ ....
ラムネ工場で作られたビー玉にあの夏の日が閉じ込められてる
初恋を{ルビ啄=ついば}む小鳥に{ルビ啄=ついば}まれたとこがいつまでたっても甘い
遠くまでちいさな泡がのぼるからおそらく ....
優しさで出来てる星がひとつくらいあってもいいね。行けないけれど。
ふわふわでほんわかしててすべすべですうすうしながらしゅわしゅわなあさ
クローバー見渡すぼくらの遠くに町のような ....
{引用=縄梯子少女はおりるどこまでも夢の終わりへ釦は落ちて
こもん}
stay to the end of June目の前に降りしきる雨数え終えるまで ....
1という字のように立ち 一という字のように眠れ 孤独な無限
0なんて発見するからいつまでも君の不在が消えないままだ
ON/OFFのあいだに広がる宇宙にて親指は祈る メール、 ....
「毎日がspecial」震える文字ならぶ沈没船の航海日誌
足跡を追うと明るい扉の前で途切れた何処へ行ったの、透、
アンバランストランス繰り返す閃光の下でラストダンスを
....
{引用=
通過する――14時前の平日がトンネルの隅で俯いていた
14時は疎らで誰もが15時が来るのを知ってる。僕は迷子だ。
明日には会えない気がした。15時の駅で降りた足元の風、 ....
遠吠えの先端を夜に梳きこんで星にまぎれた魂ひとつ
恒星は渦巻く夜を抱きしめる 輝いている自覚はなしに
思い出が次の一歩の糧となる 今はもう亡きあの赤い星
....
使い切ることなく無くす消しゴムのように見失った第一話
赤、明滅、遅れて届くサイレンに共鳴をする喉笛の穴
干上がった水たまりは遺跡に似て踏みつけられず進めぬ真昼 ....
さようなら 将来に死に装束を着せたすべての心臓たちよ
他人から見れば大したこともなく第一話ばかり毎週流す
分岐点で失敗→リセット…そういえばセーブした場所なんて ....
逆立ちで見ている蝶がひらひらと空へと墜落してゆく絵画
音楽はすでに秒読み棺から指揮者は水となってこぼれる
ハイウェイを夜と名付けて人見知りばかりしている ....
西暦の未来分だけ過呼吸になるというなら(青い背中は、)
「ぼくという、きみというのも青までね」イヤフォン越しにゆらぐ終着
平坦な青にまみれる朝を見たあなたの声にふれてはさめる
....
焦点をぶれさせるため朝はある 指のすきまに宿る色彩
眠り明け 耳鳴り低く響くので 夢のはしから余白を殺す
むしられる前のつぼみに似たひとの、首をしずかに傾けるさま
唐突に遠さ ....
まぼろしか白夜の夢に君を抱く 鼓動ひととき重なりて、泣く
時を打つ鐘の音色も{ルビ夜=よ}の色も白くまどろみ繰り返す「恋」
白夜なら大地もぬくもり忘れずにいるから今宵は許しあお ....
さよならは青い背もたれ始発にて四月の夢を温めにいく
アンニュイな晴間が秘める春雷に片目をとじて君を待つ午後
ないしょです。星くず燃える屋根裏で子猫と愛し合った日々など
....
花束を車内いっぱい敷き詰めて水没してゆく春の陽とひと
野の花や少年少女の髪揺れる風泥棒が口笛吹けば
集まればいつしかはなれてしまう春むかしどうきゅうせいと来た海
....
はりつめて切れそうだから目を閉じてあんまり空気を吸わないでいる
ひとりごと、白くかたまれ歌になれ風に飛ばずにここに留まれ
鍵盤にひとつぶ落ちる(きん、たたーん)か ....
燃え上がる巨大な寝台列車から逃げ出すひとのいないやすらぎ
草上にレモンはひとつ落ちていてあなたのいない夜のはじまり
街中にひらく紫陽花5Fから観ている雨の降りしきる朝
....
この部屋の外を知らずに咲く花へ異国の水を注ぐ夕刻
蝶の背に針を刺すのを嫌がれば夜の間に逃げてしまうよ
不安だけ夢の中から持ち帰る見開いた目に焦げる黄昏
触れられるために生 ....
な
ん
だっ
て てる
なんだっ まがっ た に
てこう のむまっすぐ ....
{引用=その靴は履かないけれど捨てられないロボットの足音が聞こえる}
バイテクで創った人魚抱きかかえ海へ駆け落ちロボットの恋
風俗に生身の女消え果ててロボット小指を切り ....
このコインの桜をじっと見てください あなたはだんだん春になります
失踪は春の間に すれ違う人がよそ見をしているうちに
肩と肩近づいていくまだ雨はそうだね雪のにおいがするね
....
手のひらを組んで祈りのかたちなら無人の廃虚に風だけが舞う
街中にひかりあふれてもう星は絵本のなかでまたたくばかり
羽根はもう風にさらわれ剥き出しの骨をひろげるだけの桜木
....
砕くのをやめたフォーチュンクッキーと崩れ始めた空の気配と
花束は伏せられていて未だ眠り止まない六月病の花嫁
泥棒も蛇も来ないと知る今もやさしくひびく夜の口笛
耳鳴りの(雨 ....
{引用=まだまだ探す気ですか?
それより僕と踊りませんか?
井上陽水『夢の中へ』}
「明日も全世界の空にオーロラが架かるでしょう」と ....
眠り明け
耳鳴り低く響くので
夢のはしから余白を殺す
しゃらしゃらと林檎をむいてゆくひとの
まつげは綺羅とひかる音楽
唐突に遠さを知った花の色、あれは残響怖くないもの
....
きみが目を閉じても風は草原を夜空を海を旅してまはる
涸れてゆく泉にきみの瑠璃色の絶唱とわに不滅の予感
雨の駅、雨のバス停、雨の庭。きみが ....
ガリレオよ、宇宙をソラと呼ぶ人の名前を君は覚えているか
天地の神話が始まるまではあなたもわたしも素粒子だった
くるくると回る土星の輪っかから天体オペラが流れて ....
満天の振り子時計の催眠術 そしてあなたも地球を忘れ
寝る前に目覚まし時計を仕掛けなさい 冬眠なら苗床でしなさい
哲学者と詩人と恋人達のため囀り止まぬプラネタリウム
窓際の ....
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