輪郭だけをのこしたまま
あのひとがいなくなってしまったので
いつまでもわたしは
ひとりと半分のからだで過ごしている
明かりの消えた部屋で ひとり
アルコールランプに、火を点ける
ゆ ....
静寂の海
咲いて波間に
ほの白い影を落とす月
寄せる波は
真夏の喧騒
返す波は
秋の訪れを
それぞれに伝えて
移ろう季節を人知れず
見送り
迎える
久遠の光は ....
となりで眠る人間の腕は
すんなりまっすぐなかたちをしていて
それが私の首にぴったりはまるのが
とてもとても好きだと思った
絞められたって、いい
どの歌も
かたちのないものが ....
まだ幻になるには早すぎる夏
したたる汗を拭きながら
影を引きずってみる
昼下がり
気がつけば青信号は点滅し
横断歩道は白くアスファルトを削っている
そしてゆらりと
行き過ぎる ....
汗染みだらけの帽子を目深に被って
叩きつけるような陽射しの中
スーツ姿のサラリーマンの流れに逆らうように
足早に歩くあなたを見かけました
頬には汗が幾筋も流れ
まるで涙のように見えました
....
さみしいことを言わないで
抱きしめて
撫で撫でしてあげたくなるから
あまり甘えないで
おっぱいの間に抱き込んで
すりすり頬ずりしたくなるから
どうせいつか足蹴にして
行ってしまうくせに
子供が行きたがっていたはずの
遊園地に行った
子供が恐がるであろう乗り物
恐がらないであろう乗り物
そのひとつひとつに順序良く
そしてなるべく丁寧に
乗っていく
スタンプカードがたまった ....
満たされたい、なんてよくぼうは
あらたな渇望がこわいから口にだせない
口に出したって
かなうわけではないけれど
世渡り上手の生きじょうず
皮肉交じりの賞賛に傷ついたこともあったけど
た ....
夢のように美しく 哀しい
きらめく空中ブランコ
この手に掴めたもの
掴めなかったもの
きらめく空中ブランコ
この春と夏とを彩った
ときめきを見送る
きらめく 宙を舞う肢体
....
夏の陽に ふと振り向いた我が恋は
あまりに異質で けれど愛しい
この恋に 気づいたときは 手遅れで
命かけても あきらめられない
なんとなく 落ち込む夜 ....
空におちた種
芽がでるように
きせつが
ころがりだす
ひらいた
真っ青な夏の花、の小さな朝のこと
誰も忘れていたそれは、僕の机にあったらしくて
迷わずに僕に返還される
空に混ざれば見えなくなりそうな
僕の目は青に染まる
誰もいない部屋のこ ....
君の
悲しみが
夏の夕立だったら
いいのに
なんて
ボクは、
無責任で
開けっ放しの
窓際に
飲みかけの
ソーダ水
、と
読みかけの
本が
....
わたしは 生みの親だもの
おまえが憎いわけは ない
けれども わたしは 手を貸さない
さぁ
潔く
心地良く
羽ばたいて ゆけ
誤解も あるだろう
嫌悪 ....
記憶と想い出は
にていて、ときおり
くべつがつかなくなる
枝に懸かる
満月
いま、そこにあるのに
想い出のようで
あの 夜のように
そう凍るように美しい
ひゅうと、あしもと ....
てとらぽっとは海につながれて
夕日が燃えて琥珀に変わるのを
見ていた
さよなら
さよなら
さよなら
夏
駆け足で過ぎようとしている夏の
スカートの裾 ....
折角巡り会えたのに 行ってしまうんだね
まだ温もりはあるのに 肝心な音が聞えない
寒くないかな? もう 届かないんだね...
涙溜めて 震えながら 君の名前を呼ぶよ
はにかんでくれない 君 ....
汗をかきながら
ここまで来ました
もう少し先まで
行ってみようと思います
消えゆく色を目に映し
それぞれの夏は過ぎて行く
それは明け方病院からの訃報
病の床にあった父親は
生命を生きることから開放され
静かに去ったという
今を生き残るものたちは
悲しみはさておき
思い出話を必死にかき集めるが
肝 ....
九月になれば
誰かが語る
わたしは頷いてみる
そこに誰かはいない
誰かが語る
語り尽くせないほどたくさんの物語を
空には大きなノートが広がっている
鳥はそこに詩を描く
誰かが語る
....
ベッドの上に横たわり
胸の上で組まれた手が
呼吸に合わせて上下する
その規則的な動きを凝視し
眼を逸らすことが出来ない
肉厚のごろんとした手は
ずいぶん年老いてしまった
額の皺も ....
仕事帰りの溜息と
一緒に開ける玄関に
がさりと音立てるチラシ広告に隠れて
茶封筒がひとつ
独りよがりな祈りを
天使は聞き届けてくれたらしく
それは
ご褒美のように
届い ....
仕事帰りの自転車に乗り
ふらふらと重いペダルをこぐ私を
野球帽をかぶった男の子が追い抜いてゆく
あまりにもまっすぐ走る恐れを知らない背中
暗がりを照らす街灯の立つ角を曲がって消えた
早朝 ....
追いたいと思う心理を知り尽くし残り香すらも残さぬウサギ
いつもはね慎み深い私なの 貴方は特別“私を食べて”
「首を切れ!!」怒鳴るクィーン黙々と従うスペード恋は盲目
30 ....
からからん、と
コップの中で
氷が鳴るのを聞くたび
胸がきゅうぅっ、と
縮まるような気がする
あまりにも
切なくて儚げで
でもきりっ、とした
氷の音が
私の別れを
思い ....
蝉時雨 「恋し恋し」と大合唱
一度きりだといのちをこめて
ぼくらはあまりにも醜いから
醜いから誰かに会うことが恐くて
となりの惑星にさえまだ行く勇気がない
そんな醜いぼくらのせめてもの救いは
この星にうたがあるってことだ
どこを捜しても どこを ....
ながいあいだからっぽの
まどぎわの
たなの
うえの
すみっこに
おいてある
きんぎょばちの
なかで
おどっている
きみの
すがたを
すがたを
すがたを
....
わたしはあなたの声の中に家を建て
夏の風をちょっと吹き入れて
声を聞きながら
寝そべっている
わたしに用事はなかったのですが
あなたの方で用事があるらしく
声色をぴんと伸ばして
いそ ....
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