気がつけばいつも
君はそこに立っている
君は待つ
遠くに地鳴りを聞きながら
まだ秋には早い日
目の前をつうっと
赤とんぼが通り過ぎていく
同じ高さにある地平線を目指し
旅立っていっ ....
しあわせは
すりぬける風
ひとときのやすらぎ
明日のことは
わからない
しあわせは
すくいあげた水
たやすくこぼれるけれど
歩けるぶんだけ
あればいい
....
その岩は岩でしかない。
だからただ、そこに居る。
雨が降り、風が吹き、雪が積もり、雷が落ちても、
その岩は岩でしかない。
ただそこに居続ける。ちっぽけなふやけた岩だ ....
ぼくは というと
このからだに いま とどまっている
このからだが うごくことを やめたとき
ぼくは からだと ともに
たしかな きおくを おいて
どこへ つながってゆくのか
わか ....
帰り道に迷って
泣いてる子羊
あの空の羊雲は
違うよ
君の帰るところじゃない
涙を拭いてよく見てごらん
発見はいつも
ほんの足元からはじまるんだ
背伸びをしてると
ほんと ....
心のどこかで
青い空をうらんでいた
涼やかな風をにくんでいた
小鳥のさえずりがうとましく
夏の陽射しはまぶしすぎて
顔を上げることもできなかった
心のどこかで
ささくれは ....
私の
二本の足は
何のために
あるの
明日へ
歩き出すために
あるのなら
あなたが
明日に
存在することを
証明して
あなたが
未来にいないのなら
私は
歩みなど
止めて ....
恋人よ
その安らかな寝息をまもれるのか
わたしは
同じ所に{ルビ止=とど}まっていられない
飽和した
硬質な怠惰の
夏の深奥に
ワイシャツが青く干されていて
ノイズの走るレコードが ....
心のどこを探しても、
怒りも憎しみも憎悪もない。
それとは正反対の感情が、
海の様に広がって、凪を打っている。
愛情と愛しみと友情。
そして変わらぬ大切さ。
....
僕はきっと虫なのだと思うありふれた夜。
その理由はいくつかあるのだけど、つまりそれは虫であるはずもない僕の外見からは想像もつかない。たとえば横断歩道をわたろうとするとき、わき腹のあたりがむずむず ....
うすい月が窓までおりてきて
わたしの絶望を笑うのだった
からっぽになったところで出発だ
ほんとうの旅は いまからはじまる
なんて こともなげに言うのだった
黄昏が
輪郭を奪い
ネオンが灯りだした
町並みの真上
薄雲に隠れ
ほのかに
きょうの月
ああ
そうか
僕は君の
輝きばかりを追い求めて
ついにその形を
知ること ....
3匹目の獏は道端で
へたりこんでるところを拾った
小さな獏は虚弱体質で
夢はもちろん秘密も嘘も受け付けず
今にも消え入りそうに震えている
私は必死で噂とか言い訳とか ....
悪気などないのだから
だから尚更
優しいあなたは嘘つきになる
誰をも騙せなくて
自分を騙すことではじめて嘘つきになる
それがたとえ取り繕いの仮面であっても
優しいあなたは
....
ふわり、風
ふわり、髪
いつかの夏の真昼の丘で
風にそよいでいたきみのこと
ふわり、風
ふわり、髪
いつかの夏の真昼の丘で
きみの光が思い出に捕らわれそうで
....
あなたはわたしの何もかもを知らないし
わたしはあなたの何もかもを知らない
それでいいと思う
それでいいと思ったら
夏の柔らかい部分では
雨の方で都合をつけて
わたしとあなたを
水たま ....
雨ですねぇ
雨ですねぇ
夜中にふる雨は
なぜか
さわがしくてしずか
布団の中で
ほくほくときいているのに
冬の雨は
身にしみて
つめたあい音がす
る
ぽと ほと と ....
迷子のように
くもの雨だれから
ぬれる ぬれてゆくね
僕からも君からも
何もつないでいけるものが
ないような気がして
みしり、ぱちり、と
ただ おちているだけに
かぜに吹かれた ....
同じになったためしがない
あなたを
追いかけて
私は走る
不等号の
その向きに
あなたを追って
時を刻もう
光と影のこの世界の時を
光の記憶はうれしいことや楽しいことで
影の記憶は悲しいことや辛いことで
共に忘れず刻んでいこう
永い時を過ごしても色褪せないように
....
ボク
ボクは、僕といわない。
それは、シモベとよむから。
一羽の蝶が飛んでるよ
あなたとわたし
わたしは、あなたから生れた。
そして、母も父も
わたしにはいない ....
あなたが あのこと キス する あいだ
とおい むかしに たびをして いた
おとが すこし
きこえにくかった あのころ
まいくに きょうみが でたのは
そのこ ....
燃えない者 月曜日
エンジニアとビジネスマンの
区別は不要
新聞紙 火曜日
出たがる者とたたかれる者に
分けること
ダンボール 水曜日
ハコ乗りする息子のクルマに
箱入り娘を乗 ....
水に映る自分を
かきまぜてもかきまぜても
自分にもどる
砕けた背骨など
切り裂けた肉体など
コルセットで締め上げて
美しく着飾れば
微笑むのは容易い
私は、強い女
人々の喝采も
百万本の薔薇も
救えぬ魂
あなただけ ....
またきたね、匂う夏が、
むせかえる、草叢のにおいのなかで、
ぼくらは、呼吸をする
過剰な、色彩の、
この、感情の、渦に、巻かれ、
色をもたない、ぼくらは、
草色に、染められてく
....
こんなに苦しいのは
人間が氷のように
あとかたもなく
消えることができないから
こんなに悲しいのは
人間が泡のように
ある時パチンと
消えることができないから
ふしあわせになればいい
あなたの大事なヒトが
嘘つきで
ルーズで
借金持ちで
指名手配で
全部君のためだよって自分のためで
どんなつまらないミスにも言い訳がデフォルトで
甲斐性 ....
夏の情熱の裏側に
すらっと伸びた少年少女の
腕がつかみそこねた{ルビ目差=まなざし}を
冷たく崩れてゆく陽炎
囚われた脈動は
透けていく意識となって
{ルビ中性花=ちゅうせいか}の宙吊 ....
たおれるって
あきらめることでは なくて
おきあがれない こと
かよわなくなった こころ
暗く 憎しみばかりつのる時
灯は しずかに 病みを照らして
今は 夜
ただ ....
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