わたしは
ここから地上を見ている
大気で霞む昼にも
誰かが見つけてくれる
よく見れば味気ない天体であるのに
そんなに想うのは
わたしが最後の衛星だから
振り返らない
嘘の顔
嘘の ....
もう一度
その無数の紅く小さい花々を闇に咲かせたシャツの下に
酔って赤らんだ白い背中で
僕に{ルビ凭=もた}れてくれないか
なぜ
君の背中のぬくもりを
もっと素直に感じなかっ ....
ねぇ見て 不思議よね
こんなにちっちゃいのに
ちゃんと爪もあるのよ と
満ち足りた母親の顔で彼女は
小さなこぶしをを開いて見せる
アキアカネが飛び交う夕暮れに
生まれたから 茜
はい ....
泣きながら
見上げた雲は果てしなく
二人の影を映してる
空の青さが辛い日は
君のために歌を歌おう
さよならと
微笑む君の細い肩
翼が生えているようで
....
炊飯する
ごはんはきっと海苔で巻かれたい
秋刀魚焼いてみる
秋はその辺りでちりじり色つきはじめる
お米は海を知らない
秋刀魚は畝を知らない
けれどもぼくは知っている
そこでぼ ....
今朝の空は成層圏のもっと上
宇宙との境界あたりが
こんなにも蒼い
(空の蒼さがスペクトルの分散だというのは、科学者のいいわけ)
見上げすぎたせいか
眩暈でよろめいて
道に ....
愛の言葉は砂漠に棲む蛇の肌触り
ガラス片の透き通る
艶やかさを床に滑らせては
汀から細波へ
細波から白ウサギの飛び交う荒波に
感情の姿を次第に変えてゆく。
与えあう愛の軋み。
軋 ....
電池が切れた。
電池は切れていた。
もうずっと前から、
電池は切れていたんだ。
嘘を付いていた、
まだ動くから。
切れてない、
演技していた。
怒る ....
あんまり静かに
雨が降るものだから
傘を忘れて濡れている私は
霧吹きをくらった鈴虫だ
りーんりん、とも鳴かない
各駅停車の鉄道がはたらいている
ひとの数だけ
想いの数だけ
星空のなかで
各駅停車の鉄道がはたらいている
天文学には詳しくない僕たちだけれど
きれいだね
しあわせだね
このままでい ....
風が吹いておりました
風が吹いている日に飲む野菜ジュースは哲学の香りがするのです
そんな日は詩を書きたくはないのです
空があまりに無知なので
わたしの青春としての位置づけは
もう随分と前 ....
私という曲線をなぞる
薄っぺらな影が
このまま溶けてしまわないように
望んではいけない
夜を越えてしまった
私ははしたない女ではなかったかしら
未練がましい女ではなかったかしら
....
肩が
うっすらと重みを帯びて
雨だ
と
気がつきました
小雨と呼ぶのも気が引けるほど
遠慮がちな雫が
うっすらと
もちろん
冷たくはなくて
寒くもなくて
そのかわり少しだけ
....
弱っていると自分でわかるとき。
まだ大丈夫だと思える。
弱っていることがわからず、ひたすらがんばれるときが
実は一番怖いとき。
自分は大丈夫と思ってるとき。
寝ないでも平 ....
膝をたたみ 目を伏せて
思い出すのは
折りたたまれた空に見つけた夏のかけら
黒髪が 風を誘った雨上がり
わたし ここで猫が飼いたいの
....
揺れる枝さき
ほころぶ花びら
きみ、想う
いつか
その日が
きますように
夜ごと
空をみつめては
十五夜をまつ
きみ、想う
いつか
月のあかりも
届きますように
※写真は萩です
ライオンさんのやる気が
ゼロでしたので
わたしは舌打ちをしました
タイガーさまも同様でした
残念でした
同じくネコ科のクロヒョウくんは
動いていました
しかしなが ....
地底人さんの朝は早い。
日の昇る前から働いて、
せっせせっせと働いて、
日が暮れたって、
月が笑ったって、
まだ働く。
地底人さんは穴を掘る。
くる日もく ....
しどけない姿で
君はうっすらと頬を染め
あられもない姿で
君は左手を背もたれに預ける
横顔はうつらうつら
淫靡な夢に眼差しは宙を漂い
噎せ返る密林のざわめきは
VooDooの魔笛
....
ベンチに腰を下ろしたら
まるで恋人みたいな気分になって
不思議
人の通りの薄い時刻
けれども人がいない訳ではなくて
噴水を挟んだ向こうのベンチには
しっかりと
恋人た ....
かくすためだけの
キャミソールに飽きて
このごろは いつも
はだかで過ごしている
夏はまだ
わたしの腰の高さで停滞している
午後4時をすぎると
夕凪に 夏がとけてゆく
....
乳白色の
血を流す
草の名を忘れてしまい
野原にからだをうずめた
満天の星の鎮魂歌を
あすの朝の火に{ルビ焼=く}べて
壊れた時計の可燃率とともに眠る
忘却は
時を経るごとにや ....
強い信念があれば
幼子の指一本で
巨人を倒すことも出来る
二機の飛行機が
大国の象徴を滅ぼしたように
しかしその信念は歪んでいたために
多くの生命を無駄に奪い
....
やがてテントを夢色に染める
オルゴールの{ルビ音=ね}は消えゆき
客席に響く拍手の{ルビ渦=うず}におじぎするピエロ
幕が下りるとくるりと背を向け
舞台袖を降りて入った
楽屋の鏡の前に座り
....
あの日を境に
世界は明らかに下り坂に入ったんだ
たとえばさ
えらい人が逮捕される時ってあるでしょう?
あれね
時代劇の捕り物みたいに、突然いっせいに取り囲むってことは
実は ....
わたし、という曲線を
無謀な指が
掌が
少しの優しさも無くなぞる
書院窓の向うでは
秋の長夜の鈴虫が
交尾の羽音で月の影絵を滲ませて
こっちにきて
こっちにきて、と ....
ぽくぽくと砂埃の道を
踵の低い靴で歩く
道端にときおり現れる
柿の木の下で
風に吹かれて和みながら
寂れた雑貨店は
小さなオアシスのように見えた
冷蔵ケースのコーラの瓶の
くび ....
鳥が飛んでいる/秋の日に
鳥は何故に空を飛ぶのだろう/
わたしは呪縛のように生まれ/
そして大地から/
脱することができない/
飛行するものは全てきっと/
優しい何かで作られているに違 ....
あなたは
そこに
なにを
おもい
えがくのだろう
一夜の戯れ 夢や現つや
うす桃色の 紅のゆくへや
君の御手の うなじに触れなば
わびし心に 月の灯らむ
荒れ野の果ての 草木を分けて
あえかなる身に ....
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