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2016年3月21の吹雪
対
マイルス・デイビス
「Bye Bye Blackbird」
コーヒーの湯気と
古いポートレート
中心を射抜 ....
雀始巣
すずめはじめてすくう
佐藤さんちの玄関の
パンジーの寄せ植えから
オハヨウを拾い上げて
鈴木さんちのベランダの
古い室外機の裏側から
サビシイを探し出して
....
近づくこと
遠ざかること
暗い
音節の
蝶番
止まることを拒む
海の裾のドレープ
駆けあがる白い泡
絶えまなく
描き直され
拒みながら ....
空を渡る種の帯の下
あなたは何故暗い笑みを浮かべているのか
原のなかで
明るい風のなかで
無数の角と無数の羽が争い
多くが失われ多くが生まれた
双つの光が向かい ....
奥深く海底の熱水床
わたしが今呼吸をしている処
群がる白い蟹は
わたしであるための遺伝子を
鋏で千切りまた繋げる
染色体を失った肉体だが透明ではない
保護色を身に着けたわけでも ....
かなしみが河いっぱいにあふれて
よろこびも一緒にいる
まるで流し絵のように一緒にゆるやかに
色をなしてゆくもう痛みもない河畔に
ちょっと嘘つきでよゆうのない自分が居て
漢字変換ではも ....
コンビニエンスストアーは小遣いがあるときはぼくらのポケットだが
だいすきなしょーもないもの以外はたいがいなんでも売ってるみたいだ
いつも仕事に出かける時は装備の点検をして
会社でも点呼をうけ ....
予約時間に早すぎて
十数年ぶりに弘南堂書店へ往く
見慣れたブックオフとは違う
天井近くまで積まれた学術的古書に
おまえの目は泳いでいる
楽しい散策 わたしには
安い棚から掘り出した一冊は
....
空から
剥がれた薄皮が
ふうわり落ちてきて
森と街と人の
あらゆる隙間を
滲ませる
君から
届いたLINEが
妙に素っ気ないのが
どうでもよくなるくらい
僕の指と吐息は
....
懐かしいトムとジェリーを観ながら
人生スラップスティック論入りの缶チューハイで
ほろ酔いの仕事明けの朝
様々な宗教の勧誘やってくる
団地の一階だからな
ハッブル宇宙望遠鏡が25周年を ....
三月の冷たい空
人のない荒野のへりに
胸を反らして 風を呼んでみた
新たな扉が鳴るかと見えたが
風はちっとも答えなかった
すぐに答えは
あると思った
脇腹の かすかな痛み
だが
....
籠から溢れそうな
熟れた果実の
すこし傷んだ
あまい匂い
視線は蠅
めまい/匂い/めまい
スケッチしながら
溺れている
出口のない部屋
ぬるい潮が満ちて
鋭い線が
削り盗り
移 ....
風の幕をそっと空へ還すように
温かく見守る 吹いてくる知らせ
風は笛を吹く
物心つく頃には耳にできない 笛の讃頌
風の演奏誘うような 最前線
朱華色
鬱金色
それに
....
桃始笑
ももはじめてさく
コートを脱いだら
沈黙していた鎖骨が
独り語りを始める
ポケットから出た
あてどない指先が
止まり木を探している
音符を思い出した
爪先 ....
空っぽの硝子の鳥籠に
早春の光が淡く虹色に差す
そうすると
わたしはうすい水色の服を着たくなる
――籠の外では生きられない
華奢ないきものだったはずなのに
でも囀りは ....
土手の手つかずの雪が老いて
カラスがなにやら啄んでいる
穏やかな冷気に衣服の戸惑い
惜しめば儚く望めば遠く声は
なにも残さないただ揺らした
言葉が追う死者を追うように
セー ....
朝
街はすみずみまで霧に覆われていた
平等に満ちている粒は
白いサプリメント
普段は透明が満ちていて
遠くまで見渡せた
海に点在する小さな島や
船が描いてゆく波のような道までも
....
連日
本曇りの弥生が続いている
気温はおとなしくなったのだが
体温は気ままにとはゆかない
卒寿の身では
冬装束で身構え続けている
遠くで鴉がうなっている
森の息使いは まだ
....
とぼとぼと歩く駅からの道
辺りはすっかりと暗くなり
私の大きな背中は闇夜に消えて行く
道端の草木はもう姿を現さない
自然は朝の生き物だ
若しくは昼間に呼吸する天然物だ
道路には車が行き ....
夕暮れの空は
少し甘めのコーディアル
濁り踏み荒らされた雪解けの道に
照り返し
闇雲な胸騒ぎも
無知な喧噪も
先鋭化した矛盾の
せっかくの露呈も
ほんのり澄んだ彩で
やさしく ....
街はずれからぬけだして
つれづれに遠望してみる
(卒寿となったおひとりさま)
はてしないあおいそらと
乱舞しているしろいくもを
そぅだ・・・・・いつの日にか
....
音がしない部屋で
ボリュームをさらに上げた
テレビの中で
またアナタを思う
暗闇を引き裂く滑稽な光は
私がまた一人なんだと
嗤っていく
さよならをしないとダメだと決めたのは
記憶も ....
どろうみから
タって
ミせて
あなたはあなたを
ミて
イたり
ニたり
《シ》ナいから
《シ》して《シ》舞う
カのふ ....
忘れた?
それとも覚えている?
あちこちで跳躍する囁きは
たったひとつのおぞましい現実を
僕らの前に突きつける
朝もやの中
最初の電車が走り抜ける瞬間を狙って
血 ....
笑っている或は微笑んでいるきみを
僕は安心して受けとめるだろう
ボディランゲージとして
でもひとりになったときの
君の顔をしらないんだ
あっけらかんとしてあの時は不倫しててね
と皆 ....
小さな火種はやがて
大きく育っておもいのほか
はげしく燃えるものだから
たじろぎ
あとずさりしたボクを
キミはすこし笑った
よく燃えるね
木と紙でできた家だからね
それに……
怒 ....
夕餉が終わると皿を洗い
油や醤油で汚れた台所を
布巾でぬぐう
鍋も皿ももとの位置に戻し
静けさと落ち着きを取り戻す
風呂を ....
道は山の中
ふざけたようにあそぶように
きれぎれにもぐるトンネルを
もぐろうとする粉雪
いつだったか春一番が吹いたのが 嘘みたい
お外は梅が咲いてたよね おまけに
小鳥も鳴いていた ....
風が突っ走って往く
いつか追い越して往った風たちが また
地吹雪は踊る 白いベールを靡かせて
渦巻いては解かれ素早くさらわれる
終わりなく交わされる遠吠え
異言の霊歌 あるいはレクイエム
....
蛇口が
みずうみにつながっているように
蜜柑は
五月の空へつながっている
かぐわしい白い花
まぶしい光に
雨だれに
ゆっくりと過ぎてゆく雲に
蜜柑をむくと
その皮は
しっとりと ....
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