すべてのおすすめ
一枚の写真が燃えている
黒い鉄の花びらの上
ひらめく炎をその身にまとい
そりかえる
水蒸気と煤があいまって
白くにごった煙とともに
封じられた時間も漏れ出して
霧散する
平面の中の奥 ....
この部屋で
あなたの魂の息に触れる
この部屋で
魂の息に触れられる距離で
この部屋の中で
あなたとあなたの横たわるあなたのあなたの体で
触れられる
この距 ....
原初のひとしずく
ささやきのように生まれ
岩肌の乳房
地衣類の産着
山あいを渡る風も目覚めさせないように
産毛を揺らす
静かな吐息
うつらうつら
千々のひかりにあやされながら
死への ....
風には色がない
想いにはかたちがない
自身のすべてを解ってもいないくせに
何かをひとに伝えようとこころみるも
手応えひとつ得られず
脱け殻となって
風化する前にもうちょっと
生き ....
そうや、おらんかったね
自分以外の人がいる居間は暖かかった
冷えたこたつの中で丸く、眠るその影に小さく蹴りを入れても
明日もそうだろうね、言い訳することもないよ
灯油を乗せた車の音楽が ....
ある日 妻が疲れていたので私が食器を洗った しかし
次の日 録画をして週末にまとめて見るのを控えて
欲しい と言われた 妻にはそんな時間ないとのこと
しかし アメトーークだけは譲れないーー
テ ....
腕ぐみで 冥想の真似をして
過ぎた心情を つまんでみても
もはや 始まらないが どうしても
のどにつまるのは 青い年に生まれた
つぶやきの苦さ ばかり
....
意図は回りを濡らしてしまう
意味へと上手く収まり切れず
ことばは未満の盃
発しては 少しだけ 欺かれ
揺るがないものを前に
自らの揺らぎに幻惑されるのか
受けとめては傾ける 刹 ....
毛虫の襟巻をした男が蝸牛の殻に腰をかけている
鼻にツンとくる冷気
上着の内ポケットを弄って
煙草――かと思えば
むかし別れた恋人の
薬指の骨ひとつ
飴色の思い出を
こころなしやさしく
....
春の桜のように
ほほえみあふれる人生を
夏の向日葵のように
元気で明るい人生を
秋のコスモスのように
謙虚な人生を
冬の椿のように
優美な人生を
糖蜜工場が爆発したことによって
甘い蜜たちが
静かに街を流れ出しました
その粘度たるや
もう人の手にはおえない類のものです
アスファルトの上の蜜はそのまま冷えて固いかさぶたとなり
土の上の ....
口をすぼめる
とても内気でおとなしいあなた
優しい人だ
誰のことも悪く言わない
辛さを耐え
コアラのような思い
お母さんの温かいおなか
地球を抱擁するような人
苛烈な意見を聞いているの ....
ぼくの飼い主さんに二人目の赤ちゃんが生まれて
ぼくは今かまってもらえない
この前ぼくがうんちした時 溜息つかれた
まぁ溜息出ようがトイレきれいにしてくれれば
問題はないけれど
ぼ ....
真冬の朝
道を歩いていると
飛べなくなった小鳥を目にすることがある
数年に一度
いつも忘れた頃だ
そっと捕まえ
コートの内ポケットへ忍ばせる
少しおくと
飛べるようになって
やわらか ....
――その右手の残酷は、あの左手の歓びである。
ロマンティックな挽き肉
きみは、いま静かに床について居て
もうすぐ死んでしまうのだと、してみよう。でも、悪く思わ ....
漲る華は
漲る風は
タッタカタッタカタッタカタッタカ・・・・・・
燦の瞬き 一太刀の風 古から辿り着いた華の馨り
仰ぎは空
鑑の空
キーキーキーキーキーキーキ ....
届けたい想いを腕の中で
温める仕草は天使みたいで
何も言わずに微笑んでいるのは
声に出したら消えてしまうから
愛は未完の方が美しい
胎内の音は覚えていられないね
夜明けの前のカラスの声も
皮膚の下の七割の水は今も轟々と音を立てているというのに
わたしたちの耳は気づかない
潮で錆びた看板や港町の工場や
点在する小さ ....
2011年
幻想とイマジネーションは海にのまれていった
言葉は
誰も
救わなかった
ひたすらネットに作品を作り発表していた人は
減少し
わかりやすい言葉は
心を揺らさない事 ....
爪だけを照らす
蒼い光
ひとつの指に
拡がる荒れ野
星の数だけ
痛みは冷える
砕けた冠
轟きは増す
二つの視線で
つまむ宇宙
それぞれの目の
....
木製の昼の頭蓋の
硬さとおなじだけ
いつまでも揺蕩っていたい
すこしだけ曲げた
指さきと指さきとで
共有しあう
些細な、ひとひらの花弁をひとつの接点として
子供がつくった水色のゼリィーの ....
冬の光に抱かれて
こくり と 眠るように
夢の浅瀬を渡るように
用事はすっかり忘れ
身ひとつ
見知らぬ風景
懐かしい街を往くかのように
身を切る冷たさ
かじかむこころ魅かれるま ....
糸をつむぐ
それはかつて
繭だったものたち
それを産んだものは蚕という虫
それを育んだものは桑の葉
それを繁らせたものは桑の木
ふるさとを発つ時
小さなかばんに
宮沢賢治の詩集と
....
時おり止まり
時おり流れる時間の上を
雪と羽はすぎてゆく
星に棘に傷つきながら
雪夜の森に星雲が降り
倒れた霧の塔にまたたき
朝の月 昼の月のふちどりが
消え ....
過ぎていった季節を常夜灯のように思う
わたしは揺り椅子の二つの脚に停留の錨を下ろし
アンテナの代わりに
机のうえの海に花瓶と丈高い花を置いて
自分のなかの未知なる惑星を探りだす
(わたしは丈 ....
祈りと願いに摩耗した
己の偶像が神秘の面持ちを失くす頃
始めて冬の野へ迷い出た子猫は瞳を糸屑にして
柔らかくたわみながら落下する鳥を追った
薄く濁った空をゆっくりと
螺旋 ....
あなたは言った。
「君の返事は何処?」
1/エクストラ・でぃめんしょん。
わからない、わからない、わからない、わからない、
出ない、虹が、部屋から、出てこない、の、メトロノーム、
....
離れると 音もなく
落ちた 花びらは
ひとつひとつ 冷たく発光して
私たちは 消失のただなかで
不釣り合いな 接続詞を
あてがい続ける
たくさんの 繊細な傷を
指でなぞり 再生して
....
Ⅰ
私は人間ではない
生物でさえない
生きているのに
Ⅱ
私は一本の直線だった
貴方のことを知りたくて三角形となった
私のことを知りたくて四角形になった
いくら角が増えても角(つの ....
わたしはもう
石になってしまいました
かつてわたしにも
水だった時代があり
白濁した粘質の水となり
やがて泥となり
固まっていったのです
土として長年を過ごし
生き物をすまわせもし
....
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47