やっと会えた母は、とても穏やかな顔をして眠っていた
真新しい白装束 解剖の痕跡も知らず
すでに身体は綺麗に浄められて
「コロっと死にたい」
いつもの口癖通り、突然の呆気ない最後だった

入 ....
地図を広げて電話を片手に話している
相手は叔父だ
ある地名の場所がわからないという
三文字の漢字で表す地名
「興味の興、という字がつくの?何?聞き取れないの?」
歳老いた叔父の声はしゃがれ、 ....
シュッと宙に向けて突き出した切っ先が
目に飛び込んできた
暗い展示室にひときわ輝く一振り
研ぎ澄まされた刀身が
強いスポットライトを跳ね返して
銀色の光を放っている


思わず吸い込ま ....
向き合った途端、一瞬たじろいでしまった
あまりにも真っ直ぐに見つめられて
ファインダー越しに覗いた
淡いピンクの大輪


千重咲きの奥に守られている花芯は
何か語りた気に
唇をうすくほ ....
私のDNAの塩基配列に
「ケ・セラ・セラ」という
遺伝子情報が組み込まれている
膨大な螺旋構造の宇宙には
母から降ってきた星屑が潜んでいる


突然の父の入院で
しばらくぶりに会った母 ....
「水際」


水際、を考える。

ボーダーラインを越したり、引いたり。

波打ち際の刹那。

それは躊躇するもどかしさにも似て。

繰り返し訪れる人生の選択にもなぞらえる。

 ....
久しぶりにジブリ映画を映画館で観た。この夏封切りの
「コクリコ坂から」。急遽予定が変更になり、時間に余裕
が出来たからだ。当初は他の洋画を観るつもりだったが、
ちょうど良い時間帯のものがなく、期 ....
いま、立方体の中で手足を折り曲げている
きっちり蓋を閉めて 一分の隙もないように
それでもはみ出しまう「私」が漏れ出て
側面を綴りながら、ゆっくり滴っていく


シジン、と名乗っているうち ....
走るトリル
軽快な鍵盤の連打を聴くうちに
視界が開けて広大な一本の道が現れる
どこまでも追いかけてくるスケール
トップスピードの旋律に
併走したくて意識を集中させる
Gコードを ....
「リサイシャです。」 
突然の呼びかけにハッと顔を上げる
カウンター越しにその女性は佇んでいた 
小さな女の子を二人連れている 
一瞬 何と声をかけようか戸惑う


胸の底に沈殿している ....
声高に叫べないから
文字の裏にスルリと隠す
ほとばしる感情をメタファーにゆだねて
苦く噛みしめる思いをほどいて昇華していく


そうやって幾つ言葉を散らしてきたのだろうか


押し黙 ....
上澄みの中を泳いでいた
透明ではなく薄く白濁した温い水の中を
紅い尾鰭をゆらゆら振って
指差すふくみ笑いを払い退けて
腹の下に感じる見えない水底の冷たさに慄きながら
ゆるんだ流れに身をまかせ ....
私がよく行くインポート専門のブティックがある。
ショップ名は「armoire caprice」
(アーモワール・カプリス)
もしかしたら御記憶の方もいらっしゃるかもしれないが、
以前この現代詩 ....
琥珀色のサウンドトラックが、
頭蓋骨の内側を濡らしていく
すっかり皺が減り、ツルンとした私の大脳皮質


鼓膜までねじこむイヤホンや
タイムラインを流れる電子文字で
刻まれたものが薄れ、 ....
温められた皿が食卓に置かれている
「私を彩って。そして汚して…。」と
上気した白さで語りかけてくる
アンティパストでは物足りないと言いたげな光沢で
ゆるやかなフォルムの輪郭を際立たせている
 ....
<ブラッディ・マリ―>


ブラッディ・マリーと君の唇の色が同じだから、

どちらに口をつけようか迷っている。

君は何のためらいもなく赤い液体を飲み干す。

重なったその色が乾く前 ....
ずっと寄りかかっていた
揺るぎない背もたれとして安心しきって
あなたが感じている重たさも
慈愛で受け入れて
融かしてくれているのだと思っていた


いま、青に導かれて去ろうとしている
 ....
「貴女はご自分に酔っていらっしゃるのです」


思いがけない言葉に顔を上げた
彼は静かに私を見つめて煙草に火をつけた


(どういうこと?)


いぶかしげな眼差しの私に彼 ....
チャペルの鐘の音 
ハレルヤのゴスペルの響き


祝福の音色を浴びてキラキラ輝くのは
淡いパステル色の金平糖
小さな羽根を羽ばたかせ
あなたのキューピッドが運んでくる。


甘い砂 ....
また背中にGがかかる
いや、重力ではなく塊りが押して圧迫している
左の肩甲骨の上に乗るコンフュージョン
緊張が高まり首筋まで凝ってくる
あまりの重さに頭の中で
コットンフラワーが咲き乱れ
 ....
それは忽然と現れた。
スパニッシュブルーの空を突き刺してそびえ建つ、
研ぎ澄まされた円錐形のオブジェ。
傾斜角75度の強い意志が天を貫いている。
指し示す先はどこまでも高く
その先端から曖昧 ....
凝縮された思いが風船のように膨張して、弾けた飛沫が言葉になった。
そんな鮮烈なイメージが浮かんだ。それほど思わぬ角度から言葉が繰り出してくる。
凡庸に収まらない突き抜けた斬新さが、この詩集の魅力だ ....
駆け上がったスケールの天辺で
頭にティアラを乗せられた途端
3オクターブ下の森へと転がり落ちた
黒鍵に打たれた身体に赤い痣が散る
地面に投げ出された
ティアラの真直ぐで静謐な輝きは
脆い影 ....
黒ずんだ木の床にそっと頬をよせる
インクと機械油の匂いが染みついた床は
使いこまれた年月を
なめらかな感触でつたえてくる


古い印刷工場をリノベーションしたと
誰かが言ってたっけ
そ ....
厚い一枚板のカウンターに2杯目のカクテルが運ばれてくる。   
君はウエイターに軽く会釈すると、すぐグラスに口をつけた。
鮮やかなライムグリーンのカクテル。グラスのふちについた唇
のグロスの跡を ....
 詩集の表紙には闇夜に浮かぶ舟の漁火が、誘導するようにふわりと灯り、
誘われるまま詩集を開くと、霧の中に佇む一艘の小舟の写真が出迎えていた。
山中以都子さんの詩集『水奏』は、もうここから始まってい ....
著者二十代で刊行した第一詩集から第七詩集まで、
半世紀に渡る鋭利な感性の詩編とエッセイからなる一冊である。
この凝縮した水野ひかる氏の世界は、
幾重に年月を経ようとも衰えない「女性力」を感じる。 ....
感性は年齢に捕われない。あくまでも自由だ。そんな当たり前のことを
あらためて認識させられる、そんな印象を持った。
あとがきには「八十四回目の春を迎えて」と記されている。勿論、高齢
に達っしている ....
 ページをめくると、150にも及ぶ短編が並んだ入り口に立たされる。
題名はなく整然と数字が打たれた下に展開される世界は、まるでエッシャーの騙し絵に迷いこんだようだ。

5 女の正体が実は額縁で/ ....
それは黒い鍵爪だった
重く垂れた空からスッと湿った宙を引っ掻いては
狡猾に隠れる
くり返される蹂躙
積乱雲はメデュ―サの含み笑いの唇をふちどり
うすく開いた


生々しいクレバスを曝け ....
渡 ひろこ(144)
タイトル カテゴリ Point 日付
最後の紅自由詩32*13/12/2 20:02
午前三時自由詩28*12/11/14 19:16
斬る自由詩21*12/10/10 19:38
乙女椿自由詩24*12/7/2 20:01
ケ・セラ・セラ自由詩39*12/4/9 19:30
水際携帯写真+ ...22*12/1/17 19:48
「コクリコ坂から」を見て散文(批評 ...14*11/11/14 22:13
立方体自由詩29+*11/10/17 19:23
ジャズ・ピアノ自由詩19*11/9/1 21:43
罹災者自由詩24*11/7/25 20:18
囀り自由詩21*11/5/12 21:03
紅い尾鰭自由詩20*11/4/13 20:07
クローゼットの秘密自由詩17*11/2/15 19:19
Days of Wine and Roses自由詩21*11/1/19 19:57
メインディッシュ自由詩19*10/12/13 20:29
カクテルのための三篇自由詩14*10/11/9 22:07
GRADUATION自由詩19*10/10/12 19:50
恋愛遊戯自由詩13*10/9/27 23:54
sweet wedding sweets(祝福の歌)自由詩21*10/9/21 22:06
重力加速度自由詩19*10/8/17 20:46
renovation自由詩21*10/6/29 21:19
ブリングル御田詩集『次 曲がります』散文(批評 ...6*10/5/28 19:31
armoire caprice自由詩25*10/5/14 19:38
かんばんむすめ自由詩23*10/2/15 21:06
ギムレットには早すぎる自由詩13*10/2/2 19:21
山中以都子詩集『水奏』散文(批評 ...5*10/1/5 19:26
新・日本現代詩文庫59『水野ひかる詩集』散文(批評 ...9*09/10/7 21:51
詩集 『見ることから』 進 一男散文(批評 ...4*09/9/28 21:12
詩集『月光苑』大原鮎美散文(批評 ...6*09/9/14 22:23
トルネード・トラジェディ自由詩13*09/8/19 20:02

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