すっかり風は乾いてきた
 めっきり光はにぶってきた
はっきりヒヨドリは告げにきた
     節気と気温と気炎とを

遠くでショベルカーが唸っている
     近くで木魚が称えている
  ....
             ヒトガウマレタ
            ジブンモウマレタ
              ヒトガシンダ
       ジブンモヤガテシヌノダロウ
  テレビハマイニチノヨ ....
   土砂降りは はげしいリグレットの雨
    腐敗臭は つめたいカルマのヘドロ
 頼りの杖だけが 骨折をわずかにささえる

   胸のうちで 燃やすものがなくなった
 胸の底から 萌えあ ....
  自律訓練ではない 瞑想でもない
      単に 老化が焦げついて
       (まどろみとは異質な)
  うたたねが悪癖となっただけ の
         おひとりさま だ

   ....
     青い春に 赤いゆめを破られた
白い秋に 黒いまぼろしを見せつけられた
   こころの堂々巡りを繰り返している
         老耄のおひとりさまょ
   終着駅のネオンが点滅してる ....
 時は静かに過ぎる葬列のようだ
           ─アプリネール─

 ミルキーウエイの線路にそっての
おひとりさまの老耄が 旅路では
 ゆめの新幹線から 鄙びた従来線の終点へ ....
     しらはえの囁きで「生」を感じ
  ゲリラ豪雨の喚きで「老」を知らされ
    気圧の変わり身で「病」をおぼえ
木漏れ日のしわぶきで「死」におののいた
           あの青い年 ....
          IEでまた知った
  名のあるひとが鬼籍に入った と
    空洞にしてもちろん名もない
      おいらの齢(よわい)より
       五年も十年も若いのに
  な ....
    狂った「風」と乱れた「光」で
   市内の公園から黄ない声が消えた
  沈む「時」と浮かぶ「空」の波紋で
  郊外の竹藪から衣擦れの音も去った
  ただ老木のかげがちらつくばかりで
 ....
遥かに漂う四次元よ
         聴いておくれ
もう おいらの青い春は
        赤い夏は
         白い秋さえも
めぐりめぐって 戻っては呉れず
ただ汚血に淀んでばかり ....
幸福な人は詩を書くな─故黒田三郎

(外出に杖での独り歩きも無理となり)
室内で皇帝ペンギンの歩みを真似ている
哀れな老耄はおひとりさま

全半生のカルマが絡まり
リモースにせめられおじ ....
丘に控えた公団住宅を取り巻く
 風は脈を沈めていた
  光は息を殺していた
盆踊りのやぐらを無視するように

   七階の窓からは
敷き布団を叩く音が重たげに─
   四階の窓からは
 ....
            なぜだろう?
終着駅名と終着時刻をアナウンスしない
   ミルキーウエイ鉄道の専務車掌は

    ゆめをまぼろしにしないためか
   誓願と期待を反古にしないためか ....
       伸びざかりの庭木にも負けず
        ぺんぺん草も群叢となって
       素っ裸の夏をオードしている
        セミのスケルツォに応えて

     なのに 老 ....
 散策の道なかで遭遇してしまった
  街はずれの竹藪から立ち昇った
    にびいろの烽火に─それは
  宿命をあざ笑うタナトスなのか
  四次元をのろうデーモンなのか
           ....
      朝刊に折りこまれた
     それは裏面が真っ白な
    パチンコ屋のチラシ広告
(メモ用紙にと気をきかせたのか)
            そして
     無聊に明け暮れてい ....
鳥のように飛翔できるつばさがない
   けもののように駆ける脚力はない
魚のように遊泳できる尾びれもない
無為無能の俺はやっといま気がついた
 ....
──平均余命だけがにやにやしている──  

     瀟洒な閑静といえば聞こえはいいが
  実態は里山的過疎というほうがぴったりの
        いろつやまだらな丘の街並み
       ....
去る日──
 虚空は躁病となって
  ルビーの文月が真夏日となった

風と光と雨と土は
 ぺんぺん草だけを増長させた
  趣きの貧相なおらが裏庭一面に

あゝ 網戸をすりぬけて匂ってく ....
    なぜか ほほえんではくれない
   日当たりの悪い 我が家の庭隅は
   色艶に乏しくなった 紫陽花一株
     水無月の梅雨空となったのに
 葉っぱばかり大手を広げているばかり
 ....
  口喧嘩はない 無駄話さえもない 
 老耄はおひとりさまのにぶい暮らし
 庭隅のどうだんつつじは色艶褪せて
   早苗月の倦怠を匂わせ漂わせる

    独り言は虚しげにこだまする

 ....
          クロノスの深淵で
      ドラ声でもって叫んでいる
   黒い経絡が白いメガホンを片手に

     枯れ木に花のおひとりさまょ
ここが痛い そこが締め付けられる と ....
青い時を濡らすように
 赤い空を泣かすように
  白い風を脅かすように
   黒い光をなだめるように
   (梅雨の雫が一滴また一滴)
   ベランダの樋からの滴りを
老いたおひとりさまは ....
  単調なのに新鮮なさざ波の囁きは 
      つつじが丘には届かない
        海に面した街なのに

  もたつく足取りに発破を仕掛けて
おらは陰のないアベニューをふらつく
減価 ....
雪雲の奥から 聞いたことが
在るような ないような
古い半鐘に似たエコーが冷たく漏れて
丘の家並みを隈なく履いている

老残がしがみついている
独り暮らしの感知 感触 感性
それは それ ....
 その使命は知らないだろう
風と光に甘えながら柿の小枝で
休みなく首を傾げ続けている子雀たち
ニンゲンを脅すように無闇とわめく
グロテスクなハシブトガラス
ときには思ひついたように唸りだす
 ....
入院中の相部屋で
天井の淡い模様をながめながら
暇を持て余していたおいらにとって
それは それは 照れ臭かった
   担当の女性看護師から
   米寿 おめでとうございます と言われ
   ....
          整形の外来受診のたびに
    Drは和顔でささやかれるようになった
    「もぅ修田さんの齢になれば・・・」
        (現状維持はやむを得ないと)
    だか ....
   歩き慣れたプロムナードの果て
靄のかかった森をながめて立ち止まる
   杖を支えにねこぜをそらして─
     林の奥は冷たいつむじ風と
リグレットのトルソが潜んでいるのか
   木立 ....
      おれのねこぜに住みついたもの
    それは無能のうろこと無力のかけら
                 そして
     おれの筋(すじ)に貼りついたもの
       それが悔 ....
信天翁(638)
タイトル カテゴリ Point 日付
街はずれの譫言 五自由詩314/10/18 10:10
グレーの黙示①自由詩2*14/10/17 22:38
熾きをみつめて 五自由詩214/10/11 9:26
ケロイドもわすれて⑩自由詩114/10/5 11:40
残された時空 ⑩自由詩414/9/26 20:40
片影に怯えて(七)自由詩214/9/20 20:30
隻影を求めて(三)自由詩3*14/9/12 20:23
片影におびえて(六)自由詩314/9/8 20:23
片影に怯えて 五自由詩114/9/6 20:20
ケロイドも忘れて 七自由詩614/8/29 19:54
負の自衛論①自由詩214/8/23 9:15
隻影を落として自由詩314/8/15 20:30
残された時空 四自由詩214/8/1 20:19
丘の街で ⑩自由詩414/7/27 9:05
風も息を潜めて自由詩214/7/25 20:07
折り紙自由詩714/7/18 20:32
残された時空(一)自由詩214/7/12 19:54
丘の街で(四)自由詩314/7/6 9:14
残された時空自由詩414/7/5 8:35
丘の街で (三)自由詩314/6/27 21:14
折畳まれた日録 (十)自由詩214/6/20 20:37
錆ついた風見鶏 十自由詩114/6/13 21:05
錆ついた風見鶏 八自由詩314/6/13 19:59
白い狼煙 九自由詩414/6/7 22:03
丘の街で自由詩1*14/6/6 19:54
グレーの黙示 五自由詩214/5/30 20:45
白い狼煙 八自由詩714/5/24 11:43
折畳まれた日録 八    自由詩214/5/24 10:30
白い狼煙 五自由詩214/5/17 21:44
錆ついた風見鶏 四自由詩314/5/17 21:30

Home 戻る 最新へ 次へ
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 
0.07sec.