カメラを床に投げつけるあの人の、フィルムにうつる男の子は遠くへ猫を買いに行きました。
　

１２月のとある日に、ソリに乗ったお爺さんがおもちゃを盗みにくるけど、それは経費で落ちるから見てみぬふりをしろ、と玩具メーカーの社長に耳打ちされた。
　

改札でキップのいい駅員に仁義を切られる。
　

空から海が降り始め、世界はようやく裏返り始める。
　

笑顔で今日も彼の家に行く彼女が、今日も笑いながらまず抱きつくのだけど、いつもと違うのは、彼女の右手にナイフが握られていて、彼はそれを知りながら今日も笑って彼女を抱きしめている。
　

口から嘘のかたまりをゴボゴボと吐き出す競争で、１位の母と２位のわたしは、表彰台の上で「とても感激です」などとコメントを述べたあと、目からコンタクトレンズをぽろぽろと落として、ファンから更に祝福された。
　

愛妻家の男が丹念に化粧をする妻の横で鼻をひくつかせながら飯を旨そうに食っている。
　

　本屋さんの袋に入っていた結婚紹介会社に登録したもの同士として会った二人は、お互いが少女時代少年時代に憧れた話が『賢者の贈り物』だったという話で盛りあがりめでたく結婚しましたが、新婚最初のクリスマスプレゼントはイヴに仲良く外出し、一緒にお店に入って買ってあげました。
　

マリーという少女は二人いるが、片方は占いがとても好きで、今は裕福な暮らしをしており、片方は奴隷として13ドルの値をつけられ、姓名判断を全く信じなくなった。
　

誰もが手をつないだ暖かさを覚えているので、その街では手袋が１つも売れない。
　

お風呂上りに、浴槽の栓を抜いたら、ブクブクブクとおじさんの顔をした妖精が出てきて、｢願いを1つだけ叶えてやる｣と言ったが、何にしようか考えているうちに、お湯と一緒に流されていった。
　

裁判官に昼食を持って行くと「なんだね、これは？」と一つ一つ説明を求められ、最後にはまた明日同じものを持ってくるようにと指示される。
　

そのすべり台は長く、すべる所にはカラフルなころころがついていて、気持ちよくすべっていたらすべり台が大きなゆるやかな山になってしまって、ころころがコロコロコロというので私は登れず、途方にくれてしまったが、誰かがすべり台から降りなさいと教えてくれた。
　

右手でパンに醤油をかけながら、あなたが好きよ、という女と、左手でジャムをご飯にかけながら、あながた嫌いよ、という女がいて、女同士でじゃんけんをさせると、二人とも右手を出す。
　

急行のつもりが特急に乗っていて、目的の駅を通過しているのにポーカーフェイスを決め込んでいる俺、もしくはその他数名を乗せて走る東急東横線の静けさに酔う夜。
　

Take me out of the rain don't you?
　

帰りのバスの中は案外寒いのにも関わらず窓ガラスは曇り、優先席のおばあちゃんが誰かの演歌を口ずさむ、午後７時３８分。
　

ロクな吹聴がない新宿なので火曜午後のマメ子は散々顔で１時間の彷徨を「チョー無駄」といいながら白けた空はがっかりして曇りの光化学に眩しかった。
　

大事なテディベアは手術ごっこに使われて、女の子は涙を流しながら片手に包丁を、片手に裁ちばさみを、助手にはボロボロのテディベアを引き連れた。
　

ひどい裏切りにあったパン屋の主人が、朝一番で焼きあげたパンを店先で雨ざらしにしている。
　

昔、村で、ある男が、皆の前で大蛇（おろち）の踊りを始めたのだけれど、男がいかに上手く踊ろうとしても大蛇になれる訳ではなく、ただ地面の上で両手両足をそろえのばして、ただくねくね動き回るだけで、砂にまみれ汗や血で埃だらけになり、ただ無心にくねくねと動いていると、初めは周りで皆わいわいと騒いで楽しんでいたのが次第にもうやめろとか気持ちわるいとか言い始め中には石をぶつける者もいたが、それでも男は無心にくねくねと踊り続けていると、夜も明けようとする頃、周りには誰もいなくなったところに、一人の少女が近づいてきて、あなたの踊りにこの花をささげますと言って差し出した花が、森の奥深くに咲く空の青よりもっと澄んだ美しい色の花だったので、男は何故か涙が止まらず、やっと赦されたような気がしたのだった。
　

私が不平不満を言うたびに、自己保身の罪のための犠牲に何かが死ぬ気がしたので、私がちいさな愚痴をこぼしてしまって怯えていると、結局、何も起こる気配なく過ぎるが、私の知るすべもないところで、花が踏みつけられ、虫が叩き潰されていたのだった。
　

毎週金曜日、街角の目立たない店の前、備え付きの人形の涙が涸れるので僕は、その耳に潤いの言葉をつぶやいてやるのだ。
　

君達のグループ名は、モーニング娘。
　

洗濯をする彼の横で、私はするっと窓を開け、冷たい冬風を招き入れるふりをする。
　

月明かりの夜、手探りで、彼女の鉱脈を掘り当てた。
　

てく、てく、てく、きゃー、ききー、どん、だいじょうぶですかー、だいじょうぶですー、てく、てく、てく。
　

お昼のお弁当は、濃霧の向こうでにこにこと躍っている子供時代に注文されたもので、今突然机の上に届けられたものだから、その中身に人参の煮つけが入っているのを急いで確認せざるを得なかった。
　

目つきも面構えも素行も悪く、おまけに諦めまで悪い、文無し宿無しコネ無し男だった俺が、何故か今、校長先生になってるんだよ。
　

僕らは、はねっかえりだしすれてたし、平日の午後に赤茶けた外観の喫茶店に集まって「シビレるぜ」なんて話をしたり、トムの爺さんがくたばっても「関係ないぜ」ってカードしてた。
　

背中を火にあぶられながら、白い球なようなものをぶつけられ、そしてその球は割れると黄色い球と白い血液を流し、僕のお腹でじゅううと鈍い音を立てる。
　

「俺にはもう何も怖いものはないぞ」と天に向かって叫んだ男の顔面に向かって剛速球が降ってきた。
　

スイッチをスケッチしていたら、黒猫がじっと見て、白い靴下がずり落ちて、土曜日だったから宿題はやめて遊びに行った。
　

ラブホ街をぬけると猫たちの繁華街がある。
　

彼女が朝食に出してくれた目玉焼きは、どう見たって卵じゃないと言うか、明らかに目玉だ。
　

吹きさらしの海辺で大きなタオルケットにくるまれた小娘が、列を作る男たちをひとりひとりタオルケットの中に招きいれ、体温と金を少しずつ奪っている。
　

或る日、僕たちは、道端に落ちていたハンカチィフを拾つて、小説のやうに恋に堕ちたのでした。
　

何度もデートを重ねたが、いつも何かを忘れていて、それが何かわからずに２年の歳月が経ち２人は結婚したが、そのときになって始めてお互いの名前を知らなかったことに気づいた。
　

そこが始まりだと思って舳先にかかとを合わせた少年はたしかに裏切られはしたが、既にそんなことは忘れてヘリコプターへと帰るブーメランを眺めている。
　

Good bye, my friend.