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夜にしかない可能性の息
あなたの首に下がっているのは地球
眠り、寝息で会話
ひとり起きて台所の水を飲む
この水は深海からすっくって運ばれてきた
フランス語のテ ....
虫の音を
聴く
深い夜へ
星が瞬いているのも知らず
あのひとは
ねむっているのか
荒野が明けることは なく
しわぶく空よ ここに直れ。
わたしは 暗闇に透ける
深淵のねむる火
....
歩き疲れて立ち止まり
雨がしとしと降り出して
静かに静かに降り出して
道に敷かれた石畳
次第に次第に濡れてゆく
並木の青いプラタナス
静かに静かに濡れてくる
歯を食いしばり空を見 ....
ニット
帽子
頬
十六の島に染められた子
遠景と 自動販売機から出た温かい缶を左手に
少女として佇む
移ろいゆくあなたが
ひとり勝手に 丁寧に動いている
遠雷と時報 ....
やたらと動きのよい男は
チーフを取り出して涙を拭う
そして顔を傾けて囁く
女は台本通りに今宵二度目の愛を誓い
嗚呼、悲劇などないのだ、と
そして舞台袖の暗がりでは
黒髪を撫でつけた ....
驟雨
壁の絵を外すと窓がある
まだ名前のない誰かの清潔な床に
点々と零れた眠りを辿る
廊下に並んだ額縁の端
署名が目に入る
布をかける
遡行する
中庭の石畳はまばらに濡れ
痩せた ....
脆く崩れた時間の跡は
黒いばかりの真空の穴で
菜の花の黄色と向日葵の黄色が
溶け始めた根雪を帰路に{ルビ誘=いざな}う
冬の残滓は降り積もり
焼却炉へ
埋立地へ
悪魔の似姿をした双子 ....
夜遅く 家に帰る
澄んだ夜空 揺れる花々
風を切って 月に話しかける
猫が鳴いてる部屋に着く
鍵を開ける カチャリと響いた
隣の部屋にも 上下の住人にも
わかるくらいに静かに響 ....
読んで 呼んで
私の声を
ぽつ、ぽつ、と
聴いて
自由にして
翔んでいって
とぷん、と
緑の床に沈んで
葡萄色の世界に溺れて
眠り
たゆたう 海
....
その国
国なのに王を持たず
恋人もいない
波打ちぎわが逃げ続けるので
海は憧れの的
つぐみの子が口を開け
「夢が叶った」
と ....
燦ざめく、昨日を置いて、
私は流動的な眠りの前にいる
瞼の下の私
ここは何処でもない
命と均しく、
ただ受け入れる
笑いもしない
私は逃亡者
サーチライトを逃れるように ....
習ったばかりのルートの記号を
少年はノートに書きました
丁寧に書いていたはずなのに
最後に記号は壊れてしまいました
わずかな隙間から覗き込むと
自分が幼少時を過ごした町の海が見え ....
またぞろ、首都に恐竜の骨が現れた。
しかも泡の抜け殻で
唸りを上げて
ブロントザウルスの首の骨は
子供達の学んだ校舎を
子供達の遊んだ公園を
今は髭の生えている
今は化粧の香 ....
南西
紅い沼
ヴェントリン
秋色
誰かの禁断症状
不潔な針
バスタブの汚れ
落葉色の血
アスピリン
惨酷な唯識論
震える轍
美
シリンダーヘッド ....
内側の真っ赤な熱が透けて
桃色のようにみえる
生き物のようにやわらかくて、よくみると
痙攣している
それを薄紙で包んで
そしてリボンをかけて
ポケットに入れては持ち ....
春に体は押し返され
弾みで乾いた鱗が
ばさらばさらと足元を埋める
みだりがわしい温度に
誘われるまま
感知信号に止められて
まるで自分が分銅になった気がし
もう死んでしまったのかと思 ....
弥勒の雨の降り初め
緑青の音階が透きとおった
川はもう
市街地に集合して海に戻りたがっている。
手のひらに(砂の塩)
29℃の残り香が開け放たれた窓を過ぎ、
鉄の雨が降った
クリーム色を ....
今日
勇気をだして図書館に行ったが
彼はいなかった
私がいるの知ってるから
来ないんだな
私は下くちびるを噛み締めた
すこし経って
彼がやって来た
眠そうにあくびをして
なん ....
猫がとなえる雨乞いの呪文
断りもなく春は重い
丸い肉球で世界を救う
そのとき僕はなにをしてるんだろう
花が咲いたと風が笑う
影がこっそり出かけてゆく
桃色のブーケをいっぱいつくる
黒 ....
色褪す、ぐんじやうに
烏めが群れを成し、
おれの盲目に羽ばたいた
街の夕顔、
一度なれどもどよめかん
お前の中のノスタルヂアは
既に此処にはない
悲しいか。
終末の電車 ....
精錬された中指に
溶け落ちるクリーム
最後に残るのは苦しみ
蒸気圧がどんどん落ちて
すり替えが始まる
いつになっても
立っているだけの案山子が
ピエロのように
一粒の涙を舐める ....
風の音がする
窓越しに見上げた、トタンの屋根が
端っこの方から剥がれるのを
何も言わずに見ている
***
きちんと真ん中ではない、
....
震える言葉を摘み取ってみる
掌の中でフルフルと揺れて溶けて
流れることも滴ることもなく揮発する
赤い液体を吸い込んでしまった
痺れる感覚は思い込みなのか条件反射か
そんなこと、どっちでも ....
橋の上、
時計回りに見渡せば
{ルビ下野=しもつけ}、{ルビ下総=しもふさ}、{ルビ武蔵国=むさしのくに}
いつからか都の殿上人たちはこの地にも境を引いて
左扇で国獲り遊戯
その頃すでに ....
素早く黒く内転する北風。
見え隠れしている
耳と口の部品である言葉の
調律が乱れたままの
時の音階。
銀と黒の液体が出会う不純なる海峡
沸き立ち割れる泡の痛み
混合 ....
{引用=からだの奥から
たらたらと
わたしが滴り落ちていく
産声とともに泣いた日の
わたしの初めの一滴を含んだ雨で
シーツを洗いたい
足跡にそって
てんてんと広がった池を
みじめな ....
きいて欲しいのに
頷かないといけない
人は話したがりのイキモノ
話す呼吸のつなぎ目を
狙って割り込まなければならない
うんうん の数が多いほど
わかるよ の数が多いほど
あなたが ....
四月のよく晴れた日
教室の窓際の席で頬杖をつきながら
虚ろなその目にさす光は
誰かが悪戯に映した空
悲しい影を落とした睫毛を縁取る萌黄
かたく結ばれた唇に新しい桜色
そのバックグラウン ....
{引用=
ふと気がついた時に もうなにも掴めずに いつも湿っているぞ
その指はふやけてる もう感触もないなら 物言わぬ言い訳だけ
その花火の火薬庫は なによりも恐ろしい 饒舌に喋る喋 ....
窓外の大空に掛かる十字架
朝日を浴びて白く屹立する
それは福音だ
彼は夜闇に生まれた
太陽に焼かれ、荒地に又砂浜に
足跡を残した
それはゴルゴダへ続く
砕かれた四肢から血が伝い落 ....
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