気づくと右手は濡れていて
描きはじめたばかりの夜に
銀色の線を引いてしまった
見る間に乾く三日月の下に
明日の朝には消えてしまう
羽や光を書きつらねていた
隠さ ....
枯葉 の 指輪
伏せた
やわらかな 草の
ただ ふんわり 揺れるのを
曇りの中
歩いて行く
陽射し
指笛で 追い 追えぬのを
捜していたのは 錯覚
立ち向 ....
島を結ぶ浅瀬の夜を
かがやくゆがみの輪が照らす
ほつれつづけるふちどりが
わずかに時間を押しのけている
歩きつづける影のそばに
何かを取り去られたかのような
大きなひろ ....
窓のお外は夕景
意味なき歌が流れる
書くことは一度死ぬこと
それを生きること
またたいた瞬間
カラスが鳴いた
時計がうめいている
時間が泣いている
もう廃人かもしれないと思う僕は
....
主旋律はもう
ピアノを離れた
(羽をインクにつけたとき
諦念が私に絡みつく)
幼き日々よ
最終楽章に向かうのか
草原を駆ける二人の影は
五線譜の上を踊る
アマデウスの傍
....
教室で心くだいた
日々も過ぎ
今日はすずろな心地です。
いまや厚い雲壁の鎖はとかれ
世界はつめたく
何も教えてくれません。
それは幸いなるかな…
....
空の青が眩し過ぎて
つい瞳を閉じてしまう
そんな風にしていつも
小さな幸せを見逃してきた
あの日の君の心さえ
信じることが出来なくて
差し伸べられた手を振り払い
今ではもう届かない場 ....
わたしは、どこへも行きませんよ
野暮だねえ
朝に咲かない
朝顔だなんて
うわごとを言って
境で眠る
あなた
日はもう
正午をまわり
ひたひたと傾いてゆく
いさぎよい
小鳥 ....
鏡台のまえに座り
紅をひく
雨音が
静かにへやを満たす
なにをするでもなし窓の外へ目をやる
何億年もの上空で
移ろうおもいが重さをもって降ってくる。
そう何かで読んだことがある
こ ....
漆黒の空の下
両サイドをオレンジに染めて
それは疾走する
何を乗せて
何を求めて
やがて
地平線の向こうに
同化して
見えなくなったとき
それはあるのか
森の影に星が沈み
....
カギっ子を見た
21世紀のこの時代に
まだカギをクビからぶら下げているんだな
って、感心する一方で
とてもなつかしい記憶がよみがえった
かく言う僕もカギっ子だった
両親が共 ....
心のしっかりしている時間が随分増えた
しかし私は揺れ続けている
「世界は海のようなものだ」
という比喩は見事だと思う
それを受け入れるなら私はその海のどこにいるのだろう
海はひとつか
海の ....
波が波に描く絵が
次々と現われては消えてゆく
海を覆う点描が
鳥を照らし点滅する
蒼い光のひとがいて
歌い舞う花のうしろで
草に沈む岩を見ている
海からも声のなかから ....
朝方早く、空は虹色をしていた。
世界にだまされている。
ベランダに立って、気がつけば、
世界は今も動いている。
給食センターのトラック。除雪機の眠った倉庫。
海に続く空気。
朝方早く、 ....
山道を登るときには足元を見るものだが
彼は上ばかり見て
其処にのたうつ木の根があるかも知れず
{ルビ泥濘=ぬかるみ}があるかも知れず
急勾配かも知れぬのに
彼は上ばかり見て
まだ立っている ....
種もつ闇の
ちらかる 真昼
夜から じっと
はりめぐらせた
たんたん ひとつぶ あまい 夢
たんとん ひとなみ ふるい 風
かすれた なきごえ
かみきる したあご
....
何度目かの電話の奥で
口笛が聞こえた気がする
鼻歌だったのかもしれないけれど
もう遠くて追いつけない
近づいてくる海岸線からは、遠くは見えない
近くなら、というとそうでもない
指先はど ....
街は停電していた。僕等は街外れのバッティングセンターへ向かっていた。
夜だというのに「竜巻が渦巻いているせいだ」という友人はヤンキーで
彼が走らせる車は、真っ暗な交差点に渦巻くいくつかのそれをか ....
電話中「それを一枚持って来い」
やれ走れお好み焼きの熱いうち
鰹節向かい風には耐え切れず
スーパーで「そいつ一盛乗せてくれ」
エレベータ匂いきつくてスミマセン
....
郵便受けに溜まった新聞が日焼けしていた
古い日付は、風に晒されて
更に風化した遠いあなたの
背中に張り付いて
帰ってこない のに
201号室の、窓から入る西日を受けながら
忘れて ....
野菜の苗を
手に受けて
指から白い
根っこが生えた
「植物の三大栄養素は窒素・燐酸・カリです。
これを8:8:6で配合し、苗を植えつけて行って下さい。」
手に取った苗は
陽の輝き ....
井戸の底を
のぞきこむ鳥
わずかに残る
水に映る陽
いとしいしずくであれ
いとしいしずくであれ
うすくゆがんだ光の輪が
影のなかにゆらめいている
にじみと波は
光 ....
どこかの方から誰かが去って
白い砂漠がぽつんとあって
顔のない人が歴史の本なんか読んでいるのでした
私は私を側に置いて
私を見つめ続けなきゃならないのでした
ひとつ思うことがふたつに別れ
....
気が付けば、漂流している目覚め
手を伸ばすその先
十センチメートルで
落ちるばかりになっていて
とりあえずここに、漂っている
どうやら
世界の端は滝になっているらしい
落ちてしま ....
遠くなっていきますものが
小さなものと大きなもので
知らないものがたくさんできて
そうして見知らぬひとになってゆくのでした
ありがとうがとても透きとおって
私の前で響いているのでした
....
街の上で
朝を 投げている
小さな 丸い 飛沫が
きらきら ころがりながら
あふれかえる
夜よ
よき 友人よ
くりひろげられる
問いの多くを 吸い取り
泣きな ....
ぽたりぽたりと憂鬱から漏れている
コールタールにもよく似た僕の雫は
吐き出す煙りに撫でられて気だるく踊る
風通しの悪い窓辺で聴く喜びは
静かな日々を願いながら
喧騒に寄せられる情熱
....
ほほを伝う
海
つめたいのかあついのか
肌に、にじんでゆく
幻聴ではなく{ルビ潮騒=しおさい}の。
いえ
ただの涙ですけれど…
守るものは魂
あんなことや
こんなことが
あった ....
走り書きした
唇 の 上
冷めないうちに
耳を塞ぐ
儲からない 話
でも
いい の ?
肩に触れていたなだらかな重さが
消えていることにふと気づくとき
部屋のなかを見わたす視線は
ほんの少しだけ傾いている
今日も夕空を見忘れて
蒼い窓を通りすぎ
破りとられ ....
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