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  歓びはなかった
  とはいえ哀しみもなかった
  わたしたちはベンチを分け合って座り
  冬の始まり、辺りに人影はなかった
  言葉はさっきまで……あった
  今は沈黙さえ、ない ....
  夜の芝生で
  いるかは一度だけ跳ねた
  手に拾えそうなほどの光が今日、
  とおくの月やら星やら町やら、そんなものから
  迷いこんできていたから、けれども
  そのなかを泳 ....
  なかば開かれた窓の傍ら、
  揺り椅子で膝を抱えあなたは風を舐めている
  なにもかもが 透明なジャッカルと化して
  あなたの内なる屍肉を貪っているのだろうか
  みどりいろの西 ....
  土嚢でも背負っているのだろうか
  きょうの町は、肩の辺りが硬く強張っている
  木陰のところで音楽は重なりあって死んでいる
  物欲しげな野犬は吸い殻に鼻を近づけやがて立ち去った
 ....
  しろい頬をこちらにむけて
  月が肩をふるわせている
  窓の外から、じっと
  石でできた町がぼくを見上げる
  けれども雨がふっているのはまだ
  きみの瞳のなかでだけ
  ....
  暗号は箪笥にしまわれていたが
  防虫剤の匂いに毒されもう使い道はなかった
  幼少期に誰もが熱をあげやがて棄て去った玩具同様
  為されるべきことは二、三あったものの
  その手 ....
  一日中、
  こわれた雨樋をみていた
  網戸にささって死んだ虫をみていた
  あなたがこのよにいきているなら
  わたしがしぬことはぜったいにない
  わたしたちのなかで 言葉 ....
  夏影を
  蛇の身がなぞる
  あおじろくつめたく
  すべての陽がきえていく
  汗が鎖成す、おまえの鎖骨
  陽の光があふれるところで
  あなたのからだを抱いていた
  影は こまかい枝のようになって
  わたしたちに踏まれている
  世界から背をむけてまで
  夢見ることを手放してま ....
  シャツの色をわすれた
  自転車を仲よくならべた
  川沿いの道にいつもあった
  だれのものとも知れないさびしさ



  三日月にすこし濡れた
  きみの膝こぞうをそっ ....
  コールタールの
  夕ぐれは さびしい匂い
  潮風のながれを瞳にうつしながら
  ちいさな犬を飼いたいと思っているあなただ
  窓に背をむけて
  なにかを書きとめていた
  あなたに小さく呼びかけた
  微かな灯りのともる夏、
  砂のまじったわたしの思いは
  野良猫のとなりで寝ていた
  わたしの心が
  くらげのかたちになったら
  会いにきてくれますか



  手のひらに月をすくい
  くちびるを歌でみたし
  むかえにきてくれますか
  わたしの心 ....
  猿は黙って登ってくるのだ
  かれらにしかみえないおまえの
  躯に穿たれた釘を伝っておまえの頂まで
  それでも数匹は諦めて引き返すし
  また数匹は手を滑らせて落ちてしまうし
 ....
  その夏は、
  白い壁に囲まれていた
  ただ、陽射しだけがまぶしく笑い
  ただ、樹々だけが言葉を歌にして
  いつの日も きいていた その壁は
  あなたの声のようにきこえる ....
  あなたの意識の薄明のなかで
  一匹のアルマジロがその躯を{ルビ捩=よじ}った
  川辺には大小様々の板が砂を冠りねむっている
  樹々に秘められた古くからの熱と
  物語の奮えを ....
  白熱灯が燃えている
  黴の浮いたタイルたちが
  あくまで事務的に焔を点す
  夜は、十分に暗く
  わたしは十分にわたしだ
  少しの隙間も許さないほどに
  テーブルの隅に重ねた手紙も
  椅子の背に掛けたタオルも
  乱されてはいなかったけれど
  さっきまでここに猿がいたことはわかった
  茶と金の間のような色合いの体毛は
  一 ....
  四角い夢をみている
  濁った魚が次からつぎへと
  氷上の穴から吹き出してくる
  マスケット、ビリヤード
  バグダッド、カスタード
  カスタネット、レニングラード
   ....
  桜の葉を胸に抱いて
  墨色の風は流れていく
  女に似た雨の匂いが 岩間にひそむ苔を洗う
  うつむくひとの唇から 知らぬ間にすべり落ちた
  わたしの名をだれが忘れずにいられる ....
  耳のなかから歯が{ルビ一片=ひとかけ}こぼれてきた
  それを拾い洗面所に行き鏡で自分の口のなかを見ると
  欠けている歯はひとつもなかった
  歯は依然わたしの手のなかにあった
 ....
  席はあったが
  わたしは座らなかった
  銀いろの月によく似た
  さみしい言葉だけ胸の奥に置いて
  けれども誰にむけたものかわからず
  きまり悪い笑みをうかべて わたしは ....
  門のむこうから
  犬らしき影が近づいてくる
  私は 昨夜みた夢のなかで書いた
  一篇の詩を 門のこちら側に置いて待っているのだが
  犬らしき影は 近づいてくるだけで 決して ....
  外国語で書かれた小説と 掃除の途中で放り出された電動ひげ剃り
  その二つだけが あなたの部屋の丸テーブルに置かれていた
  それらが如何なる数式を形づくっているのか 見定めようと 私 ....
  女郎蜘蛛がさっきから 私の大脳に巣をはっているようだ
  縞模様の尻をふりふりさせて 時折転げ落ちそうになりながら



  東からの弱い風に レースのカーテンが波立ち
  椅 ....
  あたたかいミルクを 絨毯にこぼしてしまった日
  きみはゆっくりと愛していた
  町を、陽の光を、そでの長い服を



  きゅうくつなかなしみが胸を染める
  言葉にできな ....
  その日 空は折れ曲がっていた
  梯子の上ではくたびれた猫が
  真昼の光を嫌になるほど浴びていたし
  グラスに注いだ麦茶は埃を被りつつあった
  


  忘れ物はのこさ ....
  さっき、背の高い老人が窓の外を横切っていったのだが
  まもなく 横断歩道のあたりで 見えなくなった
  花粉の多い 春の 晴れた日
  喫茶店には いやみな観葉植物が 所狭しと並べ ....
  羊の影が
  小径を歩いて行くのがみえた
  人も居らず ごみばかり落ちている
  その小径は雨の臭いに満ちていて
  もう
  まもなく、
  日暮れが訪れる
  マフラー ....
  古い蝉が、この部屋の
  窓に貼付いて乾いている
  色々なものが置かれていたが
  結局ひとつもとどまらなかった



  きょうの月は、頼み方しだいでは
  ベランダに ....
殿上 童さんの草野春心さんおすすめリスト(370)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
街路樹- 草野春心自由詩614-9-28
夜の芝生- 草野春心自由詩714-9-7
嗤うジャッカル- 草野春心自由詩414-8-31
移住- 草野春心自由詩814-8-24
砂の城- 草野春心自由詩514-8-23
我々の暗号- 草野春心自由詩714-8-17
雨樋- 草野春心自由詩814-8-10
蛇と鎖骨- 草野春心自由詩514-8-3
からだ- 草野春心自由詩514-7-21
恋は三日月- 草野春心自由詩814-7-20
コールタールの夕ぐれ- 草野春心自由詩314-7-13
野良猫- 草野春心自由詩4*14-7-13
わたしはくらげ- 草野春心自由詩814-7-12
登る- 草野春心自由詩514-6-29
あなたの歌- 草野春心自由詩314-6-28
マトラカ- 草野春心自由詩314-6-22
白熱灯- 草野春心自由詩314-6-14
猿のいた部屋- 草野春心自由詩614-6-9
四角い夢- 草野春心自由詩414-6-3
うつろい- 草野春心自由詩714-6-1
迷いこんだ歯- 草野春心自由詩914-5-25
- 草野春心自由詩1014-5-21
門のむこうから- 草野春心自由詩214-5-18
数式- 草野春心自由詩314-5-11
女郎蜘蛛- 草野春心自由詩314-5-5
ミルクときみの春- 草野春心自由詩1014-5-4
折れ曲がった空に- 草野春心自由詩414-4-27
背の高い老人- 草野春心自由詩314-4-26
羊の影- 草野春心自由詩914-4-20
古い蝉- 草野春心自由詩1014-4-10

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