すべてのおすすめ
すごく好い風が家中を吹き抜けて
玄関のドア飾りが
「ちりりん、ちりりりん」
ひっきりなしに、綺麗な音で鳴ります
気温も例年より低めで
少し肌寒いくらい
部屋で本を読んでいると
....
僕の職場には黒猫さんがいた
黒猫さんの本当の名前は町田さんというのだけれど
何故だか誰もが黒猫さんと呼んでいた
僕はどうして黒猫さんが黒猫さんと呼ばれているのか知りたくて
社内の先輩た ....
空耳のどしゃぶり
ガード下にこだまする
立ち止まる黒猫の
瞳はブラックホール
目が合えば僕は
吸い込まれていく
夜を開く赤のカーテン
その向こうへ黒猫は走り出す
加 ....
ジョニーがお風呂へ行きたいと
俺の下宿を訪ねてきたんだ
パチンコで八万円勝ったらしいんだ
四万円ずつで行こうというんだ
川崎まで行こうというんだ
俺は川崎までの電車賃だけでいいんだ
だ ....
南にむかって
角をひとつ 曲る
てのひらに
陽の照るように
ゆっくり
あなたのほほからたちのぼる
あたたかなあめの 午後は
甘くて
空をむかえる地べたのように
五つのゆびを ....
モノレールが優しく横切るその前の
鉛色の河で小船たちは寡黙に佇む
足元では何匹もの大きな蟻が
その身体と同じ程の大きさの
荷物を運びながら行き交う
小さく跳ねながら近づき
離れ ....
強い日差しが
肌を焼いていく
じりじりと
内部で音を立てる
もう二度と戻れない
そんな瞬間を
あなたと
わたしとしては早く終わって欲しいのに
あなたはまるで厳粛な儀式に望む
いんちきくさい司祭のような面持ちで
わたしのかたちを確めてみたり
わたしの知らないかたちで動こうとする
ふだんと違う表情 ....
いつか鳥取砂丘で奪われた
気怠い熱が返ってくる感じ
デラウエアの雫が
中指からぽたりと落ちて
甘やかな記憶が
砂塵のように崩れていく
それは不思議な爽やかさで
一歩踏 ....
芝生の上に横たわると
青が見えた 鳥が見えた 飛行機が見えた
ふと影が差したと思ったら
白いシャツが落ちてきた
二階の窓から母さんがごめんと言った
ああ 天使かと思ったのに
大きなガラス扉
日焼けしたブラインド
貸店舗、の白い貼り紙
コンビニになりきれなかった
角の、たなか屋
殺風景な店先のコンクリートには
ただひとつ
小さな郵便ポストが生えたまま
舌 ....
空の水がみな注ぐ
水無月ならばこそ
ガクアジサイのぼんぼりに
青色 むらさき
灯りを点けて
こころの内を絵に描いてみる
哀しみ惑う雨模様は
霧雨に溶いた絵の具で
ぼんやり滲んで ....
しなだれて奥様?
いいえオキラクシングル
疲れているのは肌だけじゃない
生活空間
主にきっちん!
やさしいドラマは居間の向こうで
甘いささやきはひそひそ声
今日も眠るかしら
....
*翔る*
頭上の
ヘリコプターに向けて
大きく両腕を振る
「おーい」って叫んだ
何度も叫んだ
声だけが
翔けていく
*風*
自転車の
ペダルを漕ぐのも
間に合 ....
千代紙こうてくれへん?
匂い付きのやつやで。
嗅ぐと、鼻の奥んとこが、ジーンとなんねん。
何や懐かしいこと、思い出せそうで、思いだせへん
あわーい陶酔があんねん。
千代紙には。
何でやろ、 ....
「えくぼ」
六月の風にゆれる
さくらの葉っぱ。
よく見たら
ぽつぽつ 穴があいている。
虫に食べられてしまったのだろうか?
穴は どこかの虫の命を みたして
穴は みずみずし ....
「こうふく」
がなんなのか
「ふこう」
がなんなのか
ぼくにはわからない
だけど心は
あったかくなるよ
さむくもなるけど
それでいいよ
待ちわびて
想い 雨に流して
流されて
願い 草木の花となり
春ねんねん
花の 儚くも貴き
いのち
かな
雲は薄い水彩画
静まる街の片隅でそれを見上げる
風は止まない
誰かが植えた大きな木の葉が
不規則に踊り続けている
ふいに灰色の鳥が目の前の枝にとまり
世界のニュースを告げる ....
荷物が重くて
帰り道が遠い夜も
星が しゃん、と
鈴を鳴らすことがある
鞄で傾いた右肩を
白銀色の響きが
そよ風となって撫ぜるから
もう少しだけ進んで行ける
余韻の尻尾
....
慣れない街では風がうねってて
目まぐるしく僕を迷わせる
どれほど背中を押されようとも
ブレーキを踏んだままなので
なんの意味もなかったんだ
傷だらけの中古車は
駐車場でたそがれて
夕 ....
山の頂に雪は積もりました 寒々しくも
もちろんのように 六月の 東の端っこ峠にも
週間 蔽い尽くした開けの空の下
風の笛を吹くように
すべてのたましいが
リンになって
夜を燃える
海は
黒く世界を閉じて
ちゃぽん
何処かで魚が跳ねる
私
泳げないから
たぶん沈んじゃいます
ずぶずぶ、って
そういって ....
この 思いの
行き着く先は 蒼く
仄かに
月は揺れる湖上の 夜に
揺れる わたしは遠く
あなたを遠く
遠く
思いに 揺れる
月
とてもシンプルな音を立てて
きみは生きている
噎せ返る緑の中を駆けるときも
たましいの全てを委ねて眠るときも
まるでありのままの世界を描くように
混じりけのないの声で笑って
....
目を閉じて見つめる
記憶の中・・・・
小さい頃のわたしが
若葉の蔭で
耳を澄ましている
「何を聴いているの」
と たずねたら
「こもれび」
と 言って上を向いた
....
流れ落ちるギターの音
太鼓の響き
誘われてここに来ました
知らない道
散歩の途中
そんな
夏の夜に
冷たいお酒
涼しい夜風
気持ちいい
隣に座った女の子と
少し話 ....
光のくずは
朝のなかをかがやく
屋根にならぶ
しずくの
影
雨の音は
あたたかな蒸気と きみを はこぶ
まどぎわにあそぶ
まだ 新しいひとみで
洗われてゆく 世界をみつ ....
こんにちは アブラムシ
あなた何歩でこのルーズリーフを横切れるかしら
ツノをふりふり おしりふりふり
行っちゃうの?アブラムシ
窓を見つけたのね
透明の翅をもじもじして ぱっと消えた ....
こんな晴れた日
野の緑はしなやかな腕を
天に向かって伸ばし
陽射しに仄かな生命を温めている
草むらをすり抜ける風は
蜜蜂の
しじみ蝶の
か細い肢に付いた花粉を
祈りに変えて
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