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スーパーマーケットの入口で
マンゴウを手にした瞬間、
子宮が微かに痙攣したのを
見逃すことができなかった
雨の、せいかもしれない
外からは背すじを正すような
水しぶきが響いている
....
1
もう、
ふりかえらないのだ
髪をゆらしていった風は
束ねることはせず
つまさきは
後ろに広がる汀を
走れない世界にいて
こころだけがいつまでも
波になりたがっている
....
あ、
あさごはんが
きょうもやわらかい
そしゃくされた
いのちが
おなかに熱くしみとおる
やわらかくなって
この手に
とどくまで
いったいどれほど
かみくだかれたの ....
{引用=
あれはたしか小学生のころ
ちいさな花をいじめたことがあった
冬がカサリと音を立てはじめたある日
お母さんがお庭でいっしょうけんめい
そだてた花を
「しゃんとしなよ」
「 ....
わたしのなかにも
ちいさな子どもがいて、
大人になってしまったわたしを
おおらかに抱きしめているのだろう。
それに気づかせてくれたのが
あなただった。
小学校の先生をしていたという ....
その歌のはじまりとおわりを
わたしは知らない
空を見上げたとき
耳元で起きた風が
どこから来て どこへ行くのか
わからないまま
歩き出してしまったように
そ ....
洗面器に金魚を二匹放したら波紋にひかる新月の影
告白に一瞬ときがとどまって乱反射する川が痛いよ
自転車に初めて乗れた日の風を呼びおこしてる恋のはじまり
まひる ....
夕やけを食べたいという君のため買い物かご手に西日へダッシュ
ハミングでハンバーグ焼くママを見てままごとセットで真似するムスメ
お日さまに愛でられコロナより赤いトマトを煮こんで子の皿 ....
絵葉書の端からおしゃべり零れ出す「暑中お見舞い申し上げます」
目標は銀河で泳ぐことだからヒマワリ君とは背比べしない
窓辺にて涼む巻貝ひとさじの碧い潮鳴りおみやげにした
....
夜空に、ひしゃく星
くらやみは
すくわれることなく
すりぬける
あなたとわたし、
街灯りを遠くに眺めながら
水を打ったように静かな公園を歩いていると
一 ....
あなたが、水かさを増す
「では、また 」
と 言って
あなたが身を反らして
木立から、わたしから
離れていった
その刹那から
あなたが、視界でいっぱいになる
あなたが、
....
空が欲しい・・・・って
ずっと想ってた
薄暗い部屋に
頑なに独りいる時も
さらに殻にこもって
傷ついた翼を
縫いつくろっている時も
空 空 空
歌うように ....
「えくぼ」
六月の風にゆれる
さくらの葉っぱ。
よく見たら
ぽつぽつ 穴があいている。
虫に食べられてしまったのだろうか?
穴は どこかの虫の命を みたして
穴は みずみずし ....
荷物が重くて
帰り道が遠い夜も
星が しゃん、と
鈴を鳴らすことがある
鞄で傾いた右肩を
白銀色の響きが
そよ風となって撫ぜるから
もう少しだけ進んで行ける
余韻の尻尾
....
目を閉じて見つめる
記憶の中・・・・
小さい頃のわたしが
若葉の蔭で
耳を澄ましている
「何を聴いているの」
と たずねたら
「こもれび」
と 言って上を向いた
....
もしも願いが叶うなら
風のカナリアになりましょう
綺麗と誉れる籠を出て
道なき森を羽ばたいて
君の行方を輝かす
名もなき唄になりましょう
家を飛び出し幻の
故郷求めてがむ ....
世界がスッと聞き耳を立てるから
私は黒猫になって逃げる
トレモロしはじめる胸の高鳴りと
アスファルトを飛び跳ねる
肉球のリズムが重なって
不思議な旋律を描くから
誰にも本音を ....
春だから って
がんばらなくても
いいんだよ
桜のつぼみが
あちこちで
ちっちゃな
熱気球みたいに
今にも舞い上がりそうでも
はりあうように
がんばらなくても
いいんだよ
....
はるをまたずに
なんでなんで
咲くの
底冷えの寒さを
わざとえらんで
ウメは咲いて
あっという間に散って
白くやわらかな
なきがらの下から
プチンプチンと
....
(みえる?)
みえるよ
(きこえる?)
きこえるよ
空の色も 土の声も
自分の魂の熱いゆらぎも
氷の蕾だった五感が
白い星になって咲いた
「私」という宇宙は はじまった ....
【運転室】
ミステリーツアーの
ほんとうの行先は
汽車の運転手さえ
知らない
行先はレール任せなので
運転手は楽譜を前に
指揮を振っている
振りをしているに過 ....
恋とは
自分にないものを
求めることなら
愛とは
自分にあるものを
抱きしめることでしょうか
「愛し合う」とは
言うけど
「恋し合う」とは
....
私の父は沖縄生まれだから
血の半分は南国のものなのよ
と、言ったら
君は目を丸くして色々聞いてきたね
東京の凍りつきそうな夜に
白い息をふっと吐き出して
私は記憶をたどって常夏の話をする
....
詩のフレーズを思いついたとき
メモをする
ひとつひとつの言葉を
忘れてしまっても
メモをスッと取り出せば
鉛筆を走らせたときの息遣いまで
いきいきと蘇えるように
私の生 ....
ぎゅっと
ケチャップのチューブをしぼって
出来たてのオムライスに
真っ赤なうずまきを描いた
かわりに涙が
ほほを伝わないように
悪いのはお前じゃない
と 言って
....
わたしが
うまれてから
なみだを
このてで
ふくまで
ちちははは
どれほど
こころを
ぬらした
ことだろう
いきていく
....
発売まで指折り数えたCDを
ようやく手にして
するするセロファンを
むいているときのときめきは
リンゴを倍速でむいているみたいで
ポンと
再生ボタンを押すと
さらに加速度を増して
....
目蓋に浮かぶのは 淡い光
脳裏に浮かぶのは パソコンの残照
会社から帰ると
バスタブよりもベッドよりも
まずはソファに沈みこんでしまう
ストッキングを脱ぐと
両脚が渇きを満たすよう ....
紙一葉の重みは
風に飛ばされるほどだけど
そこに詩が綴られたとき
人の生に響くほどの
力をもつことがある
詩よ
天の恵みを浴びて
我の中に実るもの
いつかはたれかの鳩尾深く
....