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夏の日の夕暮れ
いつまでも続け
つないだ手のぬくもりほどの
せつなさを抱えて

メビウスのまんなかに
つかのま立ち止まり
見つめ合った、ぼくら
いまよりもずっと
不器用で、素直だった ....
制服を仕立てにいくと言って
行ってしまった

トイレや脱衣所の扉が
足音に反応して閉められる
ほろにがい痛みをともなう
(バタン、カチャ
ちゃんと閉めなさい、なんて
言ってたのは
い ....
うみにくると
ふるさとに
かえってきたような
きもちになるのは
なんだろう

こくどうから
ながめわたす
ささーん ささーん

おおきくみえたはずの
うねりが
かたちをなくして ....
ある場所で
点、として生じた光りが
わずかな距離を移動して
塵となる
それを一生という

かきあつめたもの
握りしめたもの
すべて消滅してしまう
けれども

細い雨のあとの
植 ....
不器用だから
泣きじゃくって
のりしろは全部
切り落としてしまった

僕、という立体を
通りぬけてゆく風
端っこがめくれて
ビラビラしている

無理しないでね、と
幻のような声を ....
いろんなことあるよ
いろんなこと過ぎていくよ
だいじょうぶ
手をつないでいこう

みんな
のぼっていくね
空には
酸素がいっぱいなんだって
誰かいってた

くらげはね
水にとけ ....
葱。
葱をみている
きざみ葱を頼まれたが
青い部分ばかりで一パックこの値段とは
いかにも法外である

ひと振りの葱を取り、握りを確かめる
銘刀「下仁田」ほどではないが
なかなかの白鞘で ....
動き出した車窓が
景色をゆっくり手放すように
やさしくほどかれる季節は
まだ寝ぼけていたい春の子が
ようやく
んー と
背伸びをしたみたい

かしこい子も
そうでもない子も
とにか ....
堅く握り込んだ
こぶしをひらくと
てのひらに花が生まれる

目を閉じて
かすかな匂いを取り込み
脳によろこびを与える

水をはった
ガラス鉢に浮かべて
しばらく眺める
しずかな、 ....
近くなり遠ざかる海のかさなり
乳白色の巻貝の奥に
うずくまる内蔵
砂となった記憶の粒を探して
耳の感覚だけになる

ふくらみ、しぼむ浅い眠り
とうに輪郭をなくした風の面影に
なつかしい ....
おまえが将来
大人になれば
ときには重い困難を抱えて
たぐる糸もなく
色を失った世界に
途方にくれることもあるだろう
そんなとき
思いがけず差し伸べられる
手のひら
それが、ありがと ....
よってたかって
酷いことを言うから
精神科に行って
大変な目にあってみました

夏を飛びこして着地した僕は
金木犀のまじった朝露を
深呼吸する
勝ち組、負け組、と問えば
緊張した行司 ....
湿ったソファーに沈みこんだ
少女の
くちびるからもれる
母音の
やさしいかたちを
泡にして
水槽のふちに
浮かべている

*

贈られた模型を
にこやかに受け取り
持ち帰って ....
若草色のかざぐるまに
しがみついていた、あの人が
夕風にさらわれて
私の中を流れてゆきます

水たまりの映す青さの
ほんとうを
確かめるまえに
軽々と飛び越えて
もう
行ってしまっ ....
あいかわらず武士だった
参代する日でもなかろうに
女房殿に渡された温かい包みを抱えて
坂を下ってゆく

*

何やら人垣ができていて
たいそうな{ルビ賑=にぎ}わいである
隣の女房が ....
朝起きると武士だった
(拙者、もうしばらく眠るでござる
と、布団を被ったが
あっさり古女房に引き剥がされた
長葱を{ルビ購=あがな}ってこいという
女房殿はいつからあんなに強くなったのだろう ....
亀、知りませんか?
背中に「さ、の」って書いてあります
それは、自分自身です
こんくらいのやつです
かたちは日々変わるんです
生きものですから

お腹を押すと泣きます
水曜日の午後だけ ....
  冷たい雨が染み込んでゆく{ルビ苔=こけ}の
  やさしい沈黙に
  身体を重ねたくなる夜は

  窓ガラスに青いセロファンを貼りつけて
  閉じ込めた気泡の膨らみを
  指先でなぞって ....
まめクジラの水槽には
売約済みの札が貼られていた
まだ幼いのか
さざ波を飲み込んだり
小さな噴水をあげては
くるくる浮き沈み
はしゃいでいる

こっそり水槽に指を垂らすと
あたたかい ....
なだらかな野辺に{ルビ錨=いかり}をおろせば
緑色の秋がふりそそぐ

やわらかな雲の群れを辿れば
まぶたは風にまどろむ

じっとしていなければ
追いつけない季節

木漏れ日を新呼吸し ....
まだしっかり帽子をかぶった黄緑の
君の大切なたからもの
やわらかい手が両方ふくらんで
哀しそうに助けを求める
ひとつも手放したくないんだね

小さなポッケを教えると
手の隙間から零れない ....
  あなた、ルリツグミのヒナと
  お昼寝をしたことはあって?



風を確かめるように浮かべた
少女の白いあご、のライン
穏やかな微笑みに
たたまれてゆく{ルビ睫=まつげ}


 ....
ばっさり斬り落とした短い髪に
唖然とたたずむ
 (なんか、めんどくさくって
照れたように君が笑う
右の頬を隠して

僕の知らない君の夏
正しい折れ曲がり方なんて
よく分からないけどさ
 ....
朝顔の 浴衣着せられ すましても
{ルビ囃子=はやし}の誘いに 鳥のはばたき

色具合 綺麗じゃないかと なだめても
姉のお古に チョーさん唇

何故わかる 金魚の匂い ぐいぐいと
群れ ....
腹に響くエイサーの
どごん どごん
飛び跳ねる常夏リズム
どどごん、かつ、かつ

手踊りが咲き
歯は白く輝き
乾いた{ルビ三線=さんしん}の{ルビ音=ね}が走り出す

空を切り裂く指 ....
大きなガラス扉
日焼けしたブラインド
貸店舗、の白い貼り紙
コンビニになりきれなかった
角の、たなか屋

殺風景な店先のコンクリートには
ただひとつ
小さな郵便ポストが生えたまま
舌 ....
千代紙こうてくれへん?
匂い付きのやつやで。
嗅ぐと、鼻の奥んとこが、ジーンとなんねん。
何や懐かしいこと、思い出せそうで、思いだせへん
あわーい陶酔があんねん。
千代紙には。
何でやろ、 ....
追いかけてきたものは、何であったか
追いかけるべきものは、何であったか

あの蒼々 あの爽々

届くはずもないと{ルビ諫=いさ}められても
羽ばたく自由まで
奪われたわけじゃない

 ....
いったい誰がどうして落としたのか
道端にポツンと淋しくひと袋
飽食なこの国の片隅に置き去りの
真っ白な「えのきだけ」
その宿命をまっとうできないまま
秋風にさらされて
さぞ寒かろう さぞ無 ....
(またぁ〜?
鼻声でぼやきながらも
まだ真っ白いきみは
名を呼ばれれば起き上がる

腹筋に力をこめて身構える僕と
わずか三行で寝付いた妹の間を
髪を揺らしながら
へこまし、へこまし
 ....
日朗歩野さんの佐野権太さんおすすめリスト(31)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
それでね。- 佐野権太携帯写真+ ...11*14-7-31
卒業- 佐野権太自由詩8*14-3-4
うみ- 佐野権太自由詩9*14-1-4
六月のミーティア- 佐野権太自由詩13*13-6-14
僕、という立体- 佐野権太自由詩8*13-4-26
海月- 佐野権太自由詩513-4-5
ネギ侍- 佐野権太自由詩9*13-4-1
サクラブルー- 佐野権太自由詩6*13-3-28
春工房- 佐野権太自由詩5*13-3-22
春の巻貝- 佐野権太自由詩8*13-3-19
贈るほどでもない言葉- 佐野権太自由詩8*13-1-9
キャラメル- 佐野権太自由詩412-11-22
大人の遊びかた- 佐野権太自由詩10*07-10-3
風待ち- 佐野権太自由詩31*07-7-4
武士と猫- 佐野権太自由詩21*07-2-9
武士のつかい- 佐野権太自由詩58*07-2-6
さ、の- 佐野権太自由詩15*06-10-20
そして、いつか猫になる- 佐野権太自由詩18*06-10-6
クジラになった少年- 佐野権太自由詩43*06-10-3
添い寝する秋- 佐野権太携帯写真+ ...16*06-9-25
ドングリ拾い- 佐野権太自由詩28*06-9-22
回遊する少女2_(ルリツグミ)- 佐野権太自由詩24*06-9-1
檸檬色の夏- 佐野権太自由詩39*06-8-24
祭囃子に誘われて- 佐野権太短歌16*06-8-7
美風(ちゅらかじ)- 佐野権太自由詩18*06-8-3
たなか屋の角- 佐野権太自由詩54*06-6-20
ぶるー・びぃず- 佐野権太自由詩22*06-6-16
風をくぐって- 佐野権太携帯写真+ ...17*06-5-2
えのきだけ- 佐野権太自由詩7*06-1-12
かすがい- 佐野権太自由詩5*06-1-12

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