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真夜中のため息は
やがて
真っ白い湖になって
少女と猫が
弾む足取りで渡っていった
その水面の足跡は
白い蓮の花に生まれ変わり
ひめやかに
ひめやかに
ささめ ....
ある冬の日の午後に
人通りの少ない道を選んで
散歩をした
それは確か 手が
かじかむほど寒い日だった
一時間ほど歩いて
そろそろ家に戻ろうとした時
前方にある ....
いらいら
かりかり
そわそわ
たじたじ
なあなあ
ぺこぺこ
むらむら
ゆるゆる
らんらんらん
わいわい騒ぐものたちを
広口ビンに詰め込み終わったら
どっこいし ....
いつでも思い出せるということと
いつまでも忘れないでいることの違いを
知らなかったのです
それは
アルバムに貼り付けてしまい込むことと
手帳に入れて持ち運ぶことのような
違いなのでしょ ....
満水の夜に
感覚をとぎすませながら
無数の魚が泳いでいる
距離と、位置と、
上昇する体温と、
そういうものを
止めてしまわないように
蛇口に口をつけて
あふれ出すカルキを吸うと ....
公園へと続く夜道の街灯に照らされて
{ルビ百日紅=さるすべり}の木は裸で独り立っていた
枝々に咲かせた無数の桃色の花びらを
過ぎ去った夏に{ルビ葬=ほうむ}り
樹皮を磨く北風に じっと口を ....
たぶん400円くらいで安売りで
「 出て来いストア 」
たぶん肌触りが気持ちいいのは最初だけで
「 出て来いストアめ! 」
たぶんごきぶり瞬殺とか一生ムリで
「 出て来いって言ってんだストア ....
広い段ボール箱を用意して
ひとり
その中へ閉じこもってみた今日の朝
茶色い段ボール箱 から見る
世界は少しやさしい とげを
わたしにそぅっとそぅっと
抜けない様に 突き刺し ....
どことなくストレス加減の昼休み
冷たい珈琲に浮かんだ氷を
ストローの先でつついたら
猫みみのかたちの小さな生きものが
ちょこりと顔を出した
頭痛の道連れに
こんな小粋な錯覚が訪れる ....
その中で 支度をする
なお、ひかる
くるしいまばたきに
ゆびのすきまからあふれ
染みを
のこして
あの日
髪をきってほしいと言った
初冬だった
あさひがの ....
フリマの一番隅の方で
いなくなったままの父が
お店を出していた
犬がいっしょにいた
名前をペロといった
父が好んでつけそうな名だった
お店には小さな靴が一足
子供のころ私が履いて ....
瞼(まぶた)を閉じ
安らぎに抱かれ
ゆっくりと
ゆっくりと
呼吸する
やわらかく息を吐き
おだやかに息を吸う
くりかえし
くりかえし
やわらかく
おだやかに
息を吐き
....
「ふくらはぎはね タイムカプセルなんだよ」
そう言った時
掠れた声で
おもしろそうに
わたしのゆるやかな足をなぞるゆびは
日ざしに透けて
どうしようもない昨日とまざり
まるで た ....
その指先がこの涙をぬぐうことは
もうないのだ、と
うすうすは わかっていたよ
その手がこの手を握ることは
もうないのだ、と
うすうすは 気づいてはいたよ
その腕がこの体を抱 ....
つつむ
こころを
その手で
そっと
つつむ
いのりを
ひとり
その手で
つつむ
その手は
あの手を
つつむ
そして
手は
ひかりを知った
....
バタークッキーと紅茶
で
夜のティータイム
星が紅茶に
ゆらりと落ちて
ちょっと熱いじゃないのと
文句を言う
それを無視して
あなたが
さくさくっと
クッキーをかじって ....
ローヒールでリフティング
重たい空気のこの季節
人工芝はもうめげて
なよなよなよなよ笑ってる
彼はというとお空から
カワセミみたいな声だして
あたしのことをからかうの
リクルートスー ....
いつも 足りないと
つぶやくような目で
半透明 だった
校庭も
平たいホームの直線も
影をうばうばかりで
屋上にでるたび
そらに 手をひたして
紅くそまった冷たいゆびを
にぎ ....
誰かとつながっていたかっただけ
そう
それだけのために
私は配り続けたのよ
手作りの糸でんわ
誰かがこの糸震わす日を
命かけて待ってる
私の糸でんわ
紙コップ
いろんなと ....
そっとかわいてゆくならば
あと すこしだけ
(でんわのおとで目をさまして)
(それからゆっくりと足の裏をつめたい床へ)
(ひた ひたと)
おきてがみの温度は なまぬるく
....
{引用=
ぽんぽんぽんぽん
なにかしら?
釣り糸ゆらゆら お隣りさんと なかよしさんさん
おぢちゃん おぢちゃん
まぁるいお空が 飛んできた
その隣りも そのまた隣りへ
ぽわんぽわん ....
このままこのまま
どうしようかな?
ほそい雨足 夜まで行こうか
どうしようかな?
日も暮れる
あしたの風も吹いてきたので
かえろうかな?
ゆこうかな
彼女は
朝の遠いこのまちの
ちいさな刷毛で色をさしてゆく、群青
そらをぬりこくって笑う
その背中に
にじんでゆく夕焼け空を想起しました
けれどもうぜんぶ しずんでしまったから
....
天王寺動物園に
桜が咲いて
カラオケの音量が
最大になった日
僕たちはアポロの前で
待ち合わせた
どこに行く当てもなくの約束
ただ一緒にいたかったから
もっとたくさん、桜がみた ....
その布の上にはきらきらしたかたまりが
透けながらならんでいて
あたしはときどき つまんで くちにいれます
がっこうからかえると また
本のあいだからピアノがはいだし ....
輪郭だけをのこしたまま
あのひとがいなくなってしまったので
いつまでもわたしは
ひとりと半分のからだで過ごしている
明かりの消えた部屋で ひとり
アルコールランプに、火を点ける
ゆ ....
頑丈なこころを
作っとこ
あの子から、待ちかねた連絡が来て
あんまりにも待ちかねていたもんだから
つい、嬉しそうな声、出した途端に
「ごめん忘れてた、やっぱダメだ」
それが、金曜の ....
三月から
止まったままの針さきを
ゆっくりとまわして合わせた
雨の朝に目を覚ませば
あなたは
まだ
白くあわたつ
菫のような朝
からだにおさまらない もじ
柔らかな葉が ....
キミエさんが言ったんだ
「お前はパタゴニアに似ているよ」
コスタリカとはちょっと違う
パルプンテはもっと違う
ラテンアメリカの南の地方
パタゴニアには羊がいるらしい
あと、草原 ....
夏の図書館には、みんなが置いていくものが、ひたひたと満ちている
カップルも
受験生も
おじいちゃんも
みんな
置いていってしまう
夏の図書館に
外にはきらきらのひまわりが咲いて
....
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