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家のまわりをまわるうた
窓は朝に消えてゆく
窓は蝶になってゆく
壁に隠れ
また現われる
蝶は鳥になっている
蝶になった窓たちが
左まわりに空をまわ ....
まどろんだまま
深く吸った息で
体中に雨が透る
窓辺においた手紙が
濡れているのは雨のせい
滲んだ青いインクの
消えかけた名前を呼んで
雨の一粒一粒が
体の中で弾ける
ソ ....
頭のうしろの音を聴く
揺れるかたちの音を聴く
小さくとどく濡れた羽
したたる色のうたを聴く
夜に向かってひらかれた窓
さみしい灯を倍にする
縦に流れる部屋の内側
誰も ....
名前だけで結構です
そう告げられて、少しだけ、面食らう。
ほんとうに名前だけで いいのだろうか
ほかにも必要では ないのか
私には 他にも様々な付着物があって
それらをあ ....
空転しそうな少年は
風が吹けば背を向けるしかなかった
夕日からは目を背けずに
焼け付く色を一日でも、忘れずにいたかった
誰かを愛したことはあった
それを背負うだけの重さなんて
誰にもな ....
どれだけの言葉を飲み込んで
君は生まれていくのだろう
統制のとれた四角い部屋に
白い壁、のような服
悲観的な視線たちが
埋め尽くしてしまいがちな世の中に
「ほら、窓の外はこんなに明るいよ」 ....
蝶の花 蝶の花
土の下へ
飛び去りゆく輪
蝶の花
塩の火 塩の火
燃えつきぬ糸
人の色でなく
向かうものはなく
甘いにおいは風に消え
ただふるえだけが降り ....
黄緑色の ミニかえる
サンダルの先に はねてきた
白い靴下 汚れそうな脇道で
待ってても咲いてしまった花は
当惑する
みたでしょう もう
もう できることはないの
ただ こうして ....
先生 にんげんとは
さびしい、本当にさびしい生き物だと私はきいたのです
世界にはパンのひとかけらや真水のひとしずくを
ひびわれた皿のような目をして待っているうちに
そのパンやその水の代償になっ ....
私達は知らない
戦時中にかけがえの無い妻子や友を残して
死んで行った兵士の
爆撃で全身が焼け焦げてしまった少女の
青空を引き裂く悲鳴を
( 昔話の地獄絵巻は深い地底に葬られ
....
「天井に穴が開いてね。いつまでも眺めていたら、
なんだか塞ぐのが、勿体無く思えてきたんだ。
ほら、そこから突き抜けていけそうだろう?」
一割ほどの ....
ゆびさきから ことばが
ほろほろとながれ
わたしのゆびは
とけてしまった
たいせつなものと
ことばのなかにうまったつめ
すくいあげたくても
ゆびはもうのこらない
あらたにかたち ....
右腕には枷があった
ふと気付くと
左足にも 右足の薬指にも
枷があった
そっと噛むと
鉄の味がした
....
なにも
もどせない
どこにも
もどれない
じっとしていても
わけの わからないものが
ただ すすんでいて
だれも もどれない
こころ と
よべるものだけが
すすんでしまうも ....
こころの
やぶれあなから
ひかりがさしこんで
ねむれない
あいまいな よる
ねむっているような
ねむっていないような
ふわふわと かたむいた
やみのなかで
ねむりは
....
朝
目がさめると
ここはどこ?
と少しだけ考える時間が
幸せ
夢のつづき
のように
夜
蛙がなくと
ついつい
僕のおうちは
すぐそこなんじゃないかと思う
朝の夢のつづき
....
こんなにも虹彩の
心拍が上がる朝は
眠りつづけられぬ故に
眠ろうかと不意に問う
文明の利器は
平然としゃべりどおし
いっそ同じ喧騒の中で
かわいてゆこうと思う
静寂に胸をかきむ ....
ピアノバーで
その男は
いまでも
ピアノを弾いているらしい
アップライトピアノが
備えつけられている
小さなバーで
*
夕焼けが
川のどこかに隠れていると
聞いたのは
....
夜はどんなに暗くても
わずかな光を失うことはなく
たとえば混沌を鎮めるために喜怒哀楽があるように
生き物もそうでないものも
みなわずかな明るさを忘れない
銀河に浮かぶ星々は
途方もなく大きな輪を ....
僕らは僕らのままで
それ以上でもなく
それ以下でもない
たとえば自分を着飾れば
それが淋しさに侵されてしまうように
僕らは僕らのままで
それが世界の均衡であることは
僕には否定できません
....
真理
ない
真理
ひとも
わたしも
たまたまの
ここに
ない
真理
それが
真理
もうすぐ
ちから
ぬいて
....
長い髪を引かれた後に、残していった重さ
開いては閉じて、を繰り返す手のひらに
理由を隠す隙間なんて、どこにもないことに気付く
もうここにはないもの
空をかき混ぜた手
海から斜めに ....
森のはざまの道に無数の
人のかたちの木漏れ日がいて
静かに立ちあがり招くとき
空はすべて木々になり
道は奥へ奥へとつづく
石の階段に灯りは無く
糸の光がゆらめいている
....
砂浜で波とたわむれる
あなたを見失ってしまいそうで急いでかけよった
あなたの白をたどれば
その薄紅色の唇に広がってゆく海が見えてしまう
景色はうっすらと朱に染まろうというのに
....
天国のドアがありゃ
叩きたい気持ちは山々だよ
どんなにすがりたい事か
どんなに助かりたい事か
天国のドアがありゃ
叩きたい気持ちは山々だよ
どんなに鋭利なナイフを持とうとも
誰も斬れ ....
さっきモナリザを見た、よ。
電信柱のかげから出合いがしらに
公園でクサダさんが倒れていたっ、て
ケエドオミャクが切れていたっ、て
画布はナナメに(そう、もちろん)引き裂かれてい ....
もっともっと時間が欲しかった
もっともっとお金が欲しかった
もっともっと欲しかった
もっともっと
もっともっと
全てを投げ出す事を知らずに
全て要らないと叫んだ
違いも分からない ....
何もない景色があった
見たこともないものを、憶えているのは
緩やかに消えていく光のせいでしょうか
眠れない、夜ならば
明日の仕業にしてしまおう
結局、かたちばかりが残った
匂いが泡立つ ....
鏡に映せない
言葉は綺麗な現象
だから私には
似合わないのです
指をつたう血が
涙と同じ温もり
人の温度と気づくから
生きると言うことは
{ルビ連星=アルビレオ}を見る ....
1日の
はじめに生まれ喜ぶ、方角の
まだ濃紺の稜線から
チチチ、チチチ、と
鳥の音が明るみ
窓に映えはじめ
あ、
時折、
窓をかすめる鳥の姿が
鳥の音に結びつけば ....
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