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あら、困ったわ
が口癖の君が困った様子なんて
今まで見たことがない
あら、困ったわ
なんて言いながらも
トントントンッとまな板の上で大根を切ったり
ザッピングをし続けた挙句の果ては ....
シルクハットの手品師は
自分の姿を消しました
種も仕掛けもなかったので
もう元には戻らないのでした
相棒の鳩は
空を飛んでいます
わたしを忘れた光が
昇りつづけて朝になった
目を閉じても冷たい指先
さよならを言う光に触れた
さらさらと
さらさらと
雨雲が川のなかを遠去かり
水鳥を連れていってしまった ....
4本の弦を見つめるあなたの写真を見つめる4人の仲間たち
誰か私に少しばかりの
愛と痛みを与えてはくれまいか
ちくりと刺すような愛と痛みで
この眠った心を蘇らせて
背負いきれない宿命を
投げ捨てて森を駆けても
方角さえも掴めずに
結局どこに ....
「 あぁ あぁ あぁ あぁ
嗚呼 嗚呼 嗚呼 嗚呼 ・・・ 」
休日の公園
木々の上から
{ルビ烏等=からすら}ののどかな調べに
地上の鳩等も舞い踊る
噴水のほとり
餌 ....
エスカレータの
頭上
鳩の巣
歩く歩道を
歩く人
売られてゆく
手すりの色は
声枯れの黒
反対側
ガラス細工の壁
地 ....
まけじゃんけんというものをおそわりました
さきにあいてがだしたてに あとから
わざとまけるてをだすじゃんけんだそうです
ぱーには ぐーを
ちょきには ぱーを
ぐーには ちょきを
ま ....
開け放たれた音楽室の窓から
合唱部員たちの歌声が聞こえる
放課後、行き場の無い僕らは
校庭の隅にある鉄棒に片足をかけたままぶら下がり
いっせいの、で誰が好きかうちあけると
やはり同じ子が ....
春泥が
明るいインクの
滲み、です
その滲みが
無意識に漏れる
芳香、です
その芳香が
呼吸のような
肌色、です
文字を読む幼子の口調の明朗さで
明 ....
あした て何だっけ
陽が昇ると それは朝 て気がするんだ
確か 記憶では
でも 暗いときもあったような気がして
それも朝だったように 思い出されて
朝 て何だっけ
あした て何だったか ....
コーヒーには砂糖をいれない、
いま私はめちゃくちゃに機嫌がわるい、
人間なので機嫌が悪い日くらいあって当然なのだけれども、
こんなに機嫌が悪くなるとかえって気分がいい、
コーヒーにはミルクもク ....
君は木立の中に
透明な花を
隠している
涙は霧のようで
僕から熱を
奪わない
幾たびも逢いたい
僕は変わってゆくけれど
やわらかな予感に包まれた
君が変わることはない ....
音も無い
そんな雨に出会って
そんな中に
佇んで
包まれて
張り付いた前髪から跳ねる雫も
もう遠くの出来事のようで
霞んでいく風景に
この道はどこへ行くのかと
この私 ....
君の笑顔は椅子に似ていて
笑うと誰もが顔に座りたがる
散歩途中のお年寄りや
旅に疲れた旅人
アイスキャンディーを持っている人
ただ夕日を見ているだけの人
誰かが座ると嬉しそうにする ....
常にあかく
トマトを塗る
あついあつい日々が続き
想い出ゼリーが
ひんやり揺れる
縁側の空気は
うとうとと流れる
小さな匙ですくうと
淡い成分が口の
中で優しいのに
迷 ....
薄い光が
瞼の縁からにじみ
あまねく人々は夜をなくす
かくも永き不眠
頭骨の隙にガムテープを貼り
モジュラージャックから脊髄を
抜いて試みる
眠れない人々は言おうとするだろう
....
浮かばない灰皿と程近い場所に 浮かぶ私がいる
沈まない煙を見上げた反動で 沈む私がいる
ここです ここです
私
ずっと
私のありかを伝えるために
耳のありかが知りたくて 知 ....
金魚がつい食べ過ぎてしまうように
ぼくらは
怖気づく理性とはまったく関係なく
いうなれば すこし過剰なものたちです
狙ってみてしまっては 思ってもないことを
寝転んで指差した机の脚の ....
この町の
坂を登り切った
いつもの場所へ
僕と君が一緒の週末も
この町を眼下に
何回めだろう
夜になると微かに靄が漂う
簡素で静かな町
僕達はこの町の中身を飲み
そして町の中 ....
今頃ヤナギサワは ルンルンルンルン 空を飛んでいるはずだった
何不自由無く育ち ファックショォン 欲しい物全てを手に入れて
安定した生き方で イェ ....
ここは
風が強い
遮るものは何も無いから
私もざわざわと揺らいでしまうのです
花に昔の恋を重ねるのは
いつまでたっても抜けそうになく
風に揺らぐ花びらに
褪せた写真の中の誰かさん ....
時間が
外から来る光を
横になりながら見つめている
花は雪
雪は花
晴れた日
道は海へつづく
ずっと空のままでいる川
とどろきの向かうほうへ
雪は昇り
落 ....
冷凍庫に眠る
蜂の亡骸は凍る
大人のわたしは
花と虚偽の
供述を並べている
あのとき
去る季節は凶暴なのよと
教えられたから
わたしは隠れて
餌をあげた
遺棄傘に貫かれた土 ....
白い花瓶が割れて
白い花が落ちた
僕ははっと驚いたよ
もう君はいないのに
君に何かあったのかと思ったよ
君は白が好きだった
花も白い花が好きだったね
初めての ....
流れたくない、と
川がつぶやいたのを
聞いた詩人がおりました
詩人は
風が流れる詩を颯爽と
星が流れる詩を朗々と
時が流れる詩を粛々と
うたい紡いでは
流れる素晴らしさを川に説きま ....
みんなに嫌われた日は
母の やきそばにくるまって
少し テレビを見る
母は やきそばをもうつくらないので
15年前の
とり肉入り のかけら
やきそばに とり肉は合わないと
ずっと ....
悲しみてぇもんは
大きかろうが
小さかろうが
とんでもなく重たい荷物
持主にしかどんなに重いかわからない
かわりに持ってやる事もできない
置いていこうにも手からはなれない
とんでもな ....
魔法使いを名乗る人がいた
学校の帰り道丘の上でぼんやりと空を見上げる男
それが魔法使い
知らない人と極端に話すことを恐れ
遠回りに帰る背中の後ろで
魔法使いはただ空を見ていた ....
心地いいくらいの
暖かな日差しに
桜の花びらを連れた
春の風
そんな
よく晴れた日には
陽だまりの中
嫌なことなんて
忘れ去ってしまうくらいに
走り回って
疲れ果ててしまっ ....
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