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「無風を狙って、あの鳥は飛び出した
籠から、あの人の隙を狙って、青空
へ飛んだ。傷付いた羽根で、ぼくは
風を感じる事が出来る。とうめいな
翼で、とうめいな空を、感じること
が ....
疲れた、ああ、疲れたね
誰にも聴こえない会話がぽつり交わされ
冬は足音のひとつも立てずに今年もやってきた
わたしはそれ以上言うこともなく自ずからそのかいなへ身を預ける
呼気や落ち葉 ....
製本工場に着くと
まず掲示板の自分の名札を見た。
忙しい時期は学生のバイトのやつらが
掲示板の前に群がった。
若い女の声と声。
キムラって誰。話したこともないよ。
どう ....
窓の外は真っ暗で、では部屋の中はどうかというと、これまた深淵のような、重力が不自然に働いているような錯覚がおきる場所だった
だからテレビが一日中つきっぱなしで、わたしの視野がますます狭くなる ....
あたしは都会に行ったことがない
友達のえりあしは屈託がなく、溜息は山並みに同化する
おんぼろな校舎の3階からは特に何も見えない
はるか彼方に水平線が5cmほど臨めるが、
手垢だらけの教室内のほ ....
どこか遠くで朝が鳴らされ
どこか向こう側でカーテンが開けられ
窓枠の内側で
いくつもの頽廃が木枯らしに舞う
部屋
ありとあらゆる醜 ....
声とは
思えない、そのような
声。
響き、
沈黙の、
うたえる
歌が、あるのは
むこう、
声じゃない
声、
の
かなたが
電話をかけてきて、
....
きみが
名づけるにいたったもの、反
宿命の、それ
は
繰り返すことができないもののはず
だった、それでも車輪は回る、夜
に、人知れず
帰郷した、きみを運んでいる
もの、それも
....
木漏れ陽や影が
昼の星を見ている
羽は
羽から目をそらす
家の裏の沼には
家が沈んでいる
建つものもなく
枠は増える
翳りが
....
(この世界にうまれなかったすべての記号たちに
琥珀色した光りが届いたなら――)
/星が瞬きも忘れて
/死を視ている
世界の空が薄い琥珀のように潤み始めた頃には残された ....
わたしの名はサラ
サラ・リーマン
ミシガン州は
デトロイト
モーターシティ出身の
ドイツ系アメリカ人
日本企業で働いていたの
自動車部品のカンパニー
資材調達がわたしの役目 ....
生まれなかった椅子の名前が
ずっと心の中にある
さやかちゃんとそよこちゃん
椅子を作るひとはいても
椅子を産むひとはいないので
今生、出会ってきた椅子たちの
面影は今も憶えてる
青い ....
まれびとのように
悲しみが訪れるものならば
まれびとのように出迎えて
また送り出すこともできように
けれども海ででもあるかのように
満ちたりひいたりするものなので
月を数えながら今日は ....
この鞄には仕事の道具1(商品見本)が入っています
この鞄には仕事の道具2(料金表)が入っています
この鞄には古い電池が入っています
この鞄には子供の写真が入っています
この鞄には貰った御守りが ....
きみの見るものは
すぐさま
毀されて、光があった、光が
あった、光
ただそれだけが
あった
かみさま ほとけさま
ジーザス・クライスト
わたしは明日退院します。
あなたがたの名前を呼ぶからといって、
今までの人生の懺悔や反省をするつもりは毛頭なく、
わたしが幸せになるこ ....
夢の雨がまだ眼前に在り
音や光をふちどっている
雨のなかの陽 ひとつをひとつに
注ぎ込む陽
空の器械 地の器械
水の外から 降り来る声
緑にふくれ ....
きみが書いた、雪辱
という字、ここ
より
先へはけっして行けない、何も
することができない、何も
停止しない指先
息を止めたのは思考?
潜めた呼吸から僅かに漏れるプリズム
そしてわたしは、エラ呼吸を習得した
目を閉じたところで現実は消え去ってはくれないし
星を見ようにも外 ....
{引用= 哀なる愛と君は逢い、
やがて霧中の夢と解る。
負の歩を背に瀬を進めば、
蒔いた舞から今日が始まる。
焦がれた点は天へ。
求める血は地を濡らし、 ....
秋の夜の
電柱……
たとえばそこに
世界が着床する
ありふれて
ひとつに結ぶ
街の残像
心の残響
季節はやがて
....
{引用=純
粋世
界の君
が笑う9ヶ
月前にこの
夢ははじまっ
た、はずの夢
*
はじまったもの達
のはじまらなかった
”名前”をひとつずつ
乾いた舌先で声にうつし
て消し去る ....
ら
のトーン、
乱反射、
わたしたち、
この暗闇にも突き当たりがあります
正しさが、正しくを、固める
たびにお、もう
粉々に、間違えた時間の
欠片をひらおうか。
*
....
ぼくは髭を剃ることが好きだ
冬の朝の洗面所で
鏡に向って
そのとき空が晴れていて
死にたいぐらいに青ければもっといい
もしもそれが
洗面所から見えない空でも
....
ねえ、神さま。
あたしがどんなに幸せか、わからないだろうね!
ねえ、神さま。
あなたをふたたび信じることができて、
あたしはとっても嬉しいンだ。
おとーさんが死んだあの春 ....
鎖骨のくぼみにわずかに溜まる
水を求めて鳥が来る
町が沈む
のを、眺めていた
ついばまれながら
むき出しの乳房には、どの子も手を触れなかった
割れたくちばし
こわばった翼
....
文字ということばと
手紙ということばは
どうしてどちらもletterなのか
この国でも
それはやはり文と呼ばれていましたが
すべての文は/文字は
もともと
ひとに宛てて書かれて
....
ヒガンバナ
もう咲き終わっているのに
熾き火のようにゆらめく赤
心の中で
一面に赤い景色など
見たことがあるわけでもないのに
忘れられないほどの赤など
目の当たりには
出遭った ....
ときどき僕は
草のなかを歩いてみる
さらさらと風が流れてゆく
草穂が膝頭を撫ぜれば
なつかしい思いに満たされる
ときどき僕は
人に話しかけてみる
ときどき
誰とはなしに笑いかけ ....
なあ、はじめ。
知ってるか。
お前がずいぶん毛嫌いしている、チンピラの田口は
将来お前なんかより良い父親になるんだ
それはもう驚くほど家族思いの良い父親だ
だが相変わらずお前は彼と ....
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