樹々のささめき
秋のまなざし
土の殻を脱いで
風鈴と戯れる
あの風のよう
出奔し
残り香をたぐる
民族という幻想の
ゲル状の遺跡を渡る
無造作に繊細に
ごぜの指先の
せつなの逡巡 ....
まるで涙の川ね
ルイ、リバー
わたしの胸に、
水音がせせらぐ
白い河原と、
仄かなことばが残した
透明な軌跡
ひとり、
揺らめく水に姿を映し、
零した、
哀しみの、 ....
「逢う」と「会う」の違いが
分かりますか
「夢」と「現」の境目が
見えますか
埋火のような想いはどうやって消したら
よいのでしょうか
叶わぬ願いを此処に置いて行っては
い ....
吃音の恋人の鳴き声は
滞る渦の中のガラス片
あるいは雨の日の蝶の瞬き
細かく光りながら吸い込まれていく
恋人 君の縺れを
優しい泥のように愛している
北国ではもうほとんど涼しい。秋の陽。こどもたちのみずあそび。さきっぽを踏んづけて、長い青いホースにはとても小さな小さな穴がいくつも開いていて、そこからとても細い細いやや霧状の水が勢いよく飛び出してきて ....
妹とふたり
霧雨のシンフォニーホール
舞台の上はふたり
セピア色の照明に浮かび上がる
息を吸うたび
音が全身に満たされる
長く透き通る高音の波が
眉間を通過し
思わず目 ....
白銀なる
柔らかな耀き放ち
天空の
まん真ん中、
真ん丸に縁取り
幾つもの
歳月を踏み響かせる
御前、この地に人を繋ぎ留め
いくいくの果て宙へと解き放つ 、
陽に身を預けたあ ....
たまに失敗するよね
そして自分を責めるよね
そしたらまた
失敗が重なっちゃって
嫌になっちゃうかもかもね
だけどねみんな一緒だよ
失敗ばかりで毎日送ってる
いつかそれが花咲いて
笑って ....
他人(ひと)のことを
悪く言うのは
言った自分も
傷つけてしまう
それでも言うか?
・
※ 五行歌とは、五行で書く 詩歌のことです。
夕暮れが影のように静かに降りてきて
熱に焼かれた街をやっと冷やしていく
街灯の明かりが点々と瞬きはじめる
それは救いの合図のようで
けれど近づけばどこか歪んでいて
本当の居場所を照らして ....
わたしが森でじとじとになっていたとき
ショコラウサギのおかあさんが
やさしくガーゼで顔をふいてくれた
ホームのベンチにひとり座って
走り去る夜汽車を見送っているだけでは
ありえない出来事だっ ....
浜辺に足跡のみを残して
消えてしまった彼は、
多分に、月影の下
影踏みに夢中で海に呑み込まれ消えたのだらう。
彼の影は異様に蒼白く冷たく光り、
私はそれを見た途端に
それが梶井基次郎の霊と ....
細切れ時の隙間に
上弦の半月、今宵
黄白く耀き
傾く西の夜空に、
ヘッドライトに照り輝く
草群れの緑の青々と眼下、
見て魅入られ
刻み込まれる狭間の時に
ノイズ、ノイズ、ノ ....
二十歳くらいの頃
梨の皮をビーラーでむいていると
それを見た父が怒りだして言った
「そんな梨は食べたくない」
わたしは内心、バカみたい、と思ったのだが
火に油を注ぐのも面倒なので黙ってい ....
夜が空けた。
立体的に、次々と、パタパタと。
画角のはじは暗い
焚き火が燃えていて少しずつ暖かい
手をかざしながら思い出す
ラムネのビー玉の音
レモン色に水色がよく合ったお祭り広場だっ ....
新米を炊いた
土鍋で炊いた
二人暮らしなので
小さな二合炊き
二十分蒸らして
蓋を開ければ
しあわせの香り溢るる
神棚に供えて
日々の糧に感謝
「こんな美味しい米 ....
もう飛べないと
翼を外した
窓の向こう
天空の城に
辿り着けなかったこと
翼の代わりに背負って
ただ祈るように佇む
ここではないどこかに
行こうとすれば
体は重く動かない
翼は ....
目覚める
と、
ここは深夜の密林
灯火に浮かぶダイニングバー
戦闘服のジェシカが店で
バナ・ナンカを刻む
よく切れる
薄刃包丁を手に、
ジェシカが正義を振り下ろす
....
水はきらめいて流れていく
藻は水面下に揺れている
風の爽やかなこと
子どもの頃から変わっていない
ただひとつ
望みが出来た
いつも誰かを望んではいたけれど
たったいっかいだけ本当に愛 ....
ドラッグストアでペプシゼロとヨーグルトを買った。
夜の店内は空調が効いていて、白っぽくて、乾いている。
手をつないだ恋人たち、メガネを掛けた会社員、綺麗な身なりの女の人。
みんな等間 ....
混沌がかっこいいと思って
普通の人になりたくなかった
叶って
私の人生が混沌になって
普通が難しくなった
今は、傷のない人生に憧れて
傷だらけの君たちを侮蔑して
死とは何かをよく思う ....
力ない羽ばたきだった
抗うにはあまりにも
変身するためにひたすら食い
変身したらひたすら交尾する
仔の頃に食われたら負け組
交尾産卵の後なら勝ち組だ
去る夏の背
しっぽり濡れた夜
そ ....
8月の終わり
空の雲は秋の形で
風に吹かれている
それでも僕ら
サンダル履いている
アイスクリームで
身体を冷やしている
今の暑さも
じきに冷めていくから
ふたりの熱量に
そっ ....
巨大などろどろのうねりのなか
掻き分け泳ぎ進みいく
意識の私の
巨大な生きものに覆われ含まれ
吐き出されては呑み込まれていく
繰り返しの渦中にこそ
意識の自分の息衝き在りと
巨大なうねり ....
良縁に恵まれた妹よ
おまえはどんな歌を歌って
きたのか
早逝した弟よ
おまえはどんな歌を歌って
きたのか
故郷に帰った恋人よ
きみはどんな歌を歌って
きたのか
運 ....
挿し木をひとつ
もらいました
軍手をはめて
小さな鉢に
土をもり
水をかけてくれました
コンビニの
ビニール袋で
包み
揺れないように
持ち帰り
カーテン越しに置き ....
擦れ違う
人と人と
袖と袖と
熱と色と
闇と息と
擦れ違う
季節と憂鬱と
言葉と黄昏と
畏れと香りと
祈りと呪いと
擦れ違う
風と唇と
声と光と
女と ....
今宵手にとる梅酒のロック
漬け込んだ梅の実も
取り出してそのまま齧れば
甘酸っぱさの酔いが
心のうらがわまでしみてくる
溟い憩いにグラスを傾ける
私の手は苦い
梅の ....
この早朝の天空、
ターコイズブルーに
薄っすら絹糸の張り巡らされ
富士のコニーデの影すぅうと消え
あの日とこの日と向こうの日、
軽やかに解け溶け合い
懐かしい憧憬を喚起しながら
繋がり合 ....
なつのよる、満月の路や
夕暮れてゆく公園、回旋塔の下や
線香花火が咲いた、一瞬の光の下で
見つけた
かげぼうろたち
かじってみたら
やさしくほどける
ほおってみたら
ふうわり浮かぶ
....
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