部屋の灯りを消し カーテンの隙間を覗いたら
霧に滲んで電線にひっかかっている
ミカンの房のような月がいた

おやすみ 泣き虫の月


夜の周縁を震わせて
電車が横切ってゆく
 ....
眼下の川では子供たちが裸ではしゃぎ
遠く茶褐色の岩峰が冷たい灰色の空を背景に連なっている

僕はゆらゆら揺れる色褪せた肌色の廃棄バスの屋根の上
何とかバランスを取りながら何度も落ちかけ
終に ....
二〇一七年四月一日 「ある注」


 ディラン・トマスの268ページの全詩集のページ数に驚いている。こんなけしか書いてないんやと。散文はのぞいてね。こんなけなんや。ぼくはたくさん書いてるし、これ ....
蝉の鳴き声と赤ん坊の泣き声がこだます 夏の朝に
いくつめかの台風の いくつもの風が小さく渦巻いている

まだ
窓辺の風鈴を鳴らすこともなく

起き抜けの肌を
割れた鏡のような朝の破片に
 ....
人がいなくなった庭は
草がぐんぐん伸びて
かつてその地に眠った心臓のありかを隠した
もう探し出せないし
探そうとする人もいない
よく見ればブルーベリーが細々と実り
小鳥が集う楽園になった
 ....
二〇一七年三月一日 「ツイット・コラージュ詩」


 ブックオフで、ぼくの持っている状態よりよい状態のカヴァーで、フランク・ハーバートの『神皇帝』第一巻から第三巻までが、1冊108円で売っていた ....
 もう無理はできないな、と最近感じる。年々、暑さが身に沁みて体を痛めつけているのが解る。昔はそうではなかった、というのは誰もいずれは知ることである。私も老いつつあるという事なのだろう。
 三週前から ....
わたしたちの花がまだ眠っている早い早い午前、空が朝を始めようとしているところへ、ふいに思い出がやってくる。あの時わたしたち泳げないいるかだったよね、とか、くじいた足をおそろいのバンダナで包んだよね ....     ぱちん、ぱちんと
    爪を切る
    飛んだ爪を拾ってみたら
    さびしさだった
    腰をかがめ
    切りにくくなった
    足の爪を切る
 ....
 ヒグラシが鳴きはじめ、アブラゼミからミンミンゼミと蝉の声は種類を増し、最終的にはミンミンゼミが最後となる。里では秋に鳴くツクツクホウシなどがあるが、こちらではあまり聞かない。また、これから八月の声を .... 海水浴場でバイトしている
七月の偶数日と
八月の奇数日が出勤日
つまり、各日ってこと
主な仕事は
海水浴場のトイレ掃除と
浜辺のゴミ拾い
朝八時から午後三時まで
三十分仕事して、三十分 ....
二〇一七年一月一日 「なんちゅうことやろ。」


きょうはコンビニで買ったものしか食べていない。


二〇一七年一月二日 「恩情」


 なにが世界を支配しているのだろう。お金だろう ....
{引用=墓地と少女と蝶と}
墓地を巡って柵を越え
黄色い蝶が迷い込んだ
少女の額にそっと
押し当てられる口形
珠になってこぼれて落ちた
奏できれない音色のしみ

{引用=*}
夏の墓 ....
 山域は乳白色となり、雨粒が地面を叩く音が、朝未明から始まった。決まって七月は、雨が多いと、誰彼なく言うのだった。
 雨が満ちてくる。体の中にも脳内にも、まるで人体は海のように静まり、宇宙のように孤 ....
二〇一六年十三月一日 「廃語霊。」


な~んてね。


二〇一六年十三月二日 「こんな科目がある。」


幸福の幾何学
倫理代数学
匿名歴史学
抒情保健体育
愛憎化 ....
 数日前の日曜日、めずらしく一日中掃除をした。夏の初めと晩秋に行われる保健所の巡回のための掃除である。年に二回、保健所職員と食品衛生指導員が各営業施設を見て回る。基本的になぁなぁな巡回でしかないのだが .... 仕事の日数を減らし、眠る時間を増やして、過ごしている。
朝に夕にお湯を沸かして飲んで、家でも仕事場でも花瓶を洗う。

花瓶はいつも清潔に保たねばならない。交わした約束を守らねばならないの ....
クソつまらない日常
クソダメの中に埋もれて
息も絶え絶えだ
少しの快楽に頼るか
見え見えの偽善に頼るしかない

俺たちはもうとっくのとうに
終わっているんだぜ

生きているってのは
 ....
二〇一六年十二月一日 「不安課。」


きょうは、朝から調子が悪くて、右京区役所に行った。
なぜ、調子が悪いのか、わからなかったので、とても不安だった。
入り口に一番近いところにいた職員 ....
境目が淘汰されて
すべてはグラデーションになる
曖昧さは受け入れられ
器は広く広く浅くなる
明るくなりすぎた夜のように
影はぼんやりと甘く
この輪郭を脱ぐ術を
探している

 ....
二〇一六年十一月一日 「いやならいやって言えばいいのに。」


えっ
まだ高校生なの
そういえば
なんだか
高校生のときに好きだった
友だちに似てる
あんにゃん
って ....
夏の夕暮れの
そこは片隅
母の白い指のすきまから
転がり落ちた
ひとかけらの氷のゆくえを追った

蝉の声が遠のく
逃げていく蟻の触覚
氷は崩れ、いつか傾く
音もなく
あとかたの水
 ....
面倒くさがればいいんだろうと投げやりに思っても、眠れるかどうかはきりんの首が長くなってしまった偶然と同じくらいきらめいている。眠れませんでした、って日記に書いたとしても、それでもじゃあいつかは寝ている .... 風や街、ビル、文字、感情はあり、
選ばれたものと、選ばれていないものが
ひと筋の線で隔てられる今日、
たしかに時間も空間も存在し、
ざらざらと触れることさえ出来る
空の自動販売機、乾 ....
二〇一六年十月一日 「至福の二日間」


 きのうと、きょうと、ずっと横になって寝てた。お茶をひと缶のんだだけ。いっさい食事せず。ただ眠っていただけ。しかし、まだ眠い。睡眠導入剤が強くなって、し ....
 五月二十六日、伐採した木が跳ね、左腿を痛打した。骨折は免れたがひどい打撲に悩まされ、丸四日休んだ。その後復帰したが、膝は痛くて曲がらず、その不具合な足で、やらなければならない登山道作業や林業作業をこ .... 離島に夏がくる
隣の猫は人間になりかかってきた
この忌まわしい季節には
神経節細胞の痛みだけが秩序ある情報なのだ

ぼくの離島は温存されて
真夜中に大陸とひそかに交信する

部屋のAI ....
二〇一六年九月一日 「断酒」


 FBで、しじゅう poke される方がいらっしゃるのだけれど、正直、返事が面倒。すてきな方なので、「poke やめて」と言えないから言わないけど。

 9 ....
緑をちぎって
すずしくわらってる

それなのに
きみの手は
熱いお菓子みたいな
においがする

なんにちも なんにちも
焦げついて
ただれるよ
二〇一六年八月一日 「胎児」


自分は姿を見せずにあらゆる生き物を知る、これぞ神の特権ではなかろうか?    (ミシェル・トゥルニエ『メテオール(気象)』榊原晃三・南條郁子訳)


二 ....
七さんのおすすめリスト(1472)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
おやすみ- Lucy自由詩9*21-8-20
無垢と大地(改訂)- ひだかた ...自由詩1121-8-16
詩の日めくり_二〇一七年四月一日─三十一日- 田中宏輔自由詩14*21-8-9
夜にそなえる- 末下りょ ...自由詩5*21-8-7
青空オルガン- そらの珊 ...自由詩9*21-8-6
詩の日めくり_二〇一七年三月一日─三十一日- 田中宏輔自由詩13*21-8-2
休養- 山人散文(批評 ...5*21-8-1
メモ- はるな散文(批評 ...321-7-22
わたしをつくるもの- 石田とわ自由詩10*21-7-21
夏はもう秋- 山人散文(批評 ...6*21-7-20
浜辺のひと- たま自由詩10*21-7-19
詩の日めくり_二〇一七年一月一日─三十一日- 田中宏輔自由詩16*21-7-18
越境者- ただのみ ...自由詩4*21-7-18
七月の雨- 山人自由詩5*21-7-11
詩の日めくり_二〇一六年十三月一日─三十一日- 田中宏輔自由詩15*21-7-11
掃除- 山人散文(批評 ...4*21-7-8
メモ- はるな散文(批評 ...221-7-4
そんな訳はない- 花形新次自由詩221-7-4
詩の日めくり_二〇一六年十二月一日─三十一日- 田中宏輔自由詩16*21-7-4
輪郭- はるな自由詩421-6-28
詩の日めくり_二〇一六年十一月一日─三十一日- 田中宏輔自由詩14*21-6-27
氷流- そらの珊 ...自由詩9*21-6-25
くるしみ連盟- 万願寺自由詩321-6-25
白昼- はるな自由詩321-6-24
詩の日めくり_二〇一六年十月一日─三十一日- 田中宏輔自由詩14*21-6-21
緑は濃く- 山人散文(批評 ...5*21-6-20
離島の夏- 梅昆布茶自由詩2021-6-14
詩の日めくり_二〇一六年九月一日─三十一日- 田中宏輔自由詩14*21-6-14
お菓子- はるな自由詩321-6-10
詩の日めくり_二〇一六年八月一日─三十一日- 田中宏輔自由詩14*21-6-7

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