めずらしく熟睡したようで、うっかり二時四十五分の目覚まし時計を停めてしまい、気がついたらすでに三時を過ぎていた。あたふたと準備をし、食後に飲む薬をポケットに忍ばせ、慌てて大便をする。洗顔、寝起きのス ....
何回だって言うよ 世界は美しいよ
君がそれを諦めないからだよ
──羊文学
変はりゆくその柿の木も遊ぶ子も 🍅
移りゆく柿の木もまた遊ぶ子も 🍅
....
正解は今僕が変えてみせるから
──羊文学
夏祭り夢見て帰るおんぶかな 🏇
油断して気付けば大人ソーダ水 🧋
裕次郎部下もいろんなサングラス 🕶️ ....
きみが夢をみているあいだ
僕は街中のあかりを消してまわる
きみがジェラートを食べているあいだ
僕は南のほうから暖かい風をつれてくる
きみが泣いて泣いて濡れているあいだ
僕はあたらしいハン ....
かんたんなことに躓いたときにもうだめだって思う。難しい計算が解けなくてもぜんぜん平気だけど、卵をうまく割れなかったらもう死んじゃうって思う。ベランダの植物を枯らしてしまったら生きてる価値がないと思 ....
たしか午前一時半ごろであっただろうか、稲光りとともに強い雨と強烈な尿意で目が覚めた。
昨晩は客の膳が遅くなり、床に入ったのは八時半ごろであった。まさか一時半から起きるわけにもいかず、少しでも眠れ ....
わたしは病院に行く用事をひとつ飛ばして、ろくでもない約束のために着飾っている。意味のないこと、何にもならないこと、だけどそうするよりほかないこと。駅のパン屋は混んでいる。ここには気持ちよく声をだす ....
朝からむっとした湿度を感じていた。汗が出るか出ないかの瀬戸際の不快感と、速乾性のフィットした肌着が体に食いつき、不快感の相乗効果を呈していた。
昨日、家業は妻に頼み、登山道除草の三つ目の山域にか ....
なんだっていいよと言いたかった
あなたがさえずるのが聞こえたから
音の羅列があれば
どんなことでも想像できたから
となりの部屋で
だれかにむかって
さえずる愛が
わたしにだけ聞こ ....
読点の無い散文詩のように
ひたすら遠くへ限りなく続くかのような山道を刈る
それは、その行為はいったい何なんだろうと
我ながら思ってしまう
幼い自分、青年期の自分、雑多な怨念、過去の病的な行いや ....
しらない街の
公衆便所の手洗い場に花が咲いていた
枯れてはいけないと思い
わたしは水をやった
小さな花だった
色はかまぼこの縁によく似た桃色で
仄かに石鹸の香りを放っていた
その ....
まぶたが閉じるのとたたかいながら
キャラメル箱の移動 ゆれる
向こう側の空 灰色
ほんとうは 終らない色
窓開けて あみどに
バッタの子ども
会いに来てくれた
また自分らしくいられる ....
してほしいと思うことは大体していただいてるんですけどね、と医者は言う。診察室の四角いデスク、細長い指でたたかれるキーボード、しめっぱなしのブラインド。
体重は減っていますか?と聞かれて、ええとゆるや ....
腰は骨を再生でもしない限り良くはならない。だが、ここのところストレッチなどで腰痛はほぼ無い状態と言える。つまり、私は連日勤務で森に分け入っている。山林の灌木や小径木を刈り払っていく除伐と呼ばれる作業 ....
夜更け
あなたは名前になる
わたしは耳を澄ましている
身体に触れるように
呼んでみる
息だけが漏れていく
言葉は庭に埋めた
どこに埋めたのかわからなくなって
その庭も無くなって ....
満たない
思いの
集積場へ
続きからはじまる
夢を折り
からだを畳んで
終わりまで
引きずる
ただ、これは
すりばち状の夢
終わりは広く
広く広く見えるが
....
びしょびしょの翅をふるわせて、せみたちが木々の間を抜けていく。街は恋を消費して育つ、夏のせいで深い森になってしまった。
あなたの頬はかたく、髪はつめたく、息はせつない。わたしたちの時間は狭く、言 ....
張り裂けた夏の青空の向こうから
ミンミンゼミの声がしている
エアコンの水滴が窓の外側に滴り落ちて
きっと外はまだ暑い
小さな町の病院の診察室で
まるで終わりの始まりのような説明を受けてい ....
あなたはくちびるを固くとじて
わたしは
かみなりをきいていた
無人でない駅のひとごみ
ベンチに残る
前のひとの温度
夏 情欲とみまがうほど
はげしい雨が降って
わたしは乱雑な鞄のな ....
ぼくは
(サルトル『一指導者の幼年時代』中村真一郎訳)
花びらが
(カミュ『異邦人』第一部、窪田啓作訳)
海に落ちてゆくのを見つめていた。
(ナボコフ『ベンドシニスター』4、加 ....
何か落としたぞ、ほら、きみのだ。
(ナボコフ『ベンドシニスター』1、加藤光也訳)
たしかに、
(ラディゲ『肉体の悪魔』新庄嘉章訳)
僕のものだった。
(ラディゲ『肉体の悪魔』新 ....
一匹の猿が
(リルケ『マルテの手記』第一部、大山定一訳)
花に見惚れている。
(ゴーリキイ『レオニード・アンドレーエフ』湯浅芳子訳)
夢を見ているのだ。
(リルケ『愛と死の ....
満月を
追うように走る
夜の快速電車
いとエモし
おなかすいたから
つぶあんぱん頬張りながら
窓ガラスに映る
ぼんやり景色を眺 ....
底抜けの淋しさにあてるために
壊してもよいおもちゃを探してました
そこへ来てあなたが、
きちんとあたたかいものをお食べよ。などと言えば
てきめんに恋をおぼえます
見覚えのある言葉が
....
ポットから熱い湯を注ぎ、インスタントコーヒーを啜る。ここ数日カルキ臭がする。とくに体がコーヒーの苦みを欲しているわけでもなく、便通を促すためだけに口にする処方薬のような感覚だ。疲れた時、インスタント ....
今となってはなぜ守衛室にいたのか定かには思い出せない。工場の守衛だった恰幅のよい年配のおじさんが、正門を出入りする人や車両をよそめに僕たちアルバイトの三人に聞かせた。とつとつと、 ....
からだだけが覚えている水田の記憶は
ずっと底のほうに沈んでしまっていて
どうしてわたしはこの庭に棲んでいるのか
どのようにして生まれ 辿りついたのか
わからない おしえてくれる親兄弟もいない
....
この白い画面から
各々の人たちが夏の思い出に何色が入ってるかを見ている
あたりまえに過ごすこと 羨望で願望しかなかったこと
夏の思い出はすきじゃない
病棟へ出入りするぶ厚い自動ドアが、こど ....
愛って、皮を剥いた馬鈴薯だぜ
だから俺の故郷に愛なんかなかった
紳士録にも載ってねえ名前は
この街では沢山の愛の中のひとつだ
優しさは仕舞っておけ、
乱暴な拳もポケットに隠しておけ
奴 ....
愛の膝
まるく揺れる口づけをして
明日に向かおうとする小鳩たち
ひかって、まぶしいのは
どこにも触らずにまっすぐに落ちてきた光みたいな
きみの愛の膝
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