ふと風が吹いて
私の髪が一瞬
ふわりと浮いた
それはまさに
私の心そのもの
春の心

風はとても優しくて
陽の光を浴びて
とても暖かい
なので髪だけでなく
私の身体すべてを
撫 ....
あなたには障害といわれるものがあって
そのことで私はあなたを見るとき
少しの躊躇を憶えるけれど

あきらめない

わすれない

そうあなたが書いた決意が
しろい紙にかいてはってあった ....
 
 
息子が
ひらがなを
逆さまに書いた

いつから僕は
鏡の世界に
いたのだろう

左から分けた
髪が右に
そよいでいく

街宣車の怒号も
静かな春に
よく馴染んで ....
女の面影や身体の柔らかさのことを
夜道を歩きながらぼんやりと思い出そうとしていた

半月に照らされた王都の白い石畳が
南島の短い冬に冷えていた

(あれは、まぼろしではなかったのか)

 ....
{引用=
のそり。枝垂れすぎた桜が、穴開きブロック塀の上を跨ぐようにして、地面に口づけをしている。ような格好で、あたしの方にお辞儀をしている。薄桃色の、明るい、花色。雨上がりの陽に触れてそれは、どこ ....
三角柱の一面は
相変わらずでしゃばっている
白も
相変わらず踊っている

思いきり
死んでしまうほど長く見あげているうちに
目覚ましは鳴りやんだ

かつて
足りないと思っていた美し ....
君の揺らすスカートの長さが
ゆったりとして安心する
二年前もその前も同じように揺らす
服の趣味の変わらない君が
錯覚させる、僕をひとりの頃に
{引用=
生ける命を、一つでも、
愛でられるなら、まだ、
生きていられる、私に、

愛されてくれてありがとう。
根菜を切る
すとん、と
やわらかく
響くまな板

根菜を切る
おおまかに
あたりをつけて
あとは
力を込めるだけ

そんなふうに

もう
あなたに告げるのだ
楽しかった
 ....
(目覚め

君に融けてしまいそうな
早朝の輝き
池の氷がざわめき出す
ほら
滑ったのはピアノの鍵盤
射し込む光の挨拶

  おはようございます】

窓辺から延びる ....
{引用=
雨ふる夜更け
テレビを消した後の静寂
凪ぐ海辺
心拍数
きゅうに予定の空いた休日
おかけになった電話は、
電波の届かない場所にあるか、
電源が入っていないため、かかりません。 ....
自動改札機なんてまだ無い頃
駅員さんに
切符に切り込みを入れてもらう
そのタイミングを計るのに
ドキドキしていた

ちょうどよく駅員さんの前に
立ち止まることができるかどうか
改札に入 ....
 
 
恋をしたのだと
人に告げると
恋はなぜか
はかなく散る

だから僕は
無人駅で
一人列車を降りた

切符は思い出に
コートのポケットに
恋の日付が
記されたまま
 ....
へえ、そうなんだぁ

今はもう小さな児童公園の近くに祠があるだけで
不忍池と同じくらいの池がここにあったなんて信じられない

畔にあった茶屋のお玉さんが身を投げたのでお玉が池と名づけられたと ....
                  100410





青と赤
どちらがお好きと
鴎の便り
飛行機のような胴体を
すらりと滑り込ませて
人混みの中を行く
美しい人だと ....
その国
国なのに王を持たず
恋人もいない

波打ちぎわが逃げ続けるので
海は憧れの的

         つぐみの子が口を開け
         「夢が叶った」
         と ....
ミニバラ、カスミソウ、トルコキキョウ
ある揺らぎが産み落とされた、
この日
このよく晴れた日をふちどる、
あざやかな
あざやかな
モノクロの葬列

/今日も大量の薬を飲む。てのひらから ....


声にならないひとこと
君はテーブルに突っ伏す

修学旅行で撮った百数十枚の
写真をテレビに映して
得意げに/楽しげに
拡大したり縮小したりして
鑑賞していた時のことだった

 ....
涙が止まらない君を
為す術もなく眺めていた

いちばん綺麗な君を
見せてくれてありがとう

涙を流し終えたら君は
見慣れた景色の中で
自由になればいい

でも

また咲きたくなったら
会おうね

き ....
もうほんとうはわたしに
必要な言葉なんてないのだと思う
ただ
意味もなく泣き出してしまいそうな
きもち、
きもちを
持て余している

ただしい丸を形作る粘土
を乗せて回転する ....
{引用=

こ と ば も 絵 も
余 白 が あ る ほ う が す き だ

な の に
自 分 で え が く と き に は
つ い ぎゅうぎゅうにつめこみ た が る


 ....
空色が失われた夕暮れ
プラタナスの老樹は幾重もの
たわんだ ながい枝
微風が、
せわしなく滑り抜ける

教会につづく坂の並木は、
夕日に染められ

刈り込まれたばかりの
青い芝生の ....
{引用=




なぁぼくは受話器で泣いてるきみを抱けん。その泣き声さえも「ほんもん」ちゃうんや。



気の強いきみの受話器が黙るんは なんでかわかるよ、ぼくにはわかる。


 ....
ある日突然窓を開けて
一羽の鳥が飛び立ってゆく
ある日それは静かに晴れた朝で
まるで船出のリボンをなびかせて
とても陽気に飛んでゆく空を


私の小指にはリボンが結ばれていて
ただ黙っ ....
{引用=


  ? ためらう水紋


しぐれる春
名残りの花に
しずくしたたり
風もよう 波もよう
光さすらひ 想いまよひ

水紋 水紋 水紋 水紋 …



繰りか ....
 
 
声が聞こえる
とても遠いところから
すぐ近くから

ここにいるよと
声が聞こえる
わたしの隣の席から

贈り物が届いている
箱を開けると
欲しかったものばかり

微 ....
 
 
桜の花びらに見えましたが
それはお墓でした
とても小さな墓石でした
とても小さな人が
入っているのだと思いました
ところどころ緑に苔むして
たしかにそれでも
桜の花びらに見え ....
 
 
やすみなさい
明日できることは
明日の楽しみ
だから
取っておきなさい

おやすみなさい
眠る君に言う
起こさないように
明日の君の
幸せのために

今日できること ....
{引用=
なにかいつも悔しくて
無理に笑うことなど
できなかった

さくらばかり、知らぬ顔で
春ひと色

それでも、
きまって咲く花に
いつも違う春がやってくる
矛盾が好きだった ....
{引用=

せかいを美しくみるために
そっとプラグを挿す
あなたが指を動かすたびに
さざなみのように細やかな電流、
わたしの両腕を駆けていく

好きな言葉の感触は
「かん」から始まる ....
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