これから、残りの人生の時間が、
どれくらいあるにせよ、
読める本の数や、聴けるレコードの数を、
どう埋めてゆくのか、ということについて、
これから、すこしずつ、すこしずつ、
考えていきた ....
舞台の幕が開く 暗い劇場
今日のお話は悲しい物語
インスタントで生きてきた僕の
心には少し 少しだけ重く
全て昨日の夢 フラッシュのように
君と観た舞台 幻で
遠く 遠くにある 生 ....
花よ
いま震えている花よ
見えない風の手が怯えさせるか
それともやさしい愛撫に
花よ
人も同じ
誰かの心の中 将来のこと
見えないものに心を乱されて
わたしたちは少し似 ....
さみしい人が
さみしい人に
さみしいですと
手紙を書いた
なんてこと
シロヤギさんより
たちが悪いね
わかりあえない
私たちには
明日のことがわからない
台風が
また ....
年に一度きりの花火は
雨上がりの夜空に咲いた
濡れた地面から漂い始めた
靄に包まれながら
どん どん どどん
光鮮やかな花が 次々と咲いては 散る
無数の色に輝き 夜を照らす
閃 ....
わたしはすきだった
ひずんだ道路に影が伸びるの
事実の寄せあつめっていうだけの現実で
出来の良すぎる絵みたいな空気のなかで
混乱したパレットみたいに素敵な部屋で
きみはひとりだっ ....
夏の夜の
祭りの後の
一人の帰り道の
ぼんやりした明かりを孕み
しっとりと、質量を持って
多大なる命を抱き
その質量はまるで手の様で
母の、友の、恋人の、
恩師の、子供の、人殺しの ....
遠い夏
街で見かけた少女
名前も
どこに住んでいるかも
知らないで
ただ精一杯
目で追うことしかできずに
それっきり
夢で逢えたらと願いながら
叶う事もなく
今日(四十年後 ....
西の空に希望を背負った夕日が消えてゆく。
黄昏た公園で私は老人を見た。
ベンチに腰掛け自分の両手を見つめている。
その時初めて私にも皺だらけの掌があることに気が付いた。
深 ....
番号
まとわりつく、鉛色の
番号たちを集めて燃す儀式
ながい鎖が一筋、見あげて残る
個の人に成れ
番号に生まれたわけではない
番号になりたいわけでもないだろう?
番号は美しく ....
炭酸の抜けたサイダーはただただ甘ったるい
引きずったままの10代が、だんだんとべたついてくる
群がる蟻で真っ黒に覆われていくさま
記憶が夢の中の出来事だったかのように、思い出せなくなるさま
....
時の過ぎるのを忘れ
畦道にしゃがみ
ひらく瞬間を待っていた
山の向こうに月が姿を現すころ
何かが限界をむかえるように
耐えていたがくが
プツリと裂けて
薄黄色い花びらが
ふるふる ....
燦く高音のトリル
壮麗な神殿のようなユニゾン
万華鏡が廻るようなアルペジオ
溶けるような
にじむような
甘やかな旋律 またその変奏
水のように澄明な和音
それ ....
どこから、どこまでが
いのちなのか
そんなの、訊ねられても
わかんないよね
ましてや、人生なんて
いつから、どこまでだなんて
微妙だからさ
わかんないよね
考えるのもアホらしくって ....
終わってしまった恋
終わってしまった恋なのに こころよりからだが覚えてる
朝起きるたびに手を伸ばすのは きみがいるはずのところ
コーヒーカップを無意識に ....
僕は毎朝オニオンサラダを食べ続ける
家庭菜園で作った玉葱をもらったから
いつものスーパーの袋入りコンビネーションサラダではなく
ドレッシングは胡麻ときどき和風ときにはゆずポン酢がいい
....
160804
台風5号が発生
あさっては小笠原に近づくともいう
サーフィンが五輪種目となったから
いいトレーニングになるねと
大きなうねりが押し寄せるのを待つ
....
朝陽は陰々と降りかかる、その日の人々の通勤に結論を下すため。人々が夢から生まれ、途端にすべやかな仮面とともに成人するのを見届けるため。電車は巨大な獣のように息を荒げて疾駆する、人々を腹の中に収めてはま ....
雨あがりに
かわいた体をたたせると
景色がぐんぐんかわいてしまう
夏向けの恋や音楽や食べものが似合うのっていいな
おもったりしてきたことがぜんぶ
からだのおもてにはりついて
い ....
遠く 花火の音がする
――美しい闇の舞台
光たちの素早い集団行動
ここからは見えないけど
どこかで
手をつなぎ
見上げている男女がいて
はしゃいだり
肩車されたり
こどもたちもい ....
【百合】
昨夜の薪が
まだ ほんのわずか ちろちろと している
寝る前に見た 夜光虫のまたたきと
星々とのまたたきとの
違いがわからなくなくなってしまった
ほんとう ....
手をつなぐと
だいたいわかる
あなたが私を
どう思っているか
とか
あなたにも
たぶんそれは伝わっていて
私がちょっと
嫌だなって思っていると
おそらく
かなり正確に
それ ....
ふたたびの青い扉
を開けると一瞬で模型となる街
のふちに腰かけている灰色の詩人
の帽子を奪ってゆく軽快な風
に揺れるかがやくデイジーの群れ
の上を舞う愁い顔の緑の天使
を忘れて立ち去るマン ....
子どもいるから夜中にロイホとかでお茶できないの
けっこう不自由だけど
まあいいよ
でもこうやって
たまに話せるといいね
シングルマザーだから
厳しいっすね正直
え、マジ知らなかったす ....
ひとくくりにされ
光が失われる
誰も知らないことがあるから
あきらめない
唇が開き息と声が出た
神秘が
鼓動にかかわる方法を関わらせながら切り開く
頭が黒く
顔は白い
どんな ....
物事はゆっくりと変化し続け
ふと気づいてみると以前とは違った自分がいる
いつか不毛の季節は終わりを告げて
また新しい子供の眼で世界に逢いに行こう
昨日の彷徨いの庭に朝の陽光がさすひと時 ....
思い出時空
待ってもむだだと 風がささやく
遠くの雲から 雨のにおいがしてきて
あの娘は来ないから はやくお帰りという
最後の待ち合わせの ....
夏はなぜ暑いのだろう
やさしさを失っていく熱風に
焼かれながら日陰の枯れた道を行く
墓の周りには
もはや草であることをやめ
木に仲間入りした太い雑草が
狂ったホウセンカみたいに
ニョ ....
いま歌っているのだろうか心から
誰かに伝える努力をしているだろうか
僕はソングライターではなかったのだろうか
きちんと生きているだろうか
きちんと本を読んでいるのだろうか
ドラッ ....
砂の羅列
土埃舞う
少女のスカート
紺色の切れ端
幾星霜
水気を徐々に含みながら
営みというにはあまりにスローで
一回の瞬き
菩薩の腕
老いた人のようにひび割れているのに
優しく温 ....
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