五月のひと
恋月 ぴの

好きとか嫌いとか
そのような感情と同じ速度で
五月の空はわたしのこころを蝕んでゆく

そして陽射しに揺れる葉桜が
散り行く先など知る縁も無いように
他者への憎しみを
こころの襞奥に抱え込めば
何時しか憎しみはひとつの美しい球となる

その球を慈しみながら
永遠と名付けられた限り在るものに
仄かな恋をしてしまう
触れて欲しいと願わずにはいられなくて

野に咲く花の名前など知るはずも無いのに
流れ行く雲と雲の狭間で
一枚の栞となった
わたし自身の姿を水面に映してみる

乱雑に綴られた日記の片隅に
雨音が恋しいと
あなたは書き残し

遠く離れてしまったからこそ
語り合えることがある
そして
五月とはそのような季節であることを
わたし達
誰ひとりとして歌おうとはしない






自由詩 五月のひと Copyright 恋月 ぴの 2008-05-19 19:49:39
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