黒髪を 風にすいては色もなく
岸辺に咲いた 白い花
ひんやりうずく 視線に限られ
カラスアゲハは はねを日に焼き 沈黙を舞い千切る
久しぶりに地元に帰り
ふらっと立ち寄った飲み屋で
幼なじみの電信柱と会った
人なつっこい笑顔は相変わらずで
そんなことが妙に嬉しい
カウンターに腰掛け
街や人や時間の流れ、それから
その ....
降り出した季節のはじめのひとしずく 僕は知らずに踏みつける夜
おぼえてるもうわすれてる ふりだしではじめにふったさいころのめは
泣き出した君の最初の一滴を 知って知らずか{ルビ宇宙 ....
2. 顔
電車の揺れかたは
嫌いじゃなかった
外を流れる景色にはしゃいで
シートのうえで
ぴょんぴょん跳ねるたび
おとうさんに注意された ....
ブランコに乗って何度も旅をしたね反抗期の君と僕とで
ジャングルジムの骨組みの向こうに君の悲しい生家が見えてる
シーソーしながら語りあった夢の驚くほどあっけない軽さ
愛 ....
九月
あなたが好きでした
あこがれの名ばかりを孕んだ
鳳仙花が弾けています
木の葉が
択んで
静かなところへ落ちつくように
黄金の峰からふく風がゆきます
夕暮れがやわく優しく
....
071006
カメラを素早く
懐に
軽四輪に飛び乗って
資源ゴミの回収に行く
ごみごみした都会の隘路
人情を踏み潰して平らに光る
それなのに
....
紛らわすために見逃した。だがすぐ寂しさに気がついた。
紫色の夜が駆け出す。文字は否応なしに同方向に顔を向け、背伸びしている。
膝先の夜を蹴っとばしたくなった。どうせ目撃者は星か水滴かなんかだ。 ....
かみさまが 足あとを
のこすのは きまって
救いへの 導きだから
すいません その道は
しばらく 使いません
水でも風でもあるものの声
川の流れの先へと映り
海鳥の狩りに溶けこんでゆく
夕暮れも鉄もざわめいている
うすくのびた
草と道の汗
姿のない揺れと声
野の錆が鳴 ....
坂道 こがねいろ ころがる
足音の環と季節は
付きながら 離れ流れて
そのくらいルーズに タイトに
輪郭を捉えた空は雲がさかさま写真
覆いかぶさった君の
ため息
はみ出した哀 ....
あまりに完璧なうんこは美しい
尖がった頂点や方向性も全く無く、水に落ちて飛び跳ねる気配も無い
その場にどっしりと構えた勇姿
女性の曲線美を彷彿とさせる丸みに、ほかほかの肉まんのような湯気
外見 ....
そこはいつも
清潔な湿度と
せつないじゅうりょくの
香りにみちている
身ごもったおんなたち
髪を横に束ね
しずかにもたれている
雑誌をうつくしく取りだし
うつくしくめくる
とろと ....
煙あげ無情に焦げるアタリメの曲線に似た情けない意志
「ザル通り越してお前はもう底の抜けた筒抜けの樽か何かだ」
鶏なんこつ ねぎま 鶏もも 豚カシラ つくね 手羽先 タレより塩で
....
プール前の花壇に
コスモスを見つけて喜んでいた そのくせ
君は、緑色のため池に沈んだ季節を
あまりに切なげに指す
わかってる
君も、僕と同じ色が好きなんだろう
空のいろ、でもなく ....
071003
乳児院が廃院となって
ガレージセールで売られてる
買う予定のない人も
子供付きならばと
好奇の目をして立ち寄って
ガレー ....
十月の、
霧雨に染みて
薄紅いろの細胞膜が、
秋桜、
空に透ける
十月の、
夕暮れの風に惑って
枇杷いろの金木犀、
満ちる、そこらじゅう
それらの
秋という色や匂いに混 ....
あまりに静かなので
どうしたものか
耳を澄ますと自分が
階段になっていることがわかる
踊り場には
温かい春の光が落ちて
多分そのあたりに
思い出はあるのかもしれない
遠くで ....
やさしい足で走っていたら
胸まで砂の入る転びかたをした
目の前にある白く小さい手は
逆光で誰ん手か判らないまま
わたしはその手にすがろうとはしない
胸に入った砂が肺で
雑ざりあって ....
湿ったソファーに沈みこんだ
少女の
くちびるからもれる
母音の
やさしいかたちを
泡にして
水槽のふちに
浮かべている
*
贈られた模型を
にこやかに受け取り
持ち帰って ....
哀しみのあなたの窓辺に秋桜いちりん
――凹
灰色に覆われた低い空に
押しつぶされて
想いと呼ぶには小さな
いくつもの欠片が
重たくなって
沈んでゆくだけ
雨ならなお一層
....
僕のふりをしていた木が
いつのまにかいない
僕のふりをすることに
疲れたのか
あるいは木のふりをすることに
僕が疲れたのか
新しい図書館の椅子に座ると
声が聞こえる
ここにいたのだ
稲刈りをしたら稲についた菌が
米粒を石のようにころころにしたのが
意外と多く
出荷前に手作業でつまみだす
ついでにゴミも
ゴミ
と言っても うっと手が止まる
米の中 菌のころころと一 ....
あたしのこと忘れたことも忘れる頃にあたしは君を忘れるんだろ
何もかもうまくいかないそんな日々 カレーさえ悲観的な味付け
鈍行の列車の速さでは駄目だと堪らなくなり目を閉じている
....
見失う
三行の言葉
見失う
午後の光に
のばされる腕
花を
摘みとることなく摘みとる手
灯の上の灯の道
水の上にしかない陽とともに
水のたどりつくとこ ....
いさり火の あかく燃えたつ 秋の暮れ
いっぴきの蜘蛛は、
自分の領分をわきまえて
一心に一糸の糸を張りめぐらす。
それはそれは正確で絶妙に
果して、
わたしはどう ....
1
真っ直ぐな群衆の視線のような泉が、
滾々と湧き出している、
清流を跨いで、
わたしの耳のなかに見える橋は、精悍なひかりの起伏を、
静かなオルゴールのように流れた。
橋はひとつ ....
曇る窓の先は雨
バスの湿り気に汗ばむ
ポケットのハンカチ
フロントガラスをぬぐうワイパーの往復が
息苦しさをリズムにのせようとする
雨の降るしくみは
学校で教わった ....
1. 雨
そういえば一度も
バケツをひっくり返したことなんて
なかったと思う
ああ
冷蔵庫を窓から投げ捨てた
ことがあった
そんな雨が ....
信号が赤になり
車を停めると
予報外れの雨粒を拭う
ワイパーの向こうに
頭を霧に覆われた
高層マンション
霧のちぎれる間に覗いた
バルコニー
干されたままの布団がひと ....
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