それから
細かく散った蒸気が窓に寄り添い
部屋の外の冷たさを教えてくれる
目を瞑っても消せないあかりがある
ここが最果てだってことはいつでも言える
手を伸ばしただけ今が伸びていく
....
轍に映る
音の魚
午後へ午後へ流れつき
雨のように息をめぐる
偽の季節の声があり
激しく隙間多く震え
水と風の
通り道は濃く
頬をすぎる波
くちびるの波
....
北からの強い風が吹いていた
枯葉をまだ護っている木々にも
誰もいないベンチにも
そこに流れる時間さえ吹き飛ばし
風は強かった
明け方の夢に両の頬が濡れて
世界中で独りぼっちのような目覚 ....
真夜中
のどの乾きに目を覚ましコップの水を飲み干すと
小さな波音が聴こえて不安定になる
部屋の隅で水槽は
溺れそうなほど満水で
薄いガラスを軽く叩くと
魚は眠るのを忘れてため息によ ....
そんな目でみるなよ
おいしく食べるからさ
緑色の少年が白光の中を泣きながら歩いている
彼の、砂利道を隔てた向こう側の意識の中には
水色の少女の後姿があぜ道を逸れて歩いている
そうして彼女はいつも田んぼの水の中へ沈んでしまう
だから彼は ....
星を 光らせましょうか?
月色の道路をゆきます
音も無く
声も無く
ただ街灯の無い藍夜へ
灯りが少なくなるにつれ
夜の雪が薄藍に染まっていきます
雪と月が ....
涙を混ぜる、という行為には
冬の夜は長すぎる
ひつじが百匹を超えたら ふいに湧き出す
僕って何だろう、みたいな問いかけに、いつも
たまたまこの星に生まれて
たまたまこの国に来 ....
青々微のアラン・ギット青年は、側女のヘンリエッタ・イワノア嬢に昨晩、手の甲を噛まれ負傷しました。
おかげで彼の深い灰色の目は、いつもにも増して憂いが見えるようです。
カフス釦やら珍しい魚 ....
ガードレールの
かすかなすり傷から
少しずつ、ずるり
赤錆と化してゆく
そこを避けて触れた人さし指の
さらさらの、その
真っ白に乗じて、何も
何もかもわからな ....
君がいるから僕は存在する
誰もが羨望する
誰もが欲しがる君の姿
ショーウインドの特等席で
いつも輝いている
値札なんて不要だよね
君の価値はお金にはかえられないから
要はハートだってこと ....
風が走る
土が舞う
水が震える
枝が軋む
風は思うままに
その力を誇示するかのように
押す力が押す力を加速させ
どこまでも走り通す
風が飛ぶ
森が揺れる
岩がずれる
波が ....
職場にとても変わった人が入社してきた。
出張者の手配をする仕事。
ひたすらJRや飛行機の発券をする仕事。
そして彼女は
聞いてもないことをよく言ってくる。
「わたし、電車が大好きなん ....
小さな呼吸で空気を振るわせて
目の前の背中に当たり 返る
真っさらな少女に
闇を吹きかけ
夜を越えた時
昔掛けた
馬鹿馬鹿しい枷が
砕けて熱い塊に変わる
それ一つ
抱きし ....
あれから
何度も同じような冬が過ぎ
薄桃色の春も
常緑の夏も
深紅の秋も
あなたはずっと
喪服の着物姿
世界と隔絶されんばかりの
体を一部とした
景色から飛 ....
リボンひとつで
あなたの気をひけるなんて
信じてやしない
けれど
リボンひとつでもしないと
あなたに会えない
二十歳頃の作品
世界が希薄になっていく
高い高い、高い場所で
不純な核にとらわれて連れ戻された
綺麗なだけの名前で呼ばれるもの
海は無限のやさしさでとかして
吹き抜ける音や打ち寄せる色だけが ....
どこから こぼれてきたのですか
雨の かがみ込んだ内で
抜けられない 靴ずれに
しみる痛み
知らないうちに 紛れ込んだ
砂の汚した 靴下
脱いで 素足になりたいけど ....
ネイキッドビーチの坂を降りたら
一組の男女が全裸で歩いていた
それはアダムとイブのようで
神秘的な何かを感じた
嬉しいとか楽しいとか
満ち溢れていたはずの感情
知恵の林檎を食べる前まで ....
街灯の
周囲に孤独が群れる夜
耳をすませば犬、遠吠える
鳥たちが
十字架のように羽根ひろげ
薄暮の空に貼りついている
雨天こそ
こころ華やぐべきでしょう
赤い傘さしスキ ....
うまい棒を並べてください
並べたいときは並べると並びます
たぶん
天国まで積んでください
積みたいときは積むと積めます
ヘブン
{引用=十万投稿記念企画参加作品}
....
消え失せろ、天井に
君の言葉、真昼の倦怠感、ポートレイト、
灰皿からたち昇る煙り、サンダルウッドの芳香、
明滅する蛍光灯、俺の声、
涙は強いられるものではないけれど
俺たちは離乳食よ ....
H
「十万投稿記念企画参加作品」
いつの間にか暗くなり
手暗がりでは捗らない
行灯の火をともし
目をこらして
仕上げを急ぐ仕立屋が
ふと窓の外に目をやる ....
パピヨン
七色の翅を震わせ
夢から夢へ
月の花園で白百合の露を吸い
ひらと空の彼方へ
星になる
夢の欠片を残して
パピヨン
私の夢に舞い降りて
花から花へ
星の野原でやさしい{ ....
貝の髪を洗う
肌は、染め抜いた青、水底の。
腰まで伸びた貝の髪を洗う
細く深緑色の長い髪は強い潮のにおい
油の膜が
綺麗に見えて
暗い底からは綺麗に見えて
....
沖の青が濃くなる辺りで
ポカリと浮かんだ独り言が
夜更けの時計を探している
月は夢と同位置で微笑みながら
人知れず密かな指切りを交わす
波のない水面に映る
過去と{ルビ瞬間=いま} ....
輪の裏で
小人の群れを掴み
握り潰す
手の端から
零れる体液を頬に塗ると
始まりと終わりの境界を見ることのない
私たちが
夕日を捕らえ
夜に
引きずり込んでいく
えりくすま、え ....
信号機が故障したので
シマウマがやってきて
代わりの信号になった
白と黒しかない縞模様で
シマウマは精一杯頑張った
多少の混乱はあったものの
車も歩行者もそれに従った
強いものは ....
あなたのことを思い浮かべる
藍色の海の底に包まれて
三日月の滑り台をするんと降りて
オレンジ色の花畑
太陽との一体化
ここでいつも見つめてる
空が闇に変わる瞬間
掴んでも ....
汽笛の音が聞こえた気がした
汽車などとうに走ってないと言うのに
空っ風が聞こえたのだろう
と思う間もなく年を越していた
この部屋が時間を止めてから
どの位経つのかは解らないが
間抜 ....
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